30.手作りのディスプレイ
『薬の魔物の解雇理由』は5巻に先駆けて、4巻が8月末に納品された。
『魔術師の杖』ではよろづ先生のイラストを前面に押し出したけれど、『薬の魔物の解雇理由』でそれはできない。
4巻には挿絵がいっさいなく、私は物語の場面をいくつか抜きだしては、イラストを描いていく。
これは、書籍を買った人へつけるオマケのようなもので、遊び心で描いたものだ。パッケージに貼った粗筋の裏に印刷してあり、本を取りだしてみて初めて、絵が見られるようになっている。
最初、この絵は公開するつもりがなく、桜瀬先生の本の周りを飾るイラストは、Xで募ろうと思っていた。
渋谷ヒカリエを訪れる人に、人気作であることをアピールするには、読者さんのFAで書店を飾るのが一番だと思ったのだ。
けれど店内は撮影自由で、撮影されたイラストが、どう使われるかまではわからない。いろいろと第三者の意見も聞き、自作のイラストで飾るのが、一番問題ないだろうということになった。
納品されたらすぐに店頭に出すつもりで、5巻のイラストは本が届く前から、なろうを読んでコツコツ描きためていた。
プロではないので恥ずかしいのだけど、見た人がクスッと笑ってくれたら、それでいいかなと思っている。
手を動かすのは楽しいから、小説を書くのも、イラストを描くのも、何なら靴磨きだって実は好きだ。
嬉しいことにXの告知を見て、こんとみさんという方が、ヒロインのネアちゃんの編みぐるみと一緒に来店された。再現度がすばらしい。
書店が本当にあわいの場になった。
8月に作った豆本が、記念撮影でしっかり役に立った。200番のサチヲ書店さんが製作した、ミニ渋谷〇〇書店の前で写真を撮る。
(撮影用の小物を用意するだけで、書店での時間が楽しいものになるって、ほんとだったんだ……)
9月は知り合いのなろう作家さんの新刊ラッシュで、月末にはまとめてお祝いした。どうせなら賑やかにやった方がいいし、キラキラと輝く単行本が何種類もあることで、お客さんの関心をひくことにも成功した。
それぞれ卓越したストーリーテラーばかりだ。もちろん活躍されている作家さんは他にもたくさんおられるけれど、やり取りをしたことがあって、共同書店に本を並べても怒られなさそうな方を選んだ。
『薬の魔物の解雇理由』と『没落伯爵令嬢は家族を養いたい』、コミックス版元は同じTOブックスなのだけれど、奥付を見るとデザインは違う事務所で、それだけでまったく本の雰囲気が変わる。
『アルマーク』はタイポグラフィーがすばらしくて、小説もコミックスも、タイトルがすっと目に飛びこんでくる。「読んでみたい」とおっしゃる男性が多かった。
ファンタジーはコミカライズと相性がいい。漫画家さんの個性が加わることで、物語の世界がそれぞれに広がっていく。
まずは本の前に足を止めさせることから。お客さんの興味をひくようなディスプレイを考えた。
売っているのは『魔術師の杖』と『薬の魔物の解雇理由』だけで、あとは作品紹介の展示のみだ。興味を持てばお客さんはAmazonをチェックするなり、自分で行動を起こされる。









