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【5th anniversary!】アデリーン・ジ・アブソリュートゼロ  作者: SAI-X
【第24話】闇のロザリアがアデリーンを殺す!?
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FILE183:ブロークンハートはラヴへと戻る



 その頃、ヘリックスシティに安置されていた心の聖杯が突如光を放ち――。


「まぶしっ!?」


「何の光……うわあああああ!?」


 なんと、その場からいずこかへと消えてしまったのである。最初に驚いたのはデリンジャーであり、その次がジョーンズだった。彼らも含む居合わせたヘリックスの幹部メンバーらは、ただ驚くことしかできない。


「我々が盗掘してきた聖杯が()()()()()あ!?」


「それを言うなら()()()()()でしょうがぁ! ダーク・ロザリアはどうなってしまったのだ……。オリジナルの肉体に還元されてしまったというのか!?」


 禍津が腰を抜かし、兜はオカルトじみた現実にただ戦慄するばかりだ。誰もが冷静ではいられない。


「逆に内側から乗っ取るという展開があるはず! それに賭けましょうよ! あのクソガ……ゲホゲホ! あのじゃじゃウマ娘がそのくらいで死ぬ、いや壊れるわけがないでしょ!!」


「デリンジャーさん、キャラじゃないのに無理に心ない悪党みたいなことを言おうとしなくても良くってよ……」


「あの娘は我が子も同然だったのに! ぬああああああ」


 興奮気味のドリュー・デリンジャーをキュイジーネが宥めているそばで、久慈川までもが頭を抱えて動揺する。


「人形風情が俺たちをかき乱しおって、くぅ~~~~~~~ッ!!」


 兜さえも余裕をなくし憤っている背後で、ギルモアはワイングラスを握り潰してまで、ひっそりと激昂していた――。歪みきったその顔は見るからにおぞましい。


「わしの孫になりたいのではなかったのか、小わらべめが……!」



 ◇



 ハートの形の宝石があしらわれた心の聖杯は、どこへ消えてしまったのか? その答えはとてもシンプルなもので、アデリーンがいる教会の廃墟までロザリアを求めて転移してきたのであった。


「心の聖杯!? なぜここに……」


 そうなるのも、無理はない。この秘宝に自分の意思のようなものがあることなど、想像もつかないのが普通だ。


「きっと2人のロザリアが互いに変化しようとしているのを感じて、自ら飛んできたんだわ」


「そんな不可思議現象みたいな……はっ!?」


 アデリーンに傷を癒してもらったばかりの駒木根は、ここまでに起きたことを回想してから自身を納得させる。


「も、もう何が起きても不思議じゃないですよね……」


「……やることは決まってますよね。迷ってんじゃありませんよ」


「…………うん。あたしは…………あなたが犯した過ちからは逃げない」


「取り消しは効かない。融合してから後悔しても知らないからね……」


 何かをあきらめた、あるいは受け入れた顔をしてダークロザリアは自らロザリアへと抱きつく。光の粒となって消えたが、これにて善と悪に分かたれたロザリアはひとつの存在へと戻ったのである!


「っ……姉様」


「大丈夫!?」


 駒木根が口をぽかんと開けて固まっている中、アデリーンは具合が悪そうなロザリアに駆け寄って彼女の支えとなる。


「あたしなら平気ですから」


 妹が強がりを言って心配させまいとしていることを察したアデリーンは、花屋の駒木根も伴って教会を後にする。





「『カナ』さん!」


 まずは駒木根が働いていた、クラリティアナ家の近所にある花屋に立ち寄り、駒木根を彼と一緒に働く女性店員・カナのもとに帰らせてやった。アデリーンなりの、家族ぐるみで世話になっている相手へのせめてもの恩返しである。


「ギネっち! よかった、死なずに済んだんだ……」


 カナは茶髪で瞳は栗色、快活でしっかりものといった雰囲気を漂わせる若い女性である。やや頼りない駒木根とは、ある意味相性はピッタリだと言えよう。


「はい、化け物にされたコマギネさんは、この通り……。アブソリュートゼロがたまたま助けてくれて」


「やだなー、隠さなくてもいいですよ。アデリーンさんが彼を助けてくれたんでしょ。みんなにほ言いませんから」


 スキンシップが激しいカナは、積極的にアデリーンとロザリアに近づく。センシティブに感じ取ったかクラリティアナ姉妹は照れ笑いした。


「……はははっ。秘密のヒーローで通すのも、ほぼ形骸化しちゃったかしら」


「それは違うんじゃないですか。言いふらしたりなんか、しませんって」


 口が軽い女と思われるのはシャクだったらしく、カナは「いやいや!」と手を振りながら否定。もちろん駒木根も漏らさないつもりだったが、信じてもらえそうにはない。


「嬉しい! それじゃ私たちはこの辺で……」


「待ってください」


 気遣ってもらえて嬉しかったアデリーンは、これ以上邪魔はできまいと踵を返そうとしたが呼び止められる。お互い笑顔でお別れするには、まだ早かった。


「お礼がしたいんです。どんなお花でもタダでどうですか」


「いいんですか!? じゃあ、死んでしまった姉が好きだったマリーゴールドを……」


 アデリーンが所望したマリーゴールドの花はちょうど売られており、駒木根を助けた礼の品として譲ってもらえることとなった。とても嬉しそうにしている姉を見て、ロザリアは「あたしも会ってみたかったな……カタリナ姉様に」と、今では叶わぬ夢をつぶやく。


「お花ありがとうねぇ! じゃあね!」


 改めて、クラリティアナ姉妹は花屋の2人に手を振って笑顔でひとまずの別れを告げて帰路に着いた。やっとである、やっと本当の意味で帰れるのだ。


「カナちゃんはアデリーンさんのこと大好きだよな」


「クラリティアナさんちとは、カタリナちゃんが元気だった頃からの付き合いだもの。きっとカタリナちゃんも喜んでくれるって」


「友情てぇてぇなあ、僕お邪魔だったな……うう、ごめんよお」


「もう~!」


 アデリーンとロザリアを見送った2人は感傷に浸りつつ、駒木根が誘拐された件で店長にも一言言ってから仕事を再開したという。


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