29.プロの選書家がやってきた
お盆休みの店番最終日、プロの選書家が書店にやってきた。
小樽にある〝蔵群〟という、ラグジュアリーホテルの図書室に置く本を探されているという。
シーズンごとに企画して、テーマを決めて本を揃えるのだと教えてもらった。
そんな職業があるとは初めて知った。ホテルの図書室に置く本は、旅や文化などを扱ったものが好まれるという。
滞在客の快適さのために、今では手に入らなくなった本も、必要となれば探すらしい。
「神保町の古書店街も回ったんですけど、探していた本がここに何冊もあります」
カウンターに腰を落ち着け、リストを取りだしてから、本を見つけては棚から抜きだしていく。選び出したのは、日本茶や日本文化に関する本が多かった。
やはり本が好きな方らしく、ひと通り選んだあと、今度は自分のためにも本を選び始め、台湾の漫画を買い求めていた。
私もその漫画には見覚えがあった。数日前に別の棚主さんが出品され、棚に並べた次の日には売れてしまった本だ。
また新しく別の棚主さんが出品されたもので、つまり人気か話題になっている本なのだろう。
(プロの選書家がうなる品揃えって……やっぱ凄いんだな)
人が書店にくるのは、そこが楽しい場所だからだ。
数ヵ月棚主をしてみて、頑張って宣伝をしなくても、人は自分で決めて本を買うのだと知った。
だからその時は本を買われなくても、訪れた人にとってこの書店が楽しい場所、おもしろい所だと記憶に残ればいいのだ。
(テーマを決めて本を見せていく……というのも面白いかも)
ただ本を売るだけじゃない。
この書店で何ができるのか、いろいろとやってみよう。
ちょうど桜瀬彩香先生の『薬の魔物の解雇理由』を、棚に置くと決めたばかりだ。ウィーム出版社から丁寧なメールを頂き、9月15日には5巻が発売されると知った。
(本をどういう風に見せていく?)
ディスプレイの仕方はいろいろある。個人でできることには限りがあるけれど、チャレンジしてみようと思った。









