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まりか、りじぇねれいと!  作者: めらめら
第5章 最後の戦い
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宴のあと

 陽の落ちた聖痕十文字大学。

 刻々闇を深めていくキャンパスの片隅に独り、血に濡れた少女が虚空を見つめて立ちつくしていた。

 少女の周囲は、見る者全てが己が正気を疑うに違いない、悪夢のような異境と化していた。

 彼女が切り刻み、すり潰し、燃やし尽くした異形達の残骸が、グズグズと血や粘液をこぼしながら、うず高く積み上がっているのだ。


 襲い来る怪獣達を、その異能の赴くままに誅戮し尽くしたエナ。

 浅黄のワンピースはどす黒く闇色に染まり、しなやかな手足には、蒼白の顔には、甲虫や大長虫の緑灰色の体液が滴っていた。


「ふぅぅうぅぅうぅうう」


 唇に垂れてきた漿液を紅い舌で舐めとりながら、彼女は甘く昏い歓喜の余韻に浸っていた。

 キャンパスのそこかしこに、ザリガニ、宇宙ナメクジ、不定形生物たちの残り滓が撒き散らされて、まるで腐った果実の様なふしだらな匂いを放っている。


「…………ぁあ!!」


 少女が息を飲む音。

 エナの瞳に光が戻った、今、我に返ったのだ。


 エナは周りを見渡すと、地面に膝をつき、両手で顔を覆った。


 またやってしまった!


 エナは恐怖した。

 いったいいつの頃からだろう。

 死の淵から還る度か、願いを全うする度か?

 彼女の魂に巣食ったカオスは、殺戮への衝動は日毎に膨れ上がり、今や彼女の制御の域を超えつつあった。


 だが……!!


 エナは顔を上げた。

 今ここで悔んでいる時間はない。


 三人を追いかけなければ。エナはコータのことを思った。

 あの時、捨て鉢になって父を討とうとしたエナを、身を呈して止めてくれたコータ。

 エナを救おうと、自身の願い事を躊躇なく使ってくれたコータ。


「コータさん!」

 エナは研究棟を見上げた。


 ぴぴぴ!


 彼女の赤い髪留めが、最上階から放たれる強烈な毒電波を受信した。


 ……コータさん達が危ない。助けないと!!

 エナは我が身に鞭打ち、震える足で立ちあがった


「コータさんコータさんコータさんコータさんコータさん……」


 秩序と混沌の狭間を漂うエナにとって、今やコータは正気の岸に辿り着くための唯一のアイコンとなっていた。


 彼女は戦いで疲弊しきった体を引きずって、研究棟に向かった。


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