第48話 記憶
雨は未だに降り続く中、私と桜は昔の思い出を話していた。と言っても文華が何かを考え始めたから話題の舵を切る事にした。
「よく読み聞かせて貰ったのって言ったら……桃太郎?」
「サルかに合戦もあったねー。」
どの話も懐かしい……読み聞かせは大体小学生までだ。今話してるのは幼稚園くらいの話しだろうか……とりあえず親に読み聞かせしてもらった事ないというか記憶にないのはなんでなのだろう。
「ねぇ、本読んで!」
「読むのも勉強!わからない文字は教えてあげるから1人で読みなさい!」
「ねぇ、この本読んで!」
「ごめんね、パパ忙しいからまた今度な!」
「……育児放棄か!」
「な、何よいきなり!?」
私は大声で昔の両親にツッコミを入れた!いや放棄とまではいかないが本を読んでと頼んでも読んでくれないんだから記憶にあるはずない!当たり前の事実に今気がついたのだ。
「いやさ、昔読み聞かせされた事なかったからなんでかなと思い出してみたらまず読み聞かせすらされてなかった。」
「虐待されてた?」
「いやいや、そしたらこんなに真っ直ぐ生きてないって!」
「まぁそうだよね。」
ひとまず誤解は解けたからよし。だけど……今思うともうちょい読み聞かせとかしてくれたら文学系も得意になってたかもなのに……
「でも、読み聞かせとかしてくれないっておかしいよね?なんかそういう宗教とか?」
「そんなのないよ。ただ面倒くさかっただけでしょ。」
「そんなもんかね?」
「そんなもんよ。ウチの親はね。」
それでひとまずこの話は終わった。そして未だに悩んでる文華の為に一息付くことにする。
「文華、一旦お茶にしよ。」
「そうだよー。甘い物食べて一旦休もう!」
私たちはお茶の準備をする為にテーブルの上にある物を片付けてコーヒーを淹れた。買って来たのはコンビニのショートケーキだ。
「ショートケーキか……コンビニのは食べたことないな。」
「マジ?結構美味しいのに!」
「いやいや、高いじゃん!」
そんなこと言いつつ一口食べる。
「美味しい!」
「でしょ!そう言えばさー……お菓子の家ってあったよね?」
「あー、ヘンゼルとグレーテル?」
「そうそれ!昔さー、あんな家に住むの夢だったんだけど今思うと至る所お菓子って事は砂糖で体がベタベタになるし自分の家を食べるってなると住む場所を失うって事だよね……」
「食欲を取るか住む場所を取るかって事よね?」
「そうそう!でもさ……普通に考えて出来るはずないし、絶対固くて食べられないよね。」
「確かに……あの2人よっぽどお腹空いてたんだろうね。」
木を見て森を見ずの発言ばかりだった。それからピノキオ、人魚姫、と話をしていく。
「結構原作は暗いよね。」
「何でこんな話が児童文学なのか……昔の人の気がしれない。」
「桃太郎もぶっちゃけやってる事は鬼と同じだよね。結局力の強いのが鬼から人間になっただけだし!また鬼が強くなれば同じ事繰り返すだけよね。」
「平和的な解決をとかは結局机上の空論なんだよねー。」
「もう少し子供に夢を与えられて、楽しめる物を書けないかな?」
「書けるの?」
「理系の私に?無理無理!」
散々批判してこのザマだ。私たちも結局同じ穴のムジナだ。
「まだ赤ずきんちゃんの方がまともだよね。」
「あれもツッコミどころ多いけど、まだ悪い狼を殺して2人とも生きててめでたしめでたしだもんな。」
「まだハッピーエンドだよね。原作の報復はやり過ぎ感はあるけど……」
「それ言い出したら7匹の子ヤギもじゃない最後は溺死させてみんなで喜ぶとか教育に悪すぎでしょ。」
「あぁ……でも、子ヤギ達も食べられてるからね。因果応報でしょ。」
結局ツッコミどころが多いというのが童話だという事で私たちもそれだけ善悪を区別出来るようになったのだろう。
「あっ……」
そこで声を上げたのは文華だった。何か思いついたのか原稿用紙に何か書き始める。何かヒントでも見つけたのかな?
ここまで読んで頂きありがとうございました。
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