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【5th anniversary!】アデリーン・ジ・アブソリュートゼロ  作者: SAI-X
【第5話】魔鳥コンドルの断末魔
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FILE030:突然いなくなった彼は無事なのか


 赤楚家へ戻る道中、コンビニでカレーまんとコーヒーを買い食いして精神を落ち着かせた――というより気を紛らわせたアデリーンは、あらかじめ交換しておいたアドレスから優里香へメッセージを送る。それから改めて青の専用バイク・ブリザーディアに乗った。


「ユリカさん!」


 大至急で赤楚家へ戻ったアデリーンは優里香を尋ねるが、しかし――その表情はどこか曇っていたし、元気も見られない。


「アデリーンさん!」


「ショーゴくんは見つかりましたか?」


「見つけられたことには見つけられたのですが、その……」


 祥吾の居所が分かったと聞いて、アデリーンは安堵しかけたが、彼の母である優里香のほうはあまり浮かない顔のままだ。喜ぶには、()()()()()()ようだ――。


「病院に搬送されてたみたいなんです……!」


 涙を流すのを堪えながら優里香は語る。アデリーンはその言葉を聞いて、ショックで放心状態になり――持っていたタオルを床に落とした。



 ◆◆



 突針学院大学病院。その病室の中の1つに祥吾は運ばれていた。優里香の車と自身のバイクを並走させる形で駆け付けたアデリーンは優里香とともに祥吾の病室へ向かう。


「そんな……!」


「祥吾ぉ……! どうして、誰が……こんなこと……」


 その病室で2人は信じられないものを見た。祥吾は大ケガして――いや、大ケガさせられていたのだ。何者かから執拗な暴行を受け、全身から流血し包帯を巻くほど無残な姿となっていたのだ。担当医の女性もそこに同席していた。祥吾のベッドに寄り添うように、優里香は泣き崩れる。


「一命は取り留めましたが、退院まではしばらくかかると思います……」


 艶のある黒髪で瞳は紫色、睫毛もパッチリしていてスタイルも良い白衣の女性にして祥吾の担当医・各務彩姫(かがみ さき)が冷静ながらも俯いた様子で説明を行なう。手は尽くしたが、それでもこの惨状だったことを物語っていた。


「けど、こうして彼が助かっただけでもよかった……」


 安堵の息をしたゆえ、こんな時だからこそ笑おうとしたアデリーンだが、そうも行かず――空気を読むと悲しむのもぐっと我慢して拳を握りしめる。


「も、もう……みんな……大げさだな……」


「祥吾っ」


 一同の声が聞こえていたのか、祥吾が目を覚まし、ぎこちないながらも上体を起こす。皆が驚く中、女医の沙樹だけは落ち着いて呼びかけるなどして対応する。


「うっ……」


「無理をしてはいけません。どうか安静に」


「そうよ、今は各務先生の言う通りに……」


 傷がうずき出した祥吾を、彩姫(さき)と優里香がなだめて落ち着かせる。


(私が輸血してもよかったのなら……。いや、そういうわけにはいかない)


 自身が今、()()()()()()()()()()をその場で思いとどまった彼女は、息をのんで祥吾へそっと近寄った。


「ショーゴくん、大丈夫よ。またユリカさんと一緒に来るから、今はカガミ先生たちの言うことを聞いて」


 各務彩姫が見守り、優里香が手を握る中、アデリーンはそう言葉をかける。最後くらいはと思って微笑んで、生死の境で必死に戦っている彼を安心させた。


「だ、大丈夫。彩姫先生はスーパードクターだから……」


 その彼も、こんな時だからこそ場を和ませようと少しふざけてみせる。「本当ですか!?」「世界で一番のドクターだったりとかしませんか!?」と、アデリーンも優里香も瞳を輝かせながら彩姫へと視線を向けた。


「恐れ多いですが、何としても彼が退院できるようベストを尽くします」


 少し戸惑い謙遜する彩姫だが、そこは自信を持ってハッキリと答えた。若き美人スーパードクターの称号は伊達ではない!

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