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まりか、りじぇねれいと!  作者: めらめら
第2章 学園戦記
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理事長、もやもやする

「おかしい……こんな筈では……」

 執務室の書斎机に乱暴に腰掛けて、理事長が呟いた。彼は苛立っていた。

 確かに彼と、彼の募った自警団の「活躍」によって、怪物たちはその数を減じ、近隣の地域は平静を取り戻しつつあった。

 SNSを通じた呼びかけ(ネットも、これまた絶対にダウンしなかった)や、Podcastでの演説も功を奏し、各地で聖痕十文字学園のような自警団が活動を始めていた。

 彼の目論見は一見順調のように思えた。

 だが、新宿など都心部の混乱は一向に収まる様子がなく、逆に悪化の一途を辿っている。


 どういうことだ?理事長は再度考えを巡らせた。

 すでに経験者へのリサーチや、理事長らの実験によって、『願い事』によって生じる事象の特徴、法則はかなり正確に分かってきている。


 1.「一万円ほしい」「iPhone6がほしい」といった、具体的で即物的な願いは即座に実現する。

 2.逆に「宇宙の根源的な悪のエネルギーを潰したい」「地上に神の国を作りたい」といった、言ってる本人もよく意味がわからないような願い事は『ここでは』実現しない。

 3.「○○氏ね」「○○人根絶」といったデスノート系の願いも、相手の同意がない限り成立しない。

 4.「○○は俺の嫁」といった願いも3と同様。対象が二次元の場合は願った本人が二次元に飛ばされる。

 5.2~4のような願い事を無理に願うと、願った本人が消滅する。(理事長の仮説では別の世界に移動するのだ)

 6.物理法則は容易にねじ曲がる(でないと理事長の能力やゴシ"ラも成立しない)

 7.「○○を抹殺する殺人サイボーグが欲しい」とか「渋谷を襲う蝙蝠怪獣を出してほしい」といった、非現実的なガジェットを介した凶悪な願い事は実現する。


「要は、項番7が最大の問題なのだ! ここを我々理性ある大人が地道に潰していけば、正常な世界に戻るはずだ!」

 項番6もかなり問題な気がしたが、理事長は自分のことを棚に上げた。


 だがまてよ?理事長はふと、ある疑念に駆られた。


 理事長たちは、怪奇現象に対するカウンターパワーとして、『くまがや』や『てば九郎』を作り出した。それと同じことが新宿では、大きさやベクトルを変えて行われた、それだけのことだったのではないだろうか?

 折しもTVは、自衛隊が秋葉原に投入した『13式巨大機械龍』が暴走し始めたニュースを報じていた。


「ひょっとして、『荒らし』に反応するのも『荒らし』と同じだったのでは……いや、そもそも……」

 理事長は恐怖した。


「私は願い事で荒らされたこの世界を元に戻そうと躍起になっていた。だが、もともと『ここ』自体が『特撮・アニメ』枠で隔離された別世界なのではないか? 私は英雄気取りで別スレッドに隔離された、大馬鹿三太郎だったのか……いや、いや!」

 理事長は自分に言い聞かせた。


「気をしっかり持て大牙(だいが)、願い事を果たした『私』と、そうでない水無月君や如月君が同時に存在する……それこそがこの世界が『オリジナル』であることの証しだ、それに……」

 理事長は奮い立った。


「私は学園の生徒とご家族、そして近隣の人々の身の安全を守っている、世界がどうであろうと、この一点だけは曇りない真実だ!」


「大変です理事長!」

 鳳乱流(おおとりらんる)が、血相を変えて理事長室に駆け込んできた。


「第9地区で怪物が発生したとの報告です!今日の相手は大物です!」


「よし!」

  理事長は立ち上がって叫んだ。


「ギャラクシーフォース、スクランブルだ!!」


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