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【5th anniversary!】アデリーン・ジ・アブソリュートゼロ  作者: SAI-X
【第11話】怪獣ブルドッグが大暴れ!
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FILE070:猛犬注意!


 ある晴れた日の東京郊外にあるキャンプ場でのこと。家族で楽しむ者、友人と楽しむ者、1人でも楽しむ者、たくさんの人々が集まり、歓声を上げていた。辺り一面には緑が広がり、近くには川もあるので、目の保養にもなるし、定番の釣りも楽しむことが可能であった。


「おぉ、芽依(めい)、上手に焼けたな~! えらいえらい!」


「えへへ、そんなことないよー。いただきます! ……おいしー」


 この家族はテントを張って、その近くでバーベキューを楽しんでいる最中であった。芽依と呼ばれた幼い少女は、父親とともに串に刺した肉や野菜を焼くのを張りきっており、それが上手く行って大喜びしていたところだ。

 芽依はくりっとした丸い目に加え、ツインテールに結んだ髪を花の形のバレッタでかわいらしくまとめ、花柄のワンピースを着ている。また、サンダルを履いていたため、砂利の多い川辺には近寄らないように両親から言いつけられ、それをしっかり守っていた。まだ年端も行かないというのに、よくできた子どもである。

 一所懸命にかじりつく健気な姿も両親には愛おしく思えたし、芽依自身も楽しくて仕方なかった。その後も分け隔てなく他の家族とも交流を持ち、子ども同士で遊ぶなど、平和そのものだったのだ。()()()()()――。


「バウバウ! ブルスコ! ブルスコォォォォ!!」


 あまりにも突然のことだった。青色のブルドッグのような怪人が手下の戦闘員を連れて現れ、その怪人が持つ首輪についたトゲがミサイルのごとく飛び交うと、辺り一面を爆撃し始めたのだ。爆風で草木やテントが吹き飛ばされ、泥や土煙がキャンプ場内におびただしく飛び散り、立ち込める。更にブルドッグも戦闘員ともども、直接人々に暴行を加えてそのまま殺害するなど、このキャンプ場を血に染めん勢いで暴虐の限りを尽くす。


「め、芽依!」


「パパーッ!?」


 その魔の手は、芽依の父親にも及んだ。死にはしなかったが、ブルドッグの怪人が怪力だったこともありひどいケガを負った。乱雑に辺りに転がっているテントだったものやコンロ、果ては死体をどかして、ブルドッグ怪人は雄叫びを上げた。


「グワハハハハハハハハハッ! 家族の団らんを邪魔してしまったな、オレ様はヘリックスが遣わしたブルドッグガイストだ! 突然で悪いがお前たちには死んでもらう。1人残らずだ」


 品性の無い笑い声を上げている、この怪人の顔はブルドッグを更にコワモテにしたもので、黒ずんでいて目は赤く黒目は黄色となっており、首から下はほとんど厚手の青い装甲で覆われて、両肩にはブルドッグの頭蓋骨を彷彿させるおぞましい肩アーマーがついていた。そんな機械化されたボディの接合部は赤色で、それらも合わせてまさしく悪といった感じの、全体的に暗く毒々しい色合いである。既に犠牲者が何人か出ていたこともあって、「成す術もなく殺されるしかないのか……」、と、キャンプに来ていた人々はブルドッグガイストに対してひどくおびえていた。


「な、なんでそんなこと」


「意味なんぞないわい! オレがスカッとするからやっとるだけだボゲェェェェェ!」


 食い気味に突っかかり、芽依の父親を蹴っ飛ばして追い打ちをかけると、ブルドッグガイストは首輪型の武装だけでなく、いかにも犬が好きそうな骨の形をした何かを持ち出す。ビスが打ち込まれランプもついている――爆弾だ。


「この無駄に広いキャンプ場は、デモンストレーションをやるにはちょうどよいわ! 死ねい!!」


 逃げ惑う人々などお構いなしに骨爆弾を投げて大爆発を巻き起こすだけでなく、ブルドッグガイストは更にトゲ付き首輪からミサイルを撃ちまくり、腕に内蔵したマシンガンも乱射! 次から次へと爆発を起こしてキャンプ場を破壊した果てに、人々を虐殺して消し炭にした。人っ子1人いなくなった、かに見えたが――?


「ブルスコッ! あれだけ爆撃してやったのにまだ生きていたのか、運のいい一家だ。仲良く死ねえ!!」


 芽依とその家族だけが運よく生き延びていた。しかし、ブルドッグガイストが生殺与奪の権利を握っている状況に変わりはなく、死がすくそこまで迫ってきている。知り合えたばかりの人々を失っただけでなく、自分たちも後を追うこととなるのか、と、彼らがあきらめかけた時である。


「グエッ!? だ、誰だァ!」


「はっはっはっはっはっはっはっ……!!」


 ブルドッグガイストの左肩に唐突に蒼く冷たいビームが撃ち込まれ、氷の粒とともに火花が飛ぶ! そして笑い声が2人分――。聴こえてきたのはそれだけではない、フラメンコギターの音も一緒だった。


「綺麗な音色……!」


 そのギターから奏でられる美しき音楽は、心正しき者には安らぎをもたらし、心悪しき者には地獄の苦しみを与える。実際、ブルドッグは頭が割れそうなほどの苦痛から頭を抱え、悶えていた。


「ブルドッグ、これ以上お前の好きにはさせないわ。私は零華の戦姫――」


「月夜に舞う黄金の影――」


 演奏していたのは、ティアラなどの冠や雪の結晶のモチーフを持ち、青と白に輝く強化スーツを着た女性だ。その隣にいた、スズメバチを彷彿させるモチーフのメタリックゴールドとメタリックブラックの強化スーツを装着した女性も、少しやさぐれた動作で前に出る。彼女らの背後には乗って来たと思われるコバルトブルーのバイクと、黄色と黒のバイクの存在があった。


「アブソリュートゼロ!」


「ゴールドハネムーン……」


 2人そろって名乗りを上げるとブルドッグガイストを後ずさりさせ、芽依たちには希望をもたらす。彼女たちのその姿はまさにダブル・ヒーローだ。荒れ地となったキャンプ場を見渡した2人は首を縦に振り、一度は目も覆ってしまった。


「間に合わなかったか……」


「あなた方だけでも、早く逃げてください」


 悔しそうに拳を握りしめて蜜月がつぶやき、アデリーンは感情を押し殺して芽依と両親を逃がす。その怒りの矛先は当然、ブルドッグガイストと手下たちへと向かっており、両者は全身に闘志をたぎらせると、アクロバティックな動きでまずは手下の戦闘員を打撃と銃撃で殲滅し、それからブルドッグガイストへの攻撃を開始する。


「クソォ! 人間もどきと裏切り者の殺し屋くずれが2人そろってオレ様の邪魔をしやがって!」


「ふぇぇぇへへへへへ! 悪いな、ワタシらの趣味なんだよぉ~」


「お前のようなヤツにかける慈悲はないわ。同情の余地なし!」


 2人のパンチが、キックが、ブルドッグガイストの顔や胴体に直撃し、敵は大きくのけぞってよろめいた。低く唸ってブルドッグガイストは、その手に持ったチェーン付きの首輪を鎖鎌や、よくあるトゲ鉄球の要領で振り回す。


「ほざくなァ! ブルスコオオオオオオオオォオオオオオ!!」


 ただ激しく振り回すだけでなく、2人を拘束することも試みたが、ことごとく避けられて、更に2人からアイスビームと毒素のビームを浴びせられ牽制される。更にアブソリュートゼロ/アデリーン・クラリティアナは、追加でアイスビームを照射し続けて、ブルドッグガイストを凍らせると身動きを封じたのだ。


「てぇーい!」


「ドラァ!」


「バウババウッ」


 その隙を狙い、アデリーンとゴールドハネムーン/蜜月が飛びかかって浴びせ蹴りや右腕を光らせてからのストレートを叩き込む。どちらも重たく強力であり、氷の破片や火花を散らすとともにブルドッグガイストはバウンドしながら吹っ飛んで、木に激突。倒木するほどのパワーで叩きつけられた。


「ヒーロー気取りのビッチどもめ……! この『ボーンクラッシュグレネード』はどうだあ!!」


「うあっ!」


 一方的に畳みかけられて、怒りのボルテージが上がったブルドッグガイストは地団駄を踏んでから骨型の爆弾を投げる。瞬時に危険だと判断した2人は後ろに飛んでかわしたが、その時、爆弾が噴煙を巻き上げ大爆発を起こした。

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