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まりか、りじぇねれいと!  作者: めらめら
第6章 至天門夢幻階梯の崩落
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公園の別れ

 夜の帳が降りた新宿御苑。


 人影は無く、ご多分にもれず恐竜や魔物ばかりの徘徊するこの広い公園の真中に、ジェット噴射の光芒を放ちながら芝生を抉って不時着する鉄塊があった。


 小脇に茉莉歌を抱え、背中にリュウジをおぶったコータだった。

 限界を迎えたメタルマンスーツは、着地とともにバラバラに砕け、胸部のエネルギーアンプは焼き切れ、その動力は絶えた。


 そして、コータもまた、限界を迎えようとしていた。

 力尽き芝生に横たわる彼の手を、リュウジが握っている


「リュウジ、最後の最後で、しくじったよ、結局、彼女に頼りっぱなし……情けないな……」


「……何言ってるんだコータ! かっこよかったぞ!」


 茉莉歌も泣いていた。

「コータさん……!まってて、今その傷を……」

 自身の願い事で、コータの命を助けようとする茉莉歌。


「だめだ、茉莉歌!」

 力ない声でコータが茉莉歌を制した。


「リュウジ、勝手な事を頼む、おまえの願いで、『世界』を救ってくれ!」


「…………!」

 リュウジは絶句した。彼は教授の言葉を思い返していた。


「『願い事』を用いて君自身が世界と一体化すればいい。世界の『間隙』が見つかるかもしれない…………」


 だがそれは、それは願った本人の消滅を意味している。

 それに、これは何の勝算もない破れかぶれの賭けにすぎない。

 仮説に仮説を重ねた憶測だ。

 世界の『隙間』などそもそも存在しないのではないか?

 教授の出まかせでなかったと、誰に分かる?

 リュウジは逡巡していた。


 リュウジはコータを見た。


 コータは泣いていた。


「結局、彼女の事、最後まで助けられなかった……そしてもうすぐみんな消える」


「……そんなの……こんな終わり方、あんまりだ……」

 コータは苦しげに息を吐いて言った。

「…………わかった、コータ」

 リュウジは意を決してコータに答えた。


「『世界』は俺が救う、エナも、理事長も、みんな俺が助ける!だから安心しろ!」


 リュウジの言葉はコータに届いたのだろうか?

 彼は見えない何かを見つめて、宙に手をのばした。


「ああ……エナ、そこにいるのか?待ってろ……今、助ける……から」


 そういってコータは宙を掴んで、事切れた。


「……コータ!!」


 リュウジは、芝生に顔をうずめて、泣いた。

 茉莉歌は小さな肩を震わせて、ただ俯いていた。


 うおーん。


 闇夜に響く咆哮。


 リュウジは泣きはらした顔を上げて辺りを見渡した。

 ざわざわと樹木が震えた。公園に潜む怪物達が、リュウジと茉莉歌に気付いたらしい。


 リュウジは茉莉歌を見た。


 だめだ。せめて彼女だけは無事に帰さないと。


「茉莉歌、行こう、ここから逃げる!」

 そう言って立ちあがろうとしたリュウジ。だが、


 がくん。リュウジは膝をついた。


()………!」

 危機また危機で、これまで痛みが麻痺していたのだ。

 大月教授に切り裂かれたリュウジの脛の創は、落下のショックで更に悪化していた。

 彼は、もはや立つことはかなわなかった。


「ここまでか……!」

 リュウジは、意を決した。


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