第40話 お祭り
電車の中から浴衣を着た2人が見えた。桃華はひまわりの柄、早苗は金魚の絵だった。
「おっ、2人ともよく似合ってるね!」
「ありがとう!」
「桜もよく似合ってるね。」
「あはは!そうでしょ!」
2人は電車の中というのを忘れて大声になりつつあった。
「2人とも少し静かに!」
「あっ……」
桃華と桜は周りを見渡して静かになる。私と文華、早苗は座っているが2人は立ったままだった。
「何で座らないの?」
「この方がみんなの顔が見れるから」
「だって5人全員座ったら端と端は話に加われないじゃん。」
「あー……なるほどね。じゃあ桃華が座りなよ。私が立ってるから。」
「いいよ、どうせあと数駅だしね。」
桃華に静止されて私は座った。そして最寄駅に着くと……めちゃくちゃ人がいた。
「まっず!人多すぎ!一旦端に行こう!」
私は近くに居た早苗と桜と一緒に壁際に寄った。
「文華と桃華は?」
「わからない。途中ではぐれちゃって……」
「この人の多さだし、探すの大変だよ?」
「通話で呼び出すか……」
私がスマホを取り出そうとした時だった。
「あっ、ようやく見つけた!」
「2人とも!良かった!」
桃華と文華が戻って来たのだ。どうやら反対側の壁際に居たらしく。私たちを見つけてこちらに来てくれたのだ。
「どうする?」
「行くしかないけど少し人が引いてからにしましょう。」
「賛成ね。とりあえずゆっくり行こう。」
文華の案にみんな賛成の様で頷いた。という事で他の方が行くまで待つ事にした。でも、こういう時に限って変なのが寄ってくる。けれども複数人いれば対策もある。
「あー、あの人たち遅れてくるんだってー!」
「そうなんだ!じゃあもうちょい待とうかー!ラグビーの試合だもんねー」
などと話してれば命知らずな男は寄ってこない。ある意味虫除けスプレーより効果がある。
「さて、そろそろ行くかー!」
「だねー!」
さて、こういう時必要なのは何か?それは男組に紛れる事だ。出待ちしてる男どもも多少いる。という事でそれなりの男性集団の中の後ろに入る。するとあら不思議、もう絶対声はかけられない。嘘を最後まで突き通せば真実になる。難しいけど出来ればこれほどの防犯になることはない。
「みんな何食べる?」
「わたあめ!」
「りんご飴!」
「焼きそば!」
「かき氷!」
「見事に分かれたわね……とりあえず文華はわたあめじゃなく他のにしなさい。帰っても何もないからお腹に溜まるものにして余力があればわたあめにしなさい。」
「……はい……」
めちゃくちゃ落ち込んでる文華を見てしまうと心が揺らいでしまう。だから少し考える。
「わかったわ。私と焼きそば半分こにしてお腹に溜めてからわたあめにしなさい。」
「ありがとう!」
という事で、私はじゃがバターコーンを食べる。実は私の狙いはこちらなので文華を利用した。
「美味しい!」
「ねぇ、かき氷一口頂戴!」
「いいですよ、代わりにりんご飴を一口下さい。」
「はーい!」
桃華と早苗は交換して食べていた。桜は焼きそばを啜りながら次に食べるものを考えていた。私と文華は2人で1つの焼きそばを啜っていた。
「結構濃い味ね。」
「そうだね。お祭りだからね。お好み焼きとかも欲しくなってきたよ。」
「持ち帰りで買っておこうか?」
「うん、そうだね!」
という事でお好み焼きを買って帰ることになった。そして食べ終えてから文華が食べたがってたわたあめを買った。そして私はじゃがバターコーンを買う。
「美味しい?」
「うん!一口いる?」
「いらなーい。私はじゃがバターコーンがあるからね。」
「理子は昔からそれ好きだよね?」
「そうだっけ?」
「うん、昔から……」
「知ってたっけ?」
「うん、よく食べてたからね。」
文華とはよく遊んだし、泊まった事もある。でも文華にそんな所見せたか?
「知らないだけで見てるんだよ。」
どこか嬉しそうに言う文華を可愛いと思ってしまった。
「ねぇ、そろそろ移動しない?」
「賛成!近くに座れる場所とかある?」
「あるよ、少し離れた公園から見えるんだってさ。ベンチに座って観れるかもよ。」
桜の調べた公園へ5人で向かう……だけどこういう花火大会で穴場など存在せず……
「まぁそうだよね?」
「うん、そうなるよねー」
私と早苗の言葉からわかる結果である。満員でそこら中で走り回る子供に花火禁止と書いてあるのにやってる阿呆ども……
「……行こうか……」
「そうね。」
桜の一言でまた移動だ。まぁどこからでも見えるだろうが落ち着いて観たいに決まってる。そしてそれは皆同じだ。
「少し思ったんですが……」
「何?」
「ここは今どこですか?」
早苗の言葉にみんな顔を見合わせる。
「どこだっけ?」
文字通り私たちは迷子になった。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
次回更新もお楽しみに!
面白い、続きが気になるという方はブックマークをしてお待ち頂けると幸いです。




