第42話 帰省前日
夏休みに入って5日経った。セミは今日も元気に鳴いていた。このクソ暑いのにご苦労な事だ。そんな中私は……
「ぐてーー……」
溶けていた……バイトもしているが明日からは帰省するためしばらくシフトは入れてない。だから今日は出来る限り溶けておく。
「……」
その横ではカリカリとシャープペンで問題を解いてる文華がいる。桜はというと今日は用事があるらしくどこかに出掛けた。明日から数日は桜に留守番を頼む事になる。今は3人の生活だ。
「今日くらい休んだら?」
「……」
ものすごい集中力だ。私の声が聞こえてないくらいに……模試の結果は上出来だったはず……それでもまだするのは不安からなのかはたまた焦りか……
その日はとにかくごろ寝だった。動画見て寝ての繰り返し……そのまま今日は終わると思ってた。
「……お腹すいた……」
文華のこの発言で私も動画から目を離した。時刻は16時過ぎ……そろそろ日が傾く時間だ。
「朝ごはんから何も食べてないもんね……」
「理子も食べてないの?」
「うん、文華も食べないみたいだったし私もいいかな?って……」
「痩せるからしっかり食べないとダメだよー」
「喧嘩売ってる?私より痩せてる文華ちゃん?」
「ギブギブ……!」
とりあえず締め上げてやると数秒でタップした。まぁ私が締めただけでポッキリ折れそうな首なのだが……
「それじゃあ何か食べに行く?」
「……えっ?」
「桜には外で食べてくるって伝えておくから行こうか。嫌ならいいけど?」
「いく!」
という事で、急遽外出となった。なお桜からはデート楽しんで来いとだけ言われた。誰がデートやねん!と打ち込んで送信してやった。
さて、お出かけなのでそれなりに服装を変える。流石にジャージは論外だからそこそこオシャレをした。
「どこ行くの?」
「まずはお腹を満たそうか。」
という事で、ファミレスに来た。
「……」
「不服そうね……どうしたの?」
「もっとオシャレなレストランに連れて行って貰えると思ってた。」
「私らの給料でそんなところ行ったらね。今月どころか再来月までもやし生活よ!」
頬を膨らませているが本当に最近は物価高でそんな事できないんだから仕方ない。
「ほら、好きな物食べなよ。奢りだからさ!」
「うん……じゃあこれで……」
指差したのはサーモントロ丼だった。かなりガッツリ飯だ。
「ファミレスでは珍しい物を選ぶわね。」
「いいでしょ?珍しく食べたかったの。」
「じゃあ私もネギトロ丼にしようかな。暑いしさっぱりした物食べよ。」
注文後はドリンクバーで飲み物を取ってくる。
「何飲もうかな?」
「冷たいのじゃないの?」
私が今いるのはホットコーナーだったから文華が少し疑問に思った様だ。
「お腹壊すの嫌だからね。冷たい物ばかり飲むと体冷えるし。」
「外出れば暑いよ?」
「そういう問題じゃないことくらい分かるよね?」
「……私はオレンジジュースにするね。」
「どうやら揶揄ってた様ね……」
これは帰るまでにお仕置きしなくちゃいけないけどひとまずは食事だ。私はあったかい烏龍茶を注いで持っていく。席にはまだ何も来ていない。来るまでは文華と雑談である。
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