第54話 賄い
桜が帰った2日後には後期の授業が始まった。気温はまだ30℃と暑いが夜は幾分涼しくなってきた。
「そうめん……」
「明日もそうめんよ。」
文華の冷たい言葉はそうめんより冷たかった。
「力が入らないんだけど?」
「そうね……でも、今月はこれで乗り越えないと……」
何故ここまでの金欠に陥ってるのか……それは……物価高と収入の少なさだ。
「今月は7000円であと4日……」
「お米は残りわずか……」
「しょうがない!節約するわよ!」
「仕送りして貰わないの?」
「そんな事できないわよ!下手に頼んだらしばらくそれで頼み事してくるんだから!」
「……働かざる者食うべからずだと思うけど?」
「だから頑張ってバイトしてるんでしょーが!それに今回は散財が多かったんだから仕方ないの!あと4日はお弁当作ったりしてなるべく自炊するわよ!」
ここから4日間は自炊を頑張るしかなかった。早起きして2人分の昼食とそのうち3日はバイトがあるからおにぎりを作って空腹を紛らわす事にしよう。
3日後……
「……ひもじー……」
「王鷹さん……どうしたの?」
バイトの先輩から心配された。
「いえ、今月かつかつなので食費を削減してるんです。」
「なんだそんな事なら賄い貰っていけば?」
「いいんですか?」
「いいわよ。店長に言えば作ってくれるんだよ。あの人店員にめちゃくちゃ親切だからね。」
バイト始めもそうだったがここはやはりいいバイト先のようだ。明日が給料日だからなんとかなる。
「お疲れ様でしたー!」
「はーい、お疲れ明後日もよろしくねー」
「はい!お疲れ様でした!」
今日貰ったのは餃子、そして焼飯だ。帰ったらスープを作ろう。
「ただいまー!」
「おかえり……何それ?」
私の手にある袋を見て文華が言った第一声がこれだった。
「賄い貰えたから食べよ!」
「えっ?いいの……?」
やはり困惑してる文華、まぁそうだろう。久しぶりの真っ当なご飯だ。2人して食に感謝して食べた。
「ご飯ってやっぱり大切なものなんだね。」
「そうだねー……ここ最近集中出来なかったから今夜は集中して勉強できる。」
「お腹いっぱいで寝てしまうんじゃない?」
文華は少し不満そうな顔をした……そんな不吉な事言うなという顔だった。
「悪かったわよ。だからそんな目で睨まないで!」
「分かればいいよ。」
そう言ってシャワーを浴びに行った。
(こ、怖かった……)
あんな目も出来るのを初めて知った。まぁそろそろ……ピリピリし出す頃だから仕方がないだろう。もう時期10月……3ヶ月後には学力共通テスト……なのだから。
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