第39話 忘れてた事
10年前だったと思う……小学2年生の時近くの神社のお祭りに1人で行った時の事。夕暮れ時なのに人が沢山居て提灯の灯りが普段と違う景色を作っていた。屋台からはソースの匂いがしてお腹も空いていた。そんな中1人の少女が泣いていた。確かその少女はアサガオの浴衣を着ていた。
現在、アサガオを着てるのは18歳の幼馴染だ。
「さすが!何着ても似合うわね。」
「だねー。でも少し痩せ過ぎね。浴衣や着物は少し肉が付いてた方がいいのよ。」
「なんか……久しぶりな感覚……」
私たちの反応と異なり文華は少し違和感があるのか洗面所に自分の姿を見に行ってしまった。
「似合うのにね。」
「着た時に違和感があるのはまぁあるわね。普段着ないならなおさらよ。」
納得した。なら私は初めて着るからどんな感じなのかワクワクしてくる。そんな中文華が戻ってきた。顔は少し赤い。
「なんで頬が赤いの?」
「気にしないで……」
顔をプイッとさせた文華どうやら照れてるらしい。お祭りの前はなんだかいつもと違う感じだ。そして私も着替える事にした。
「……いつもとなんか違う……」
「そりゃーね。でも、こういう特別感がよくない?」
「確かに……って桜は1人でサクサク着替えてるわね。」
「言ったじゃん。私は1人で出来るって!」
とは言え何とも言えない手際の良さだ。あっという間に着てしまった。
「よく着るの?」
「まぁね。いろいろあるんだよ。これでもね。」
「桜さんは良いお家の育ちですか?」
「文華ちゃんは鋭いなー……まぁ厳格な家ではあるね。」
それは知らなかった。てっきり普通の家庭で普通に育っていたとばかり思っていた。
「その割には上品とは言えないね。」
「ちょっと理子!」
「あはは!私には合わないからね!それに理子には言われたくないわ!」
桜は私の頭をぐるんぐるんと回した。結構力入れてる。結構怒ってるらしい。
「わ、悪かったからやめてほしい……」
「痛かった?」
「それなりに……」
「そう、じゃあ文華ちゃん。こっち来て髪結ってあげる。」
「えっ……?そのくらいは自分でやりますよ?」
「いいからおいで!こういう時はこういう時の結い方があるんだからね!」
そうして髪を結い始めて数分後には綺麗なお団子ヘアーになっていた。
「ほぇー髪も結えるんだ。」
「これくらいは簡単よ。理子はショートだしそのままでも良いけど……変えてみる?」
「んー……遠慮しとく。」
「うん、そのままの方が私もいいと思う。来年も行くからその時はやってあげる。」
桜なりの感謝なのか特に嫌味もなく終わった。
「それじゃあ行きましょうか。桃華さんと早苗さんが待ってるよ。」
「まだ1時間は余裕あるから近くのコンビニ寄らない?」
「寄らない!買い食いしなくても屋台がたくさん出てるんだから!」
私は桜の提案を否定したが桜は食い下がらなかった。どうやら言い分があるらしい。
「飲み物くらい買っておかないとあっちは割高だぞー」
私と文華は顔を見合わせた。今月の出費を計算してどのくらい使えるかも把握していた。1円でも節約はしたい。
「じゃあ寄る!でも、ディスカウントストアでね!あっちの方がもっと安いもの!」
「遠くならない?駅から少し離れてるけど?」
「大丈夫でしょ?たぶん……」
私は文華を見たら首を横に張っていた、否定の様だ。
「大丈夫じゃないからコンビニでお願いします。」
「なんで?」
「歩き辛い……」
そう言えばあの子もいつもの靴じゃなくて鼻緒を履いてきて足を痛がってたっけ……
「桜、鼻緒持ってきてるの?」
「当然!浴衣きといて靴とかヒールとかないからね。」
意外とオシャレにしっかりしていた。少しショックだ。
「今失礼な事考えなかった?」
「そんなわけないじゃん!」
エスパーかお前は!でも、そうなると遠くまでは歩かせられない。となると消去法となって……
「いらっしゃいませ!」
コンビニとなった。
「早苗と桃華の分は何にするの?」
「お茶で良いってよー」
「いつ聞いたの?」
「来る前」
準備が早すぎるが、それが桜の良いところでもある。
「文華ちゃんもお茶?」
「うん、あ、でも自分で出しますよ?」
「そうね。私と文華のはいいわ。私たちで出すからさ。」
「そう、じゃあ会計は別々ね。」
「あっ、文華先にお支払いしといて。私トイレ行ってくるから。」
そう言って私は店のトイレを借りて少し思い出す。お茶も大事だけど他に必要な物があった様な……それを考えていた。
「ごめんお待たせ!」
「遅いよー!電車ギリギリだよ!」
「ごめんごめん!じゃあ行こうか!」
私たちは買う物を買って駅に向かった。
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