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【5th anniversary!】アデリーン・ジ・アブソリュートゼロ  作者: SAI-X
【第22話】オクトパス!女性なら誰でも狙う
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FILE168:マジメな話をデパートで


 あらかじめチェックインしていたホテルの一室にて、ノートパソコンに内蔵されたディスガイスト怪人に関するデータベースと、蜜月から得た情報を照合――したかと思えばシャワーを浴びてリフレッシュ。さらに、情報をまとめている間に売店で購入した夜食を食べたり、テレビ番組を流し見したり、アデリーンはそんな風にして一晩を過ごした。スマートフォンに綾女から連絡が入り、彼女たちと『メジロデパート』で待ち合わせすることになったのはその翌日のことだ。そのデパートは寝泊まりしたホテルから少し北に行ってすぐの地点に建てられており、それなりに立派な外観で目印にするにはちょうどよい場所でもあった。


「その昔異次元空間から攻めてきた怪物が人間を襲ってた……って話は覚えてる?」


「ええ。影や隙間を通ってやって来ていたっていう」


「例のタコのおばけを目撃して運よく生き残った人たちによれば、その隙間にタコが女の子捕まえたまま入って行ったらしいんだよ……」


「軟体動物にはよくあること……でもなさそうね。よっし、欲しかったぬいぐるみはいただき!」


「あっ! ずるいぞーワタシが欲しかった子じゃないのよ!」


 綾女とその弟・竜平、葵、蜜月らと合流するまでに時間はかからず。ゲームコーナーまで移動し、クレーンゲームで遊びながらこのようなやりとりを交わしていたアデリーンは、蜜月と交代して彼女にもチャンスをつかませてやろうとする。筐体の中には、白と黄色の鎧の男性キャラや、青とピンクと白の鎧の女性キャラ、赤い鎧の男性キャラ、金色に近い色調の鎧の男性キャラのぬいぐるみなどが置かれていることがガラス越しに確認できた。蜜月が欲しかったのは、黄金色のロングヘアーと同色の鎧がまぶしいセクシーな女性キャラのものだが、アデリーンが先に手に入れてしまった。


ついてる(・・・・)ヤツはいらねー、女の子こい!」


 血眼になってクレーンを動かし、指定した女キャラのぬいぐるみをキャッチする。青とピンクと白の鎧を着ているキャラクターだ。そのまま穴まで運び、落とそうと画策して「顔がいい」とちやほやされる女性がしてはいけない表情になってしまう。


「こねー」


 穴のフチに引っかかって、ぬいぐるみを入れることは叶わなかった。


「何の成果も! 得られませんでしたあ!!」


 落胆し、周りから同情されるも彼女はあきらめず、今度は別の女キャラを狙う。鎧を身につけていないヒロインのぬいぐるみだ――、しかし、結局このヒロインのものも穴へ運搬する途中で滑ってしまい、入手することは出来なかった。


「さて……。ホストのユタカさんが、タコのディスガイストである可能性が真実味を帯びてきたわね」


 遊んでいるうちに正午を過ぎたため、一行は4F・フードコートのすぐ近くにあったファミレスの店舗の中に入った。食事目的だけでなく、落ち着いて例の事件を起こした怪人に関する話をしたかったからでもある。


「そうじゃないかもしれないよ」


「姉ちゃん?」


「タコ怪人になっている人がほかにいて、そのユタカさんに罪を着せようとして工作してるのかも。まあ推測の域は出ないかな」


「何にしても、ワタシらがこの目で確かめてみない限りはわからん。答えが出せるまで……。あっ、ワタシ、『よくばりチキンカツプレート』で!」


 綾女らと話をしていた途中だが、蜜月は営業妨害にならないようにメニューを読みながらすぐに注文する。周りにいたアデリーンや綾女たちからは暖かい目で見られた。


「時にあんたたち、ワタシにうんまいモンおごっといて、なんで自分らはファストフードとかで済ませようと思ったん?」


「こないだ、私たちだけでごちそうを『たーんえー』と食べてしまったもので……エヘヘ」


 アデリーンらは蜜月とは別に食事を取ろうとしたが、せっかくだからと止められたため……こうして、このレストランで埋め合わせをしているしだいである。先日ぜいたくをしたことへの反省からか、ドリアやパエリア、スパゲッティの単品など、比較的控えめなメニューを頼んで、蜜月に気配りもしつつおいしそうに食べていた。


「その日、雑誌の編集の仕事がなけりゃあワタシも行ってたんだけどねえ……。ピッツァなり何なりゴチになりたかったよぉ」


 ――などとは言っているが、蜜月は愚痴をこぼしつつもおいしそうにプレートに盛られたソースたっぷりのチキンカツやブロッコリー、皮の分厚いフライドポテトなどを食している。言うまでもなく美味であったらしい。


「ゴチになりもうした!」


 なお、この前に食べ始める際にはちゃんと手を合わせて「いただきます」と、皆でやっていたようだ。レストランを発つと、思い思いにショッピングをはじめて、それも終えて外に出て深呼吸をする。とくにアデリーンは、大きく伸びまでやっておりとても気持ちよさそうだ。


「しかしよぉ~、犯人捜しどうするよ? ある意味、今まで以上に神出鬼没ぞ?」


「古語ならいいけど。「没」と「ぞ」の間の「だ」が抜けてましてよ」


「おほん! 相手の出方を待つとまた犠牲が出てしまう、それは防ぎたい」


「私がオトリをやります」


 それは危険を冒すのは私だけでいいと、宣言しているようなものだ。綾女も、竜平も、葵も、蜜月も、いっせいにアデリーンにそわそわした視線を集中させる。


「それじゃ、アデリンさんが危ないわ」


「いいえ、わざと捕まって相手のアジトをあぶり出すの。私が犯人の隙を見て連絡するか位置情報を送るから、ミヅキには、ワーカービーを使ってその地点を探知してほしい」


「わかった。この子たちにはたやすいことさっ」


 ウインクしてサムズアップも送ったあと、蜜月は子バチ型のデバイス・『ワーカービー』を1機、また1機と取り出して、合計3機を街の中へと放ち、偵察に行かせた。

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