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まりか、りじぇねれいと!  作者: めらめら
第5章 最後の戦い
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闇の中の眼

「ぅうぁああああああ!」

 顔を覆ったエナの口から、人とは思えない、恐ろしい怒りの咆哮。


「うう!」

 リュウジと茉莉歌は、耐えきれず耳をふさいだ。


 だめだ!だめだ!だめだ!


 エナは、歯を食いしばって目を閉じて、必死で自分を抑えた。


 カオスが、膨れ上がっていく。


 閉ざされたはずの彼女の視界にぼんやりと広がっていく、光り輝く巨大な『眼』。

 燃え上がる、緑の焔で象られた禍々しい『眼』が、気がつけば闇の中に独り、裸でうずくまるエナを見つめていた。


そうだ。全てを壊し、燃やし、狂わせ、腐らせ、我が元に導け。


 エナの耳元で湿った風がびょうびょうと囁く。


それこそが、私がお前に与えた、この世での仕事。


 風は楽しげにエナの髪を弄りながら歌うように言った。


お前の母親が、身勝手な願いで、お前を私に捧げたのだ。


 ちがう、ちがう!ちがう!!


 エナは泣きながら首を振る。


 母さん、なんで! 母さん、なんで! 母さん、なんで!


 幾度も幾度もエナがその胸に刻んだ呪詛が、彼女を内から喰らい尽くそうとしていた。

 だが、その時、

 

「エナ」


 ふいに、風の囁きとは違う、人の声が聞こえた。


 コータだった。


「落ちついて、大丈夫だ、君なら大丈夫、さあ、一緒にここから出よう!」

 血だまりの床から、苦悶の顔で起き上がりながら、それでもエナを励ますコータ。


 ぴたり。


 エナの戦慄きが、止んだ。

 彼女の前から焔の眼が消え、風は止み、囁くその口を閉ざした。


 エナは、黙ったままコータに背をむけて、大月教授を睨んだ。

 

 あいつを倒して、三人を助けなければ。


 でも、ここで『あれ』をやったら、みんな無事ではすまない。

 コータさんも……ならば、せめて!


「コータさん、聞こえる?まだ『飛べる』よね?」

 エナは顔を伏せたまま、コータに言った。


「あ……ああ」

「二人を連れて飛んで!ここは私が片付ける!」


「でも、君は……」

「大丈夫、後から必ず行くから……早く!」

「わかった……リュウジ!茉莉歌!俺につかまれ!」


 コータは最後の力を振り絞って、どうにか立ちあがった。

 びゅん。加速するコータ。

 彼はリュウジと茉莉歌を両脇に抱え、研究室の崩れた壁めがけて飛び発った。


 コータとすれ違いざまに、エナがつぶやく。


「ありがとう」


「エナ!!!絶対無事で戻ってこいよ!」

 コータが叫んだ。


「させるか!」

 コータの『離陸』を阻もうと、教授の触手が迫る。だが、

 しゅん! エナの放った烈風の刃が、触手を切り裂いた。


 蛸足はコータに届かず。彼はリュウジと茉莉歌と共に、研究棟を飛び出して夜空に舞い上がった。


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