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【5th anniversary!】アデリーン・ジ・アブソリュートゼロ  作者: SAI-X
【第3話】大魔人トータスが破壊部隊を呼ぶ
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FILE017:ある1つの懸念


 その頃の浦和家――。アデリーンの言いつけを守っていた彼ら親子はとくに問題も起きず、まったりと平和を謳歌している真っ最中。


「心配事はたくさんあったけど、あれから何も起きてない。やっぱり安全第一よねーっ」


 と、綾女と竜平に語ったのはこの一家を切り盛りする小百合だ。談笑していたところ、彼女のスマートフォンに電話がかかってくる。アデリーンからだ。もちろん、持ち主である小百合が出る。


「はい! ……おー、アデリーンちゃんじゃない。追っ手をやっつけてくれたのね、ありがとう! またウチに遊びに来てくれてもいいんだから、遠慮はしないでね? それじゃ」


 状況を報告してもらったことに加え、何よりアデリーンの元気そうな声を聞けたので小百合は大いに喜ぶ。いい知らせだったことも大きい。また遊びに来てほしいと約束を交わしたところで、通話は終わった。ちょっと口元を緩ませて、小百合は子どもたちに顔を向ける。


「アデリンさん元気そうだった?」


「まあね」


「よかった~!」


 小百合からのその返事に綾女はうきうきして笑った。彼女はもう、アデリーンに対してぞっこんだ。友であり、義理の姉妹に当たるのなら、こうして繋がっていられる喜びは計り知れない。


「あの子がまた来てくれた時に備えて、もっとおいしいもの作れるようにしとかないとねーっ」


 小百合も、腕に()りをかけて手料理をごちそうしてやりたいと誓った。やったー、と、竜平と綾女を沸かせて、小百合はまたニッコリだ。



 ◆◆そのアデリーンは……◆◆



 小百合と通話を終えてからアデリーンは何をしていたかというと、戦いを終えたし、あれから異変も起きていなかったのでオフを過ごすことに決めた。ぶらりと街を散策して、小腹が空いたら流行のスイーツなどを食べて回り、満足だ。そして日も暮れてきたので、今晩泊まるホテルに入った。


「あー! 疲れた!」


 部屋に入ると上着はハンガーにかけたし、コートはハンガーにかけて、部屋着用のワンピースに着替えるとベッドの上で横になり、両腕を伸ばしていろいろ(・・・・)と解放する。人造人間という生まれではあるが、持ち合わせた素の感情は普通の人間とそう変わりは無い。良いものだ。


「サユリ母さんたちも無事だったし! あの人だけでも助けられたし……さて」


 寝転がって足をばたつかせながら、ここまでのことを少し振り返る。くよくよしない。しすぎないことが大事だ。ダムの作業員たちが犠牲となった中で、1人だけ守れたことは間違いなく救いとなっていたと言える。そのスタンスは紛れもなくヒーローのものに変わりない。たちまち回復すると、机に向かってノートパソコンを出して起動する。やることは、回収したスフィアの破片を使っての解析。


「チンピラが改造されたゼブラでしょ。それとライノセラス、ジャガー、トータス……あいつらはヘリックスの構成員だったけど、念のため。またヒメちゃんに送らないとね。ホーネットガイストも載ってたかしら?」


 合計4体分の怪人のデータを入力・解析し終わってから、アデリーンはホーネットガイストもデータベースに載っていないか調べる。――該当するデータがあった。しかし複数あり、それぞれ細部が異なっていたり、フォルム自体がまったく別物だったりもした。


「男性体、中性体、女性体……こんなにモデルが別れていたとは知らなかった。そういえばあのホーネットガイストはこの中でいう、中性体だったけど」


 アデリーンが引っかかっていたのは、データにあったホーネットガイストの姿は機械化・金属化されながらもどれも有機的なものだということ。あの女が変身していたほうのホーネットガイストは完全に機械化された、パワードスーツ的なボディを持っていたし、このデータベースに記載されているほうは、どれもあの女が使っていた十字剣や銃に関する記述が見られないし、その武器自体データベースに無い。


「進化している、いや、進化していたというのかしら……?」


 だとしたら危険すぎる。あの暗殺者に関しては早急に対処して、罪を償わせて――止むを得ない時はそれこそ、殺してでも阻止しなくては。これ以上誰かが、彼女の凶行の犠牲となる前に。


「それもだけど気になるのはやはりホーネットガイスト(こいつ)に変身していた、あの女。いったい誰なのやら」


 彼女にはもう1つ気になっていたことがあったが、それについてはある1つの可能性が浮かび上がっていた。


「――まさか、ね?(・・・・・) そんなわけ……」


 そうだ。たまたま雰囲気が似ていただけだ。たまたま口元が似ていただけだ。他人の空似であってほしい。それにたまたま――これ以上はキリが無い。やめておこう。しかし想定した限りでは、十分にありうる最悪の可能性。それが外れてほしいと彼女は切に願う。



 ◆◆――そして夜が明けた。◆◆



 ホテルを発つとアデリーンは広い都内でバイクを乗り回し、その末に某所に点在するとある家へ着く。モダンな外見で比較的裕福そうな感じの家だ。すると、その家の敷地内に立ち入り専用バイクのブリザーディアを停める。勝手に入って勝手に駐車など許されない。が、バイクを停めていい理由があった。それは――


()()()()()()()()……」


 自然と笑顔になった彼女は、インターホンを鳴らす。そして玄関へと上がる――。この家の住人の足音が、アデリーンには聴こえてくる。彼女とは親しい仲で、何より――親代わりになって育ててくれた者たちだ。


「ただいま。父さん、母さん」


 扉を開けてアデリーンを出迎えたのは、そろって優しくて穏やかな感じの夫婦。

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