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【5th anniversary!】アデリーン・ジ・アブソリュートゼロ  作者: SAI-X
【第30話】呪い・ターマイト死の挑戦
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FILE238:親子虎



 静岡県浜松市。その中の一角にそびえ立つタワービルの中で商談が行われていた。威厳のある壮年の男とその妻と見られる美魔女、その夫婦と対面するはこのビルのオーナーを務める、人の良さそうな男だ。いずれも小綺麗な服装をしており……。


「会長も社長もお越しいただき、ありがとうございます。ささ! 皆様もおかけになってください。もちろん、ここを見て回られてもかまいません」


 会合に参加するわけではないが、その場で傍聴していたものが数名。アデリーンたちだ。


「わたしは、父の商談というか世間話に付き合うから。君たちは探検しといで」


 「ではお言葉に甘えて」、と、微笑むアデリーンは笑顔で手を振り、蜜月や綾女に玲音を連れてそこを後にする。すっかり引率の先生だとか、虎姫には彼女がそういう類に見えた。


「こらこら、そう言うんじゃありませんよ」


「しかしね母さん。父さんはこういう時、いっっっっっっつも長引くのだから……」


 アデリーンたちを快く見送った後も、オーナーとの商談を邪魔しない程度にテイラー家の面々はこの団欒を楽しむ。


「この『レッドタートル貿易センター』ってね、テイラー会長、つまりヒメちゃんのダディが建設にかかわったの」


「ほかにもテイラーグループ関係の建物あったよね?」


 煌びやかなビル内の廊下で。葵に訊ねられ、わざとらしく少し悩んだアデリーンはくすくすと笑う。


「ええ。本人不在だけど、語ってもよろしいですかな?」


 そんな彼女を見て、付き合いの長い玲音が察する。玲音から見たら、20代後半に見えるが実年齢はまだ20代前半という点を考慮してもこの年上女性、あまりにも遠慮がなさすぎる。


「……これは〜、聞きかじった話なんだけどね。ノブトラ会長、つまりヒメちゃんパパが若い頃、それはもう雨後のタケノコのごとく、この辺で建設を進めたらしくて……」


「まーた始まった……。長くなりますよ。アデリーンのテイラーグループ自慢話」


 隙あらばこの貿易センターに関する語り。苦笑いしながら、玲音が蜜月や彩姫といった年長者に向けて語る。


「てえてえじゃん玲ちゃん……。尊くない? ご友人の家族のことも、誇らしげに語ってくれてんだ」


 アデリーンに率いられるまま歩きながら、蜜月は玲音にやや危ないスマイルを向けながら言う。玲音のほうは引き気味だ。彼女からしたら蜜月とは知り合ってからそんなに経たないというのに、距離感までもがバグを起こしているためだ。


「こういう人ほど強さとか思想とかばっかり見て、その人自身をちゃんと見てないんだよなあ……」


「なによなによ。まあいいでしょう」


 自由な蜜月に振り回され、表向きは呆れつつも本当は信頼している……彼女と玲音の友情はまだまだこれからだ。



  ◆



「アーリアーリアリイイッ。アリアリアリアリアリアリアリアリ!」


 タワービルことレッドタートル貿易センターの外、遠くの物陰から見つめている黄白色のアリ、否、シロアリの怪人が奇声を上げて小躍りする。大アゴを備えた凶悪な顔つきで、体は軽めの装甲を重ねたふうなもの、翅はマフラーやマントのように生やしていた。


「積もりに積もった我が恨み、だが! まだ崩さないでおいてやるウ」


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