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まりか、りじぇねれいと!  作者: めらめら
第4章 妖都疾走
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モンスターカーニバル

「コータ! 大丈夫か!?」

「もう限界だ! 弾切れだよ!」

「行き止まりだよ! リュウジおじさん!」


 旧甲州街道を経て新宿に到着した一同を見舞ったのは、想像を絶する苦難とカオスだった。


 銀河の向こうからやってきた巨大昆虫、アラクニドウォリアーが何百匹もの軍団を成して『てば九郎』を追いかけてきたのだ。

 中には、人間に擬態した巨大ゴキブリや、蟻の様な大顎の完全生物、シリコンを主食にする宇宙大群獣も混じっていた。


 ピュン! ピュン!


 『てば九郎』の後部から両手のパルスレイで昆虫たちを狙い撃つコータ。だが、数が多すぎる。


「このっ!このっ!」

 茉莉歌は『てば九郎』をよじ登ってくる巨大フナムシを、銃剣でこづきまわしていた。

 リュウジは必死の形相で運転席でアクセルを踏んでいる。


 ドーン!


 突如、頭上から轟音。

 ビルを掠めて街灯をへし折り、巨大な『高崎観音』の首が、明治通りを疾走する彼らの前に落下してきたのだ。


「うわー!」

 ハンドルを取られるリュウジ。

 路上には濛々たる黒煙が立ち込めた。


 どしーん、轟く地響き。


 煙の向こうから、巨大な何かが立ち現われた。


「今度はなんなんだよ……」

 危機また危機に、半ば現実感の麻痺したリュウジが力なく呟いた。

 崩れたビルの谷間から姿を現したのは、節くれだった長い手足に巨大な鉤爪を生やした灰褐色の巨大魚人。右手には鋭い槍を携えている。

 東京湾から上陸してきた深海怪獣、『クローバー』だった。


 ガリガリ!


 邪悪な一族の末裔は巨大な鉤爪を振り回し、周囲のビルを引っ掻いた。

 落下する瓦礫と硝子の破片が『てば九郎』を襲う。


「まずい!モード、『ローダー』!」


 ギガゴゴギ。


 咄嗟にパワーローダーに変形して瓦礫をかわす『てば九郎』。

 小脇には茉莉歌が抱えられている。

 ひゅん。コータは『てば九郎』からテイクオフして宙に舞う。


「うおーーーん」

 不気味な咆哮を上げながら、怒り狂ってリュウジ達を叩き潰そうとするクローバー。

 後方には昆虫軍団が迫る。絶体絶命、その時だ。


 バッチーン!


 巨大な尻尾の一撃が、深海怪獣を叩きのめした。


「ギャオーーーン!」

 漆黒の怪獣王、ゴシ"ラがやってきたのだ。


「うおーーーん」

 なんとか体勢を立て直すクローバー。


 蜘蛛の様な長い手でゴシ"ラに掴みかかり、頭部の口吻から不気味に光る砲門の様なものを露出させた。

 クローバーの口から、眩い光が漏れ出た。


 ピカッ!


 ゴシ"ラの頭部に突き刺さる粒子砲の一閃。

 だが見ろ。怪獣王は無傷だ。役者が違うのだ。

 怪獣王の背ビレが、青白く光った。


 ゴオオオ!


 おお、ゴシ"ラ必殺の放射火炎が深海怪獣の半身を消し飛ばした。


 どどーん!


 深海怪獣は一敗地に塗れ、その体は見る間にドロドロに崩れ去り、汚らしい泥土と化した。


「ギャオーーーン!」

 勝ち誇ったゴシ"ラが、今度はリュウジ達を睨みつけた。


 ゴシ"ラの背びれが青白く光る。再び放射火炎を吐くつもりなのだ。


「やはり今か!」

 リュウジは覚悟した。この場まで温存していた『願い事』だが、命には替えられない。

 三人で安全な場所まで移動するのだ。


「願い事を言う、俺達を……」


 その時だ。

 

 とんっ!


 パワーローダーに変形した『てば九郎』の肩部デッキに突然、緑色の光と共に空中から何者かが降り立った。

 光の中にいたのは浅黄のワンピースに紅い髪留めの少女。


 エナだった。


「エナ! どうしてここに!?」

「待って、ここは私が何とかする!」

 エナはゴシ"ラの方を向いた。


 ゴオオオ!


 彼らに放射火炎を浴びせるゴシ"ラ。

 だが見ろ。エナのかざした手の先に現れた光の衝角。

 衝角が、熱線を切り裂いた。拡散した熱線は、彼らの後方に迫る昆虫軍団に襲いかかった。


「キシャ――!」

 燃える昆虫軍団。ゴキブリやレギオン達が、焼き海老のように真っ赤に変色して果てていく。


「ギャ、ギャオ?」

 戸惑ったゴシ"ラが、三度熱線を吐かんとしていた。


「ミラー!」

 エナが叫んだ。見ろ、彼女の正面に出現したのは、六角格子の合成ダイヤモンドで造られた巨大な鏡。


 ゴオオオ!


 『ミラー』はゴシ"ラの放った放射火炎を反射した。一万倍に威力を増した熱線がゴシ"ラを直撃する。


「ギャオーーーーン!」

 さしもの怪獣王も耐えきれず、彼らに背を向け、その姿を消した。


「エナ! やっぱり君だったのか!ありがとう!」

 コータがうれしそうに言う。


 新宿への道中、三人は何度も危機に陥った。

 だがその度に、姿を見せない誰かが、三人を助け、導いてくれていたのだ。


「話している時間はないわ。急いで!」

 エナが言った。昆虫の生き残りが、再び彼らに迫ってきたのだ。


「わかった! 目指すは聖痕十文字大学だ!」

 リュウジはコータと茉莉歌を『てば九郎』に乗せ、アクセルを踏んだ。

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