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【5th anniversary!】アデリーン・ジ・アブソリュートゼロ  作者: SAI-X
【第11話】怪獣ブルドッグが大暴れ!
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FILE071:こんな形で会いたくなかった


 キャンプ場だった焼け野原に煙が立ち込んで、2人のヒーローが息絶えたと思い込んだブルドッグガイストが下品な高笑いを上げる。


「なにいいいいい――――ッ!?」


「あっぶねーな、おい。クソヤロウが……ドォォォラアアア!!」


 しかし――今更、その程度で死ぬような2人ではなく、煙を突っ切って元気な姿を見せ、ブルドッグを驚愕させた。かと思えば、その勢いで殴り飛ばして地べたに這わせ、蜜月のほうは悪態をついてから腰を深く落として力を溜め、アデリーンは青い外観の光線銃・ブリザラスターを構えて、このまま一気にトドメを刺す体制に突入していた。


「こ、このアマッ……!」


「ずいぶん品のないブルドッグね。しつけもなってないみたい」


「人間もどきのバケモンがぁ! だったら貴様からなぶり殺しにしてやろうかあ!?」


 直接首輪を振り回して蜜月には避けられたが、今度はアデリーンに襲いかかるブルドッグガイスト。彼女は相手の攻撃をいともたやすく躱して、捌いて、至近距離でアイスビームを撃って冷やし、下腹部にキックも命中させた。直後に蜜月も連続キックとパンチの応酬を見舞ったが、アデリーンをバケモノ扱いされたことに憤っていたかどうかは、彼女のみが知ることだ。


「私は死なないわ」


「何をォ」


 ブルドッグガイストからジャブを1発もらったが、アデリーンは平然としていて――素早くハイキックと手刀を繰り出し、蜜月とともに敵の顔面へダブルパンチを浴びせる。装甲に守られていないので効果覿面(てきめん)だ。実際にブルドッグは大きくよろめいた。


「凍れ!」


 吠えるブルドッグガイストが目や両肩の頭蓋骨から放ったビームをバク転し、更にサイドステップで回避したアデリーンは、空中でターンしながらブリザラスターを撃つ。念には念を入れて数発アイスビームを撃ったその時、ブルドッグガイストは情けないうめき声を上げるとともに凍り付いた。


「スティンガービートアップ! ドラァ!!」


 勝機を見出した蜜月は、右腕にはめた『ブレッシングヴァイザー』をかざして、左手で触って起動。羅針盤のように伸びた針の先にパワーが溜まって行き、彼女は全身にそのパワーをみなぎらせてブルドッグガイストへとパンチを繰り出す。ただひたすらに、何度も何度も計7回、そして――。


「ビートエンド!」


 最後の8発目でフィニッシュを飾った。凍ったまま粉砕されて、またしても大きくぶっ飛ばされたブルドッグガイストは派手に大爆発を起こす。大柄で髪はボサボサ、見るからに悪人面のグレースーツ姿の男がボロボロになって横たわり、ブルドッグの紋章が入ったどぎつい青色のスフィアが転がって砕け散った。


「ぐへェ、お、おのれェ~~……」


 変身を解除したアデリーンと蜜月が、その人相の悪い壮年男性に近寄り、スフィアの破片もあらかじめ回収する。ちなみに2人の服装だが、アデリーンは青いパーカーと黒いジーンズにブーツ、蜜月はというと袖をまくった紺青色のワイシャツにダークグレーのブーツ、といった感じであった。


「ほぉ~。ふへへへへへへへ」


「へぇ……。うふふふ」


 悪人面の男性に近付いてまじまじと覗き込んだかと思えば、2人して薄ら笑いする。確証を得た風な笑みであった。蜜月のほうからは、彼の神経を逆なでするニュアンスと、ほんの少しの狂気が感じられた。


「やっぱり、SNSにテレビに雑誌に新聞、何から何まで、あらゆるメディアでの炎上の常連、活動家の犬養権二郎(いぬかい ごんじろう)さんだったか。確か、エイドロン社のアンバサダーもやってたよなあ? エェッ?」


「道理でミヅキや私のことを把握してたわけだわね。今まで上手く隠し通せていたようだけれど、ヘリックスと思い切り関わりを持っていたことが白日の下にさらされたからには、あなたはもう逃げられないわよ。観念しなさい」


 これでもかと煽られて、名を呼ばれた犬養権二郎が大慌てで逃げ出そうとする。アデリーンと蜜月がいつも敵の罪状を書いているカードまで持ち出したその時、突然、大蛇の形をしたエネルギーが横切り、2人の行く手を阻んだ。同時に、ヘビのような姿をした女性の怪人が姿を現す。ゴーグル状の仮面を被って両目を隠し、長く伸びた髪はヘビと化していて、全体的にギリシャ神話のメデューサあるいはゴーゴン姉妹を彷彿させる容姿をしており、異形ではあったが全体的に美しい。それから、そのバストは豊満だった。


「悪いけどそうはいかないわ。クラリティアナに蜜月」


「あなたはキュイジーネ!」


「そんな悪人何故かばうんだ。そこどいてよ」


「できない相談ね」


 『スネークガイスト』へと変身した状態でこの場に現れた彼女の隣で、権二郎は白目をむいて気絶していた。昔から彼女を知っているアデリーンは身構え、かつて彼女と仲良くやっていた蜜月は瞳孔を閉じて心を揺さぶられる。


「あなたとも、蜜月とも、こんな形で再会したくはなかったのだけどね。それじゃあ、ごきげんよう」


「待てッ」


「はっ!」


 蜜月はアデリーンと共にキュイジーネを止めようとするも、彼女は火花を起こして2人を足止めすると、空間を歪めてテレポートする。惜しくも、取り逃してしまった。


「ダメだった……。もう少し早く駆け付けていれば、()()()()()だってこんなことには」


 ブルドッグガイスト/犬養権二郎が暴れて破壊したために犠牲になった人々の遺体を見て、蜜月はうつむく。彼女に寄り添い、アデリーンは優しく彼女の肩を「トンッ」と叩いて、微笑んだ。


「けど、あの親子だけでも守ることができたのは大きいわ。殺された人たちのためにも、彼らを守りましょう」


「アデレード……」


 自分にも責任があると自戒していたアデリーンは、蜜月を責めはしなかったし、逆に少しでも元気づけたいと思っていた。そのうち、安全な場所まで避難していた芽依とその両親が戻って来たので、2人とも彼らに事情を説明することを決めた。

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