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まりか、りじぇねれいと!  作者: めらめら
第6章 至天門夢幻階梯の崩落
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神様、まってやがれ!

「茉莉歌、君は『願い事』を使って、学園に戻るんだ、君の事は、理事長に頼んである」

 リュウジは、そう茉莉歌に告げて、彼女にしみじみ言った。


「姉貴と、お父さんの事、つらかったな……でも、あれで良かったんだ……」


「おじさんは……どうするの?」

 茉莉歌が顔を上げて、いぶかしげに彼に尋ねた。


「俺は……行くところがある、コータとの約束を守らないと」

 リュウジは答えた。


「本当なら、俺の『願い事』で君を帰さなきゃいけないのに……」

 彼はすまなそうに茉莉歌に言った。


「おじさん、『あれ』をやるつもりなんだ……」

 茉莉歌が、リュウジを見て言った。

 何かが分かったという風に。


「……え?」


「あのキモい先生の言った通り、『世界』と一つになって、『隙間』を見つける、そのつもりなのね?」


「……そうだ」

 リュウジは言った。もう彼に、迷いはなかった。


「だったら……私も行く」

 茉莉歌が、ポツリと言った。


「……それはだめだ!」

 リュウジは慌てた。

 何の勝算も無い賭けに、姪を巻き込むわけにはいかない。


 仮に目論見どおりに事が運んだとして、『外側』に何が待っているか、想像もつかないのだ。


 姉と約束した。茉莉歌だけは絶対に守り通すと。


「ま……」

「聞いて、おじさん!」

 茉莉歌がリュウジを制した。


「『隙間』を見つけたって、そこでおじさんがへたってしまったり、どうかしてしまっていたら、意味ないの」

 茉莉歌の声は冷然。

 

「目的は、世界の外側に行って……そう……『神様』と話し合うことでしょ?」

 彼女は続けた。


「だから、私も行く。私も『隙間』まで連れて行って! おじさんと私のどっちかが『外側』に出られればいいの、確率は倍になるでしょ?」

 茉莉歌が、リュウジをまっすぐ見つめて、そう言った。


「おじさん」

 彼女は静かに言った。


「……こんなの、絶対おかしいよ。もし、『神様』がこんなことをしたんだったら、それは『神様』の方が間違ってる」

 静かな口調の中に、決意と、怒りがあった。


「……そう、私達が、『とっちめて』やらないと!!」

 茉莉歌は親指で自分を指して、笑った。

 その笑顔は悲壮だった。


「………………」

 リュウジはしばし考え、つぶやいた。

「『願い事』は組織化されるほど有効に機能する……か……」

 リュウジは茉莉歌を見た。


「茉莉歌! 覚悟はいいか!」


「うん、行こう、おじさん!」

 茉莉歌が頷く。


 リュウジは夜空を仰いだ。

 暗い空には星とも月とも異なる、オレンジ色のぼんやりとした光点がいくつも散らばっていた。

 光点は彼らを嘲笑う目のように思えた。


 リュウジは、黙って茉莉歌の手をとった。そして空に向かって叫んだ。


「よく聞け!願い事を言うぞ!」


「世界の全てを見せろ!俺を世界につなげ!そして俺とこいつを『外』に連れて行け!」



  ぐ ぐ ぐ ぐ ぐ ぐ ぐ ぐ ぐ




 リュウジの目の前に、空が落ちてきた。


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