村を建てたい?
文化祭の準備は着々と進んでいく。一方、ゲームはというと。
これがまたやることができてしまったというか。
「どうか村を立てさせてください」
と、人々が頭を下げる。
現在ワグマを模倣し、ワグマの代わりに応対を受けている私は、ため息をついた。こういう輩が厄介だからだと。
まず第一に、魔の森に村を作りたいとか正気の沙汰か?
「嫌です。こっちから村を立てて住んでくださいということはあれど自分たちで開拓してくださいっていうのが気に食わない」
「なんでですか!?」
「魔の森は私たちの貴重な資源だ。それを知らないやつに開拓されているなど……それに、あなたたち、冒険者ギルドかどこかの差し金でしょう?」
そうかまをかけると、図星なのか少し黙ってしまう。
やっぱりか。突然押し掛けて村を作らせてくださいっていうのがちゃらちゃらおかしい話だ。
「冒険者ギルドの差し金か国かはどっちかは知らないけど、村を立てて冒険者ギルドを作りたいだけでしょ? 私たちの監視と、魔の森の素材搾取を兼ねての」
「え、ええっと、私どもではそこらまでわかりませんっていうか……」
「なら泣いて戻って『あめえんだよバーカ』って言っておいて」
「でも……」
「なに? 私にたてつくの? そんなに殺されたいんだ」
「は、はい!」
と、村人は泣いて戻っていく。
別に魔の森の素材は搾取してかまわないが、無断というのがまたお行儀の悪い話だ。私たちをここに縛り付けてる今、誰かが魔の森の素材をとっている……かもしれない。だからこそ私だけしか今この王城には残っていない。
甘いんだよ。王を一人にしないとでも思った?
数時間後、今度は冒険者ギルド長と第二王子がやってきた。
「それで? 魔の森の魔物の為に冒険者ギルドを立てさせてくれと?」
「は、はひっ! そ、そそ、その通りですう!」
冒険者ギルド長はすっかりビビっている。
第二王子はもうトラウマはないのか、偉そうに座っていた。
「魔物のため、ねぇ、狩られる側にためとか言われてもそんなん困るよ」
「あなただって統制する必要がなくなるんです。面倒ごとが消えるでしょう?」
「同時に力を消すってことだよね? もう、やり方が汚いんだからぁさすが腹グロ王子ィ」
「…………」
「でも断るよ。冒険者ギルドで魔の森の素材をとるってことだよね?」
「そ、そそ、そうなります……」
「で、魔王軍の村ときた。となると、冒険者ギルドは私たちが運営してもいいってことでしょ? 私たちの国のなんだから」
「いや、冒険者ギルドは全世界にあるが、運営は冒険者ギルド独自でやっている。国政に関わらないのが冒険者ギルドだ」
「そんなんはどうでもいいよ。というか、がっつりかかわらせてるのはあんたでしょ」
国からの命令だろうて。
すっかりトラウマを忘れてしまってまぁまぁ……。
「だから建てることはできません。どうしてもというのならば……冒険者ギルドを建て、報酬の九割を頂くことが条件となりますよ」
「そ、そんなのは多すぎないか?」
「多い? 魔の森に建てたらこれ幸いと素材を搾取しようとしているくせに多い? ならば私たちだってニホンからとれる素材をたくさん採取してもいいですよね?」
「……わかった。手を引こう」
「あなたにしては賢い選択じゃないですか。でも……帰りに勝手に取っていく行為なんてしないように。私は貴方が死んでもどうでもいいんですからね」
私は大剣をとりだして、第二王子の首元に突きつける。
逆らうなよということなのだが。
「…………」
「あれ?」
「……か、帰るっ」
「うん?」
顔を赤くして去っていった。




