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まりか、りじぇねれいと!  作者: めらめら
第2章 学園戦記
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来たのは誰だ

「リュウジ、怪我はないか?」

「ああ、だがコータ!なんだってあんな事を!」

 校舎の屋上で、どうにか立ちあがった二人。


「悪かったよ、お前が食べられそうになってるのを見て、いてもたってもいられなくて……」

 今度ばかりはコータも、自分の行動の招いた状況の深刻さに、打ち震えていた。

「時城!きさまか!」

 屋上に理事長が駆け上がってきた。

 その肩は、怒りでわなないている。


 パンッ


 コータに詰め寄った理事長が、彼を平手で張り倒した。

「この穀潰しの唐変朴が!考えなしの頓珍漢が!自分のしたことが分かっているのか!」

 普段の冷静さはどこに消えたか、罵詈雑言でコータを詰る理事長。


「貴様のような者がいるから、学園が!妻が!あんなことになったんだ!」

「す……すみません!すみません!」

 涙を流して土下座するコータ。


「ゆるさん!くまがや!」

 憤怒の理事長がコータに掌底を向けた。

 彼を煉獄に消さんというのだ。


「まって!それだけは!だめです!」

 理事長に体当たりして、やめさせようとするリュウジ。

 二人は、縺れ合って屋上に転がった。


「ぐうう!」

 ようやく我に返った理事長。だがその顔は失意と憤懣でやつれ果てていた。


「コータ!願い事はするなって、あれだけ言っただろう!俺との約束なんかどうでもよかったんだな!」

 理事長に代わってリュウジがコータを問いただす。

 彼もコータに裏切られた気がして悲しかったのだ。


「ち、違うよ。願い事はしてないよ!本当だ!」

「嘘つけ!じゃあさっきの『アレ』はいったい何だったんだよ!」

 リュウジが地上に散らかったメタルスーツを指差し怒鳴る。


「……も、貰ったんだ。」

「貰った? ……あんなものを、わざわざ他人によこすような奴が、どこにいるんだよ!」

 コータのしょうもない嘘に、リョウジも本気で怒りだした、その時。


「……嘘じゃない、本当よ。私が彼に『アレ』をあげたの。みんなから仲間外れだし、退屈そうにしていたから……」

 三人の背中から、鈴の音のような声が聞こえた。


 振り向いた彼らの前には、浅黄のワンピースに長い黒髪をなびかせて、一人の少女が立っていた。


 茉莉歌が先日渡り廊下で出会った、紅い髪留めの少女だ。


「おおお…… まさか! そんな、馬鹿な!」

 理事長の顔が、恐怖に歪んだ。


 彼女の名は慧那(エナ)。三年前に不慮の事故で死んだ理事長の娘。享年十七歳だった。


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