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【5th anniversary!】アデリーン・ジ・アブソリュートゼロ  作者: SAI-X
【第11話】怪獣ブルドッグが大暴れ!
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FILE077:このクソ犬と呼ばないで



『お前たちか――。裏切り者が今更、命乞いでもするつもりかね?』


「その逆だよ……」


 モニターの向こうで冷笑するジョーンズに対して、蜜月は不敵に笑ってブルドッグガイストを追い払う。いきり立って蜜月に殴りかかろうとした彼をアデリーンが凍らせて制止した。彼女も蜜月の隣に並び立ち、ジョーンズに哀れむような冷たい眼を向ける。


「なぁ~、ジョーンズさんよ。不思議だって思わないか? なぜごく普通の一家をはじめとする人々が、あんたたちのイカレた悪魔の所業を暴露するまでに至ったか」


『いいのかな? それを話してくれたところで、我々が有利になるだけだぞ』


 モニター越しにジョーンズは挑発したが、2人ともそれには乗らない。とくにアデリーンはクスクス笑っている。


「そうかしら?」


『……なんだと? この人間もどきが、超越者にでもなったつもりか……。どうせテイラーの小娘がバックについているのはわかっているんだぞ』


「侮らないでほしいわね、スティーヴン。結果から先に言わせてもらうと、あなたたちは――とるに足らないちっぽけな存在だと見下していた、市民の皆様に足元をすくわれた。たったそれだけのことよ」


 ジョーンズが表面上は落ち着いていながらも、眉を吊り上げる。自身がバケモノ扱いして蔑んでいたアデリーンにここまで言われたことが、それほどまでに気に食わなかったということだ。


「いい機会だと思ってさあ、ヘリックスのせいで被害に遭った皆さんが行動を開始したのに合わせて、おたくらに関するあれこれをワタシからもある程度世間に暴露させてもらったわけ。ワタシはおたくらに関する情報はたくさん持ってたからねぇ~~~~」


『裏社会のゴミに人間もどきの醜いバケモノめが、遊ばせておけばいい気になりおって! かつて仕えた我々への義理だの筋だのはどうしたッ!?』


 蜜月から煽りに煽られて、ついにジョーンズの怒りはピークに達し、彼はデスクを叩いて怒号を上げた。彼のすぐそばにいたキュイジーネは、あまり好ましくないという表情を浮かべて憂う。


「ようやく本性を表したわね、この紳士ぶった大悪党。もっと良いことを教えてあげる……。ミヅキ!」


「そこのクソ犬が口封じをしくじるように仕向けたのはワタシたちだし、あんたが目の敵にしてるテイラーの社長さんに協力を依頼したのもワタシたちだ。――それにあんたたちのような、誠実さに欠けて仁義も持ってないようなヤツらに、筋を通したって無駄だからね」


「けど後味は悪くしたくなかったから、あの一家のことは何が何でも守り通したかったのよね」


『き、貴様ら……おのれ小ざかしいマネを!』


「悪いな、あんたたちのズルい計算はすべて失敗だ。これ以上、江村さんファミリーには手は出させないし、そのためにも……。あんたたちがトカゲのしっぽみたいに切った犬養を倒す」


 アデリーンと蜜月からまくし立てられ、ジョーンズが画面越しに「ぐぬぬ……」と、唇を噛みしめた時、蜜月がマシンガンをモニターとコンパネに対して豪快に撃って破壊したことで通信は切断された。更にその勢いで残った構成員とシリコニアンにも容赦なく撃つが、アデリーンは咎めない。――()()()()()()()()の連中であったからだ。


「大量破壊と大量虐殺を犯し、あまつさえ自分の身勝手でたくさんの人々を不幸にしてきたあなたに同情の余地はない!」


「ブルスコオオオ」


 パンチで氷を叩き割ってブルドッグガイストをダウンさせると同時に、司令室の機材と設備が次々に爆発炎上する中でアデリーンはポーズをとり、蜜月もそれに合わせてかっこつけたポージングを決めた。2人そろって表情も険しく、目つきは凛々しく――。


「【氷晶】!」


「【新生減殺】!」


 ≪ホーネット! ニューボーン!≫


 アデリーンは天井へ向けて右の手のひらを伸ばし、蜜月は右腕のブレッシングヴァイザーをタッチして電子音声を鳴らすと――それぞれのかけ声とともに、変身。青と白のツートンカラーで雪の結晶と王冠のモチーフを持ったヒーローと、メタリックゴールドとメタリックブラックのボディを持ったスズメバチの

ような姿のヒーローが並んだ。


「零度の戦姫、アブソリュートゼロ!」


「月夜に舞う黄金の影、ゴールドハネムーン……」


 ダブル・ヒーローが名乗りを上げて、彼女らの気迫に圧されて悪しきブルドッグガイストは思わず後ずさる。地団駄を踏み鳴らしてから、ブルドッグはトゲ付き首輪から周囲にミサイルを乱れ撃った。


「ええ――――いッ!! この基地ごと貴様らを爆破してくれるわァ!!」


「そうはさせん! ドラァ!! うおおおおおおおお!!」


「イィィィィヤ――ッ!!」


「ぶ、ブルスコオオオオオオ!?」


 だが屈しなかった彼女たちは、巧みなコンビネーションを魅せてブルドッグガイストへと同時攻撃を繰り出し、そのまま、秘密基地の外へと脱出。外へ躍り出たその時、背後で大爆発が起きて爆炎と煙が派手に、しかしむなしく上がった。


「あとはお前を倒すだけだね。ブルドッグガイストッ!」


「ま、待て、ゴールドハネムーン! オレが悪かった! よかったらオレのもとで雇ってやろう。報酬はたんまりくれてやるし、別荘だってつけてやる。根無し草のままそいつとヒーロー活動なんぞするよりは健全だぞぉ。なっなっ」


 ダウンさせられたブルドッグガイストは命乞いをし始めたが、油断を誘う目的なのは見え見えで、アデリーンも蜜月も呆れて大きく、ため息を吐く。


「だが断る」


 蜜月はとぼけた口調でそう切り捨てて、ブルドッグガイストを蹴っ飛ばし、更にアデリーンを連れて距離を詰めた。そのまま徒手空拳で追い込もうとしたその時である。なんとブルドッグガイストが力を入れて首にはめた首輪のトゲを伸ばしたのだ――。もっとも、2人とも危機を察知して瞬時に避けたので、ダメージは無かった。


「愚かな! こんなにいい条件は無いと言うのに! それならお前はもう……死ねェ~~~~ッ!!」


 犬養/ブルドッグガイストが雄叫びを上げたその時、その場にいた誰もが気づかぬうちに、ブルドッグガイストが首を防御するようにつけた首輪の後ろで、何かの合図のようにランプが点滅し出していた。

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