第44話 帰省
帰省しても夏の暑さは変わらないだが電気代を気にせずクーラーを使えるのは最高だ。そう思って昼前からソファで寝てる私に母さんからの雷が落ちたのは言うまでもない。私は速攻で家から叩き出された。暑いのにだ!これは虐待だと思う!そう思いながら近くのファミレスに避難した。
「所持金は……」
財布には2000円入っていた。なぜここまで金欠なのだろう……原因は……多々ありすぎて理解する。仕方ないからドリンクバーで粘ることにした。
1時間経過……
「つまらん……」
何がつまらないかわからない……だがつまらない……話し相手もいなければ何かを食べてるわけでもない。何か暇つぶしになる様なものを持ってくれ良かったと思った。スマホを見ながらドリンクバーの飲み物をおかわりする。
(文華……何してるかな……)
頭にふとよぎった名前そして流れる様に顔も声までも浮かんでくる。まぁ実際いるわけではないからすぐに忘れる。たぶん本来なら幻聴とか言ってて本人ご登場ってのが鉄板なのだが、残念ながらあの子はこんな暑い日は追い出されそうになっても決して外には出ない。なんなら布団にしがみついてでも出てくる事はない。暑いだろうが絶対クーラーの入った部屋の中で布団にくるまってるだろう。だから来るはずがない。という事で……
「来たぞ!」
「帰ってくれますか?」
文華の家に来た。しかしまさか本当に布団の中にいるとは……
「昨日買った本を全部読まないといけないの!遊んでる暇ないんだよー!」
「いやー、涼しい所に居たくてねー」
「自分の家に帰ったら?」
「鬼ババに追い出されたからしばらくここに居させてよー」
「迎え呼んであげようか?」
「いやいい……ぜっったい昼から手伝いさせられるし……」
「……じゃあ静かにしててね。」
哀れな目で見られた。そんなに私は哀れだったか?まぁとりあえずの安住の地へ来れたから遠慮なくゴロゴロできる。
「母さん、理子が暇そうにしてるから何か用事ある?」
「えぇー、じゃあ話し相手でもしてもらおうかしら?」
文華……お前許さんぞ……
「ダラダラしてる理子は見たくない。」
「あっ?」
「かっこいいいつもの理子でいてよ!」
そんな……満面の笑みで言われたら……
「良い感じになると思うなよー……」
「ギブギブ!!」
締め落とすギリギリで解放して文華の母さんのもとへ行く。私のダラダラタイムを邪魔した罪はまだ残っているから残りは帰ってからだ。
下に行くと冷たい麦茶を用意していてくれた。氷入りである。
「冷たいので良かった?」
「はい!全然大丈夫です!」
この暑い時期に暑い物は飲めない……冷たいので良かった。
「それじゃあ……早速……」
その直後、文華の母さんの雰囲気が変わった。
「何処までいったの?」
「はい?」
「同じ屋根の下にいるんでしょ?キスくらいしたんじゃないの?」
なになになになに?この状況!いきなり恋バナに発展したんだけど!しかも娘の恋バナだと!?話がついていけないんだが!
「ま、待ってください!私たちはまだそんな関係では……」
「まだ?まだなの?なら早い方が良いわよ!女は度胸よ!」
「違いますよ!女は愛嬌ですよ!」
なんでこんな目に遭ってるのかわからない……
「と、とりあえず落ち着いて下さい。そして一度座りましょう。」
「そうはいかないわ!あなたが告白するまで説得しますよ!」
この剣幕は流石に怖い!と言う事で……
「お邪魔しました!!」
勢いのまま私は文華の家を脱出した。
「あ、帰ったんだ……」
「うん、まぁ理子ちゃんのお母さんが来たら帰らせる様に仕向けてくれと言われたからね。」
そう私はもう行く場所はない……そして腹は減った……しかし金がない……すなわち帰る選択肢しか無くなったのだ。
「おかえり!ほら焼きそば作ってるからそれ食べて午後から買い出し行くんだからね!」
「はーい……」
かくして私は無事に私は我が家に収容されるのだった。
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