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【5th anniversary!】アデリーン・ジ・アブソリュートゼロ  作者: SAI-X
【第22話】オクトパス!女性なら誰でも狙う
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FILE171:タコ焼き爆弾炸裂!


「お前のせいだからな! お前のせいで、チエちゅわんに愛想尽かされて……ううっ!」


「……おどき!」


 がんじがらめにされてピンチに陥った蜜月を放っておけないアデリーンは、武装したダークロザリアと取っ組み合うのをやめてオクトパスガイストへと冷気を放つ。近くにいて蜜月がいたぶられるさまを見ていたスコーピオンガイストも、巻き添えとなった。


「うぁっ」


「もう少し触手でなぶられるつもりだったでしょ。ふん!」


「ひゃっこい!? 急な温度変化はやめてくれぇ~~~~~~~」


 触手全部を凍らされたオクトパスには片手間で相手をしてうねるそれを切り落とし、蜜月を救い出す。まだ彼女に、戯れられる余裕は残っていたことも見抜いたような口ぶりで――。アデリーンによって下ろされた直後、蜜月は敵に威嚇射撃をしてから身構えた。


「んもぉー、情けないやつ! これで溶かしなさいよ!」


「アチィ――――! あっちゅ! あっちゅ!?」


 少し熱すれば溶かせそうなものを、ダークロザリアはわざと(・・・)黒々とした炎を発生させオクトパスらを解凍する。小麦粉でもまぶされたような状態から戻れはしたが、これはこれでダメージが大きい。


「むっかつくー! タコ焼き爆弾じゃあ! コテツじゃい! 焼きそばじゃー!!」


「はぁ~~~~~~~~~~~~…………」


 マンガじみた大げさな動きから、地団駄を踏んだオクトパスガイストは次から次に自慢の武器で攻撃し出す。鉄板で焼く食べ物にちなんだものばかりだが、それがすべて回避され通じないとなればホットプレートの付属品を模した触手による攻撃を行なった。その傍らでダークロザリアから心底呆れられたとは、1ミリも思ってはいないようだ。


「くどいッ。マジ見てらんね~……もういいだろ!!」


 蜜月は一気にケリをつけるべく、攻めの姿勢へと移行。対するアデリーンのほうは、相棒が集中できるようダークロザリアとスコーピオンガイストのほうへと斬りかかる。


「邪悪な心よ、消え去れ!!」


 アデリーンが装着しているブレスレットが光を放ち、緑色のリングが追加パーツとして装填される。その煌めきは、ロザリアの影たるダークロザリアにとっては少しまぶしすぎた。


「あなたの相手は私。これ以上、ユタカさんやチエさんたちを苦しめないでちょうだい」


 有利には戦わせてはくれない姉に対し、苛立ちを隠しきれないダークロザリアは黒々とした炎を伴う徒手空拳を駆使して、苛烈に攻め立てる。即座に青いビームシールドを装備したアデリーンには、すべて防がれてしまっただけでなく、逆に自身がダメージを受けてしまった。


「草刈流槍術・円月落とし」


「チュパチュッ……パァ――――――!!」


 その間に、蜜月とオクトパスガイストによる熾烈な戦いが早くも終わりを迎えようとしていた。食べ物を粗末にするような奇怪な攻撃の数々をくぐり抜けた蜜月が、ワスピネートスピアーを構えて満月のように円を描き、真上から敵を叩き斬ったのだ。力なく崩れ落ちた山吹色の大ダコは、火花を散らしてから大爆発。横たわったのは、その元の姿であるホストのユタカだ。彼の体から瘴気のようなどす黒いもやもやが抜けていく――。


「くうう……!」


 歯ぎしりして悔しがるスコーピオンガイストなどには目もくれず、蜜月はユタカへと駆け寄る。それを確認したアデリーンは、「よそ見をするな!」といきり立つダークロザリアを制し、畳みかけんと巧みな動きで翻弄する。


「お、オイラ何を……? ウッ! うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」


 正気に戻ったユタカだが、その直後――人々を手にかけてしまった光景が彼の脳裏に次々と流れ込む! 呼吸を乱して苦しみ出した彼を、蜜月が介抱した。


「よくも、ユタカさんを通してこんなことをさせたわね! ダークロザリアさえ利用して!」


「利用されたんじゃない、あたしが自ら望んでやったことです。お姉様はこのあたしに夢を見すぎなの。心を入れ替えようとしたり、迷ったりなんてするわけないでしょ!」


 ダークロザリアとスコーピオンガイストこと禍津の双方を相手取りながら、アデリーンは元凶である2人へ怒りを乗せて打撃や斬撃を見舞う。あくまでも行動自体は冷静に、時には同士討ちをも誘発した。


「そうだよ、あたしが破壊や殺戮をためらうわけが……」


「だましだまし悪事を続けても、辛いだけよ。おとなしくロザリアと1つになりなさいな」


 ダークロザリアが、()()()()()()()()()()()ようにそう言っていたのを、アデリーンは聞き逃さなかった。あやす風に呼びかけながらも、その手は容赦なく敵たる彼女を追い込んでゆく。


「へぇ、あたしのオリジナルをそんなに苦しめたいんだ。あたしが戻ってもあの子が罪の意識に苦しむだけですよ。ずいぶんひどいお姉様だこと」


「……いいえ? ロザリアを最も苦しめているのは、悪さをやめようともしないあなたに他ならない」


「きぃッ……」


 二度と攻め立てられないように、アデリーンが一方的に牽制しながら論戦を繰り広げているのを見て禍津は居心地が悪く、その煽り合いを醜く感じてか肝を冷やした。その間にも蜜月はユタカを連れていったん戦場を出て、ユタカをも避難させる。


「あーあー! 姉妹ゲンカなんて辛気くさいことは、俺の見ていないところでやれェェッ」


 アデリーンの青いビーム銃から響いた銃声は、スコーピオンガイストとなった禍津が頭部から弁髪のように生やしているサソリの尾を撃ち抜いて破壊してしまう。


「シュワァー!?」


「姉と妹の問題に口を挟むな!!」


 鬼気迫るアデリーンからただ単に一喝されただけでなく、圧を感じずにはいられなかったスコーピオンガイストは彼女に恐怖する。それはダークロザリアも同じで、姉が本気で怒っている現実を前にひよりかけていた。


「やはり使うしかないか……」


 ここまで来て情に流されはしない。目の前で狂気的で非情な加害者に仕立て上げられた不憫な被害者の姿を見せられては、ためらいもすべて吹き飛ぶというもの。このような惨劇は早く終わらせる、その必要があった。


「させないですよ!」


「もう遅い! スパークル、ネクサァァァ~~~~~~スッ」


 ネクサスフレームをちらつかされて焦ったダークロザリアは、これまたどす黒い弓をその手に顕現させて引き絞ろうとしたが、一歩遅かった。既にアデリーンは激しくも暖かな光に包まれ、強化形態へと変身を遂げたのだ――。

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