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まりか、りじぇねれいと!  作者: めらめら
第5章 最後の戦い
29/38

地獄は此処より

「うごおお!」

 茉莉歌の反撃に狼狽する教授。


「今だ!コータ!」


 リュウジが叫んだ。


 じゅっ!


 教授の触手をコータのパルスレイが焼き切った。

 落下する茉莉歌をキャッチしてリュウジと共に研究室から飛び出すコータ。


「 あ り が と う ………… 」


 茉莉歌の頭の中に声が響いた。母、結衣の声だった。


「 お 母 さ ん ! ! 」

 茉莉歌が叫ぶ。その頬には滂沱の涙。


「おごおおおおおおおおおお!!!」

 慌てて手榴弾を飲み込んでしまった教授が、もんどりうった。


 次の瞬間。


 ちゅどーーーん!


 爆発四散する教授の体。研究室の壁が崩れ、夜気が流れ込んできた。


  #


 重い体を引きずって、最上階に辿りついたエナ。

 彼女が目にしたのは、号泣する茉莉歌とその肩を抱くリュウジ。

 そして、緊張から解放され床にひっくりかえっているコータだった。


「みんな、大丈夫?」

「ああ、エナ、君のおかげだよ、でも……」

 正常に戻った様子のエナを見て、コータはホっとした。


「酷い恰好だなぁ、エナ」

 血塗れの彼女に呆れ顔のコータ。


「こ、これは……仕方ないでしょ! コータさん達を守るためだったの!」

 エナが口をとがらせた。


「でもよかった……みんな無事で、コータさんも……」

 エナがクスリと笑った。


「エナ……」

 コータの胸に、熱いものが込み上げてきた。

 あの日会って以来、はじめて、彼女が笑った。


 でも……


 一瞬、コータの顔が曇った。

 彼は教授の言葉を思い出していた。『世界が終わる』…………。

 それが本当ならば、理事長の努力も、エナを救いたいというコータ達の願いも、全て無駄だったということか?


「エナ、聞いてくれ……今、ここで……」

 そうコータが話しかけた、その時、


「ぐおおおおお!」

 突如、コータの胸部からメタルマンスーツを引き裂き、鋭い刃物が飛び出した。


 ぶうう!

 コータの口から鮮血が溢れた。

 コータの背後、爆破された研究室から、異形の影が這いだしてきた。


「言っただろぉぉおおお! バックアップにも気を使ってるってええええ!」


 なんということだろう。

 研究室から現われたのは四散した肉体を寄せ集めて、再生を果たした大月教授。


 彼が先端から医療用メスを生やした蛸足で、コータの背中から胸部を串刺しにしたのだ。

 だが教授の集めた『補助脳』は既に失われ、その半身からは醜い蛸足の塊が露出していた。


「ぐぼお!!」

 苦悶の表情でうずくまるコータ。床には血だまりが広がっていく。

 コータから触手を引っこ抜く教授。メタルマンスーツの胸部装甲が砕けて床に散った。


「コーターーーー!」

 リュウジが叫ぶ。


「コータさん、そんな!」

 愕然とするエナ。

 コータに駆けよるリュウジと茉莉歌。


「私の計画、私の計画~~! 絶対に許さんぞ貴様ら! 全員まとめて引き裂いてやる!」

 憤怒の形相で四人に立ちはだかる教授。

 その顔面は、再生が追いつかないためか半分欠け落ちていた。


 エナは、血を流してうずくまっているコータを見た。


 傷は、深い、助からないよ。


 エナの中の混沌が、楽しげにそう告げた。


「ふぅぅぅぅうぅうううううううううう!!!」


 エナは、顔を覆った。


 彼女の中にかろうじて残っている理性の(タガ)が、今、溶けて無くなろうとしている。


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