とんだおじゃまむし
「リュウジおじさん、何であんな無茶を…?」
茉莉歌は雹と一緒に身を屈め、教室の窓から校庭の様子をうかがっていた。
「お姉ちゃん、おじさん大丈夫かな……」
茉莉歌にすがる雹。
他の生徒と避難者たちも全員、教室や体育館に身を潜めていた。
「ぶおっ!」
リュウジに気付いたトライポッドが、その動きを止める。
宇宙戦車のサーチライトがギラリと光った。
そして甲虫のように黒光りする胴体から、金属製の触手を露わにすると、するすると地上に立つリュウジに向けて伸ばしてきた。
「たのむぞ~両手はふさがないでくれ!」
ホールドアップしたリュウジの胴体を触手がぐるぐる巻きにして行く。
理事長から渡された手榴弾は一発。尻ポケットに引っかかっている。これなら手が届く。
「……先生よ、あの兄ちゃん一人で本当に大丈夫かね?」
RPGに弾頭を装填しながら、物部老人が理事長に言った。
「時間がなくて彼に頼むしかなかったのです、失敗した時は私が囮になります」
そう答える理事長。彼は飯島老人のロケット砲を見た。
「その時は、そいつで援護を頼みますよ。」
理事長も命がけだった。
「救助の準備が出来ました。これが精一杯ですが…」
パワーローダーに変形したてば九郎が救命マットを抱え上げている。
これで、リュウジをキャッチするつもりなのだ。
学園の『隊員』達は、息を潜めて校舎の死角から、出動の機会を窺っていた。
空中に浮いたリュウジは、緊張に生唾をのみこんだ。
冷たく撓うその触手で、ゆっくりとリュウジを巻き上げていくトライポッド。
パカッ!
リュウジを食べるため、宇宙戦車の下腹部が展開した。
ゆっくりとリュウジの眼前に迫った、まるで生物のそれのように蠕動する、トライポッドの不気味な口腔。
「よし!これならいけるぞ!」
自身の腕力と相手との距離を必死で計り、今が爆弾投擲の時と見定めたリュウジ。
彼は手榴弾の安全ピンに慎重に手をかけた。
だが、その時だ。
「リュウジ?何してるんだそんなところで?」
校庭に現れたのは、体育館裏で昼寝していたコータだ。
目を覚まして、今頃『状況』に気付いたのだ。
「コータ?ばか!危ないからこっちくんな!」
「いや……そんなこと言ったって……お前食われかけてんじゃん!まってろ!!」
コータは背中にしょっていたパンパンのリュックを地面におろすと、その中に両手を突っ込んで叫んだ。
「 ア ダ プ ト ! 」
ガチャガチャガチャッ!
なんということだ。リュウジは目を覆いたくなった。
リュックから現れた鉄塊が、ものすごいスピードで展開しながら、赤銅色の装甲板と化して、コータの体を包んでいく。
おお、今校庭に立っているのは、リュウジも漫画で見知ったヒーロー。
100kgの巨体をパッツンパッツンの金属スーツで覆った、『メタルマン』だった。
「まってろリュウジ!いま助けるぞ!!」
「やめろ~~!余計なことすんな~~!」




