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まりか、りじぇねれいと!  作者: めらめら
第2章 学園戦記
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最悪の決着

 物部老人の狙いは正確だった。

 煙跡が濃霧を切り裂いて、トライポッドの口中に吸い込まれるように飛んで行く。


 どかーん!


 ロケット弾は宇宙戦車の体内に見事着弾、爆発した。


「ぐもーーーん!」

 さしものトライポッドも、体中から炎を上げながら、苦悶の咆哮を上げる。

 そして、三脚のバランスを失い倒れる先には、聖痕十文字学園の校舎があった。


 どがががが!


 生徒と避難者が身を潜めていた教室に、炎に包まれた宇宙戦車の胴体が突っ込んできたのだ。


「うぎゃー」

「逃げろー!」

 校内は阿鼻叫喚。教室から逃げ出し、我先にと校庭へ躍り出る人々。


「雹くん、離れちゃだめ!」

「お姉ちゃん!」

 茉莉歌と雹も、もみくしゃにされながら、どうにか脱出する。


「迂闊! 校舎に近寄りすぎとったか!」

 校庭の物部老人は愕然と肩を震わしている。


 ぶん!

激突の反動でコータを掴んだトライポッドの触手が大きく跳ね上がった。


「どわー!」

 空中高く跳ね上がるコータとリュウジ。一回転して力を失った触手がほどけ、二人はそのまま放りだされた。

 だが何たる幸運か。彼らが放りだされた先は、校舎の屋上だった。怪我も擦り傷程度だ。


「なんてことだー! 避難誘導を急げ! 消火もだ!」


 怒髪天を衝く憤怒の火の玉と化した理事長が、隊員たちに檄を飛ばす。

 トライポッドの激突で、校舎は半壊、建物の四分の一を失っている。

 死傷者がどれくらいになるか、まだ見当もつかない。

 彼は怒りに燃える目で校舎の屋上を見た。


 校庭に逃げだした、茉莉歌と雹。

「すまなかった、子供ら!早く安全なところに隠れてくれ……」

 憔悴しきった物部老人が茉莉歌達を誘導する。雹を見る彼の眼には、涙があった。


 そして、その時だ。


「ぐもーん!」

 三脚からもげ落ちたトライポッドの胴体が、地上に落下してきた。


 どしーん! ……ずるずる!


 なんということだ。物部老人の背中に隠れた茉莉歌と雹は、恐怖に息をのんだ。


 驚くべきことに、宇宙戦車はまだ生きていた。

 そして、地上に撒き餌のように散った人間を食べんとし、その触手を地面にのたくらせて、茉莉歌達に這い寄ってきたのだ。


「おのれ、迷って出たか!往生せいや!」

 茉莉歌達を庇いながら、何度も何度もライフル銃を放つ物部老人。

バリヤーの機能しないポッドは、瞬く間にハチの巣となってゆく。


 だが、トライポッドが力尽き、機能を停止しようとする、その直前。


  じゅっ


 断末魔のトライポッドの放った破壊光線が物部老人を直撃した。

 老人は一瞬で灰と化し、空中に散乱した。


 茉莉歌の顔が、白い灰にまみれた。


「ひっ……!」

 雹を抱き締め、声にならない悲鳴を上げる茉莉歌。

「うわーー!もういやだ!お母さんに会いたい!お母さん!!」

 雹が叫ぶ。


 そして、


 茉莉歌の腕の中で雹が忽然と消えた。


 恐怖に追いつめられた雹は、現実から目をそらして母親との再会を願った。

 そして、母親の『生存』する世界に『移動』したのだ。


「だめ雹くんそんな……いやぁぁあああああああああ!!」

 茉莉歌は自分の肩を抱いて、絶叫した。


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