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第41話 思い出

 人は本当に困った時、冷静さを失う。


「やばいやばい!ここどこ?」

「わ、わかんない!歩き回り過ぎて現在地が……」


「ねぇ、みんな……なんでスマホで位置見ないの?」


「あっ……」


 早苗の一言で私と桜は正気に戻った。そして文華はもう調べていてそれを桃華は覗き込んでいた。


「3人とも冷静すぎじゃない?てか、早苗の発言でパニックになったんですけど?」

「いや、少し焦ったけど……」

「スマホってそういう時に使う物だし……」

「なんなら線路沿いに戻れば駅につけるからね。」


 淡々と話す3人に少し恥ずかしくなる。そしてまだ駅から離れてない事もすぐに分かった。


「うん!大丈夫だよ。花火が上がるのは20時からだしまだ18時を少し過ぎたくらいだから橋を渡って反対側に行きましょう。その後は隣の駅までバスで帰れるよ。」


 文華の説明から私たちは橋を渡って隣町に行く事にした。その間も多くの人たちとすれ違うが浴衣を着てる人がほとんどだった。団扇を持ってる人もいれば水ヨーヨーを持ってる人、はたまた水袋に金魚を入れて連れて廻る人も……


「夏祭りの金魚ってすぐに死ぬって言うけど本当かな?」

「育て方次第じゃない?長く生きるのは生きるし、死ぬ時は死ぬよ?」

「そうなのかー……」


「その前にこの中に金魚すくいで取れた人いるの?」


 桃華の疑問にみんな顔を見合わせた見た感じみんなないらしい。


「みんなないなら誰も答えは知らないでしょ?」

「じゃあちょっと挑戦しますか……」


「やめなさい。」


 やる気満々の桜を私は一旦止めた。


「なんでよー!」

「まず獲れない、荷物になる、万が一に獲れたとして桜は面倒見れるの?」

「……やめとく!」


 即決かよ、と思いつつも止まってくれて良かったと思う。それから10分くらい歩いて行くと大きな公園があった。ここでも出店が出ていたからチョコバナナ、アイス、ジュースを買った。広い公園だからか人工密度も低くベンチも空いていたから座る事にした。


「座れてよかったねー」

「だねー。」

「うん……」


 早苗は申し訳なさそうに私と文華を見た。そう私たちは立ち見になってる。理由は簡単いくら大きな公園でもそんなに長いベンチはない。だから仕方ない事だ。


「早苗は優しいねー気を遣ってくれて。」

「いや、電車の中で私も座ってたからなんか罪悪感が……」

「気にしなくていいんだよ。運が良かったと思って座っておきなよ。」

「そうそう、それに2人が疲れたら変わればいいだけだからね。」


 そう言って桃華と桜はチョコバナナを食べてた。私と文華と早苗はアイスを食べた。冷たさが口の中に広がるとここまで歩いてきた疲れが吹き飛ぶ。


「他に食べたい物ある?」

「私はいいかな?」

「私もないです。」

「私たちもないよ。」


「そう、じゃあ私はイカ焼き買ってくるねー。」


 そう言って桜は屋台に走って行った。1つ席が空いた事によりどちらかが座れる。


「文華。」

「いや、理子……」

「いいから!」

「いやいや、理子が!」

「じゃんけんで決めたら?」


 桃華の一言で私たちは素直にじゃんけんで決める事にした。毎回毎回私の言う事を聞いてきた文華が最近はよく反抗するようになってきた。前までなら素直に座ってただろう。おそらくこれが成長なのだろう。


「じゃんけん……ポン!あいこでしょ!」

「はい、文華座っていいよ!」

「うん……」


 でも、私に勝とうなんて100年早いんだよなー。


「いや、なんで勝った人が座らないのよ!」

「あ……」

「あ……」


 何も考えずただ私が勝ったから立つ流れだが普通は勝った人が座るのだけど……まぁこれが私たちらしくて良いんだろう。それと同時に桜がイカ焼きを買って帰ってきた。


「なになに?なんの話?」

「いや実はさー……」


 桃華はさっきの話を始めて全てを聞き終わるとゲラゲラと笑った。それと同時に花火が上がり始める。


「おぉー!」

「綺麗……」


 音が凄くて聞こえたのは文華と桜の感嘆の声だけだった。それでも目に映る光景はとても綺麗で……私も感嘆の声を上げる。それから30分くらい花火が打ち上がってフィナーレとなった。


「それじゃあそろそろ帰ろうか。」


 みんな頷いて公園の出口に向かう中……文華だけが少し遅れて歩いていた。


「文華どうしたの?」

「大丈夫だよ、先に行ってて……」


 私は1つため息を吐くと文華の元に駆け寄った。そして足を見ると鼻緒の当たる場所が赤くなっていた。


「早く言いなよ。」

「ごめん……」


 私は巾着から絆創膏を取り出した。


「いつ買ったの?」

「最初に寄ったコンビニ……前も似たような事があったなぁーってね。」

「前?」


「たぶん文華じゃないよー。お祭りでさ、女の子が足が痛いって泣いててさ。その子も文華と同じ所を怪我しててたぶん歩き慣れないから念の為買ってたの。」

「そうなんだ……私も確か昔お祭りの時こうやって介抱してくれたお姉さんに会ったよ……」


「そっか……」

「うん……」


 少しの無言の後絆創膏を貼り終わった私は文華をおんぶする。たぶんこのままだと3人に間に合わないからだ。


「理子……ありがとう……」

「どういたしまして!」


 その後走って3人に追いつく……そして後ろから見る3人を……私はいつまで覚えてるのかと……あの日の少女の様に……

 ここまで読んで頂きありがとうございました。

次回更新もお楽しみに!


 面白い、続きが気になるという方はブックマークをしてお待ち頂けると幸いです。

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