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第45話 お盆 (ホラー要素あり)

 8月13日、私たち家族はお墓参りに来ていた。一泊二日で他県にあるお墓にきていた。どこに行っても蝉の鳴き声はうるさい。


「あっつぅーーい……」

「何言ってるのよ。都会に比べればまだ涼しい方じゃない。」


 私の愚痴に母さんは容赦なく背中を叩いて否定してくる。かなり力は強い……だから痛い。痛いと暑いとかもう最悪だ。


「ほら、お墓掃除するから桶を借りてきて水をくんできなさい。」

「はーい!」


 私はお寺の方から桶と柄杓を借りて水道から水を溜めて持ってきた。そしてまずはお墓に手を合わせる。


「日頃の感謝を伝えておきなさいよ。理子の事はしっかりみてくれてるはずよ!」

「みんな平等にみてると思うけど?」


「何言ってるの!毎日平和に一人暮らし出来てるのはご先祖さまあってのことよ!ちゃんとお礼言いなさい。」


 幽霊や妖怪とかは信じるつもりはない。でも、ご先祖様が見守ってくれてると言う母さん、確かにご先祖様がいないと私は産まれていない。これは事実だ。そして平穏無事で居られるのはその環境を用意してくれたご先祖様だ。そのお礼をし掃除するのはある種当然なのだろうが……


「暑いし……草多いし、虫もいる!なんでこんなになるまでほっといたの!」

「ほったらかしたのはここの住職!管理にお布施を渡してたのに何も手入れなんてしてなかったのよ!」

「まぁ理子が文句を言うのも分かるけどな……」


 私と母さんの間に入ってきたのは父さんだった。久しぶりに話した気がする。


「父さんはこの暑さ気にならないの?」

「文句を言ったって涼しくはならないからなぁ。それより早く終わらせてご先祖様とお酒を飲みたいんだ。」

「お酒ね……」


 つまりは暑い中頑張った後に飲むお酒が1番だと言う事だ。


「じゃあ私にも冷たい飲み物をもらおうかな?」

「あんたにはアイスがあるわよ。早く終わらせたらそこのコンビニで買ってきなさい。」


「よっっっしゃーー!!やるぞー!」

「はいはい、頑張ってー。」


 という事で、私はブーストがかかり昼間の1番暑い時間の前に片付いた。最後にもう一度手を合わせて私たちは一度旅館に帰る事にした。そして近くの川に来ていた。


「良い場所だよね。」

「そうだね……」


 ん!?知らない人が立っていた。見た感じ男の人……でも喋り方は女の人……よくわからない方だ。


「いつから……?」

「ずっとだよ……」


「地元の方?」

「そうだよ。」


「涼みに?」

「えぇ……」


 少し気味が悪くなった。あんなに暑かったのに一気に気温が下がった感覚になる。


「す、涼しくなったので帰ります。」

「どこへ?」


 どこへと聞かれた……わからないあれ?私どこからきたんだっけ?


「どこだっけ?」

「……こっちだよ。」


 男性はいつの間にか川の中にいた。そして手招きしている。行っちゃいけないとは思ってる。でも、行く場所も帰る場所もない……だから付いて行こうと足を一歩進めようとした所で腕を引っ張られた。


「どこ行こうとしてるの!」


 手を引いてくれたのは母さんだった。


「アンタ死にたいの!あの川は水深が深いって言ったでしょうが!」


 私は腕を引っ張られながら川から離れた。あの人はまだそこにいた。声は聞こえなかったが口の動きでアレは私を殺すつもりだったようだ。


『あぁ……もうすこしだったのに……』


 私にはそう口が動いたよう見えた。あの川には絶対近づかないそう決めた。


「理子!前を向いて!道はこっち!分かる!川じゃないの!良い!?」


 母さんからそう言われて私は我に返る。そうだった。私の帰る場所は……いや、うん……待ってくれてるだろうけど……今は母さんと父さんがいる場所だ。


「うん!分かってるって!母さんと父さんがいる場所だ!」


 さっきまで焦ってた母さんの顔がようやく安堵の表情に変わった。そしてその直後後ろからものすごい音がした。川の流れが一気に速くなっていたのだ。


「いきなり何!?」

「ダムの放流よ。サイレン鳴ってたじゃない?」

「……聞こえてなかった。」

「バカ!」


 私は頭を小突かれた。本当に死ぬ手前だった様だ。私は少し冷えて模様したのでお手洗いに行ってから部屋へ戻った。部屋へ戻ると母さん達はお風呂に行く準備をしていた。冷えたから温まりたかったので丁度良かった。そしてその日は他に何事もなく終わり翌朝、もう一度お墓に手を合わせて自宅に帰る。帰り道の車の中で私はふと頭に疑問が浮かんだ。


「そう言えば、なんで母さんはあそこにいたの?」

「はぁ?」


 母さんは何の話と言わんばかりの返事を返した。


「いや、あんな暑い中出歩かないって言ってたのに何で川まで迎えに来たのかなって?」

「何言ってるの?私は川になんて行ってないよ?」


「えっ?だって!?」

「ねぇ、あなた……私たちはずっと部屋に居たものね?」

「あぁ、自分たちは冷房入れてビールを飲んでいたら寒くなって温泉へ行こうとした時に理子が帰ってきたんだぞ?」


 私は背筋が凍った。じゃあ私を助けたのは一体……とりあえず……次回はご先祖様にしっかりお礼を言おうと思う……

 ここまで読んで頂きありがとうございました。

次回更新もお楽しみに!


 面白い、続きが気になるという方はブックマークをしてお待ち頂けると幸いです。

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