キャンプしよう ②
水遊びも終わり、夜となる。夜はバーベキューをするらしく、私はコンロで火を起こしていた。一応料理できるが、料理できない組である白露、月乃が広瀬先生に教わりながら食材を切っている。大変じゃないか?と聞いてみれば、珠洲よりはうまいから大丈夫ッていっていた。え、葉隠さんそんなやばいの?
「珠洲。そこでいじけない。なに一人で炭起こしさせてるの?」
「いえ、いいですよ。そろそろついてきましたしもう終わりましたし……」
「ほら、夢野ちゃん一人で結局やったじゃん。もう大人なんだから昔みたいに人任せにしないの」
「私だって料理できない組だから食材切りたかったんだもん……」
「子供か」
広瀬先生葉隠さんに容赦ねえ。慰めることもなく、ずばっと葉隠さんを切っている。これが幼馴染の距離感というやつなのか?
そして、食材も切り終わり、バーベキュー開催となった。広瀬先生と葉隠さんはビールの缶をあけた。
「きょーはたべるぞー!」
うわ、広瀬先生酒弱え……。一口飲んだだけなのに酔っぱらってるとは。
顔が赤くなり、次々と肉と野菜を乗せていく。ビールをぐびぐび飲みながらも、手際は滅茶苦茶いい。というか広瀬先生。酒弱いですね。
「ほらほらくえくえ。珠洲と私が買ってきたおにくだぞーうふふー」
「めんどくさいモードになっただろ」
ほろ酔い気分の葉隠さんがため息をついた。
肉が焼けていくと、広瀬先生は次々と私たちの皿に肉を乗せていった。
「ねぇ、パン子。広瀬先生酔うとはしゃぐのね。子供みたいに……」
「きっと昔我慢ばっかしてきた弊害だろうなぁ」
「我慢ばっかしてきたんですね。広瀬先生。私もそんな我慢強い大人になりたいものです」
「いやいや、我慢強いことがいいことじゃないからね? たまにはおちゃらけたほうがいいんだって」
ふぅん。
私はぶどうジュースを口に含んだ。漫画とかだったらこれワインだとかなるが、現実であるためにそういった凡ミスはほとんどない。マンガみたいなことなんて現実には起きっこないのだ。
それに、広瀬先生がわざわざビールとかそういったことをレジ袋に書いているために間違えようがない。
「食べてるだけじゃつまらないー! みんなで泣いたことを暴露してこー!」
「泣いたこと?」
「まず私から! 私は……親に必要とされてることが嬉しくて泣いたね」
初っ端から重いんだよなぁ。
私たちなんて言えばいいかわかんないよ。広瀬先生の昔なんてそこまで知らないし。
「この子たちにはわからんでしょ。私の泣いたことかー。お小遣いで買ったゲーム機を自分で踏んづけて壊した時にはまぁ、号泣したね」
「わかります。私も結構物壊すんですよ……。大事なもの壊した時には私も泣いたなぁ」
それ自業自得では? きちんと机とかそこにおいておけば踏むこともなくなるのでは? とかそんなことは言わないでおいた。
というか、私も人の事言えないからだ。たまに足下に置いて踏んづけることがあるからね……。
「私は練習試合で負けたことに泣いたな。公式試合で負けなしなのは今もなんだが、それで慢心して練習試合のとき相手を侮っていた。それで負けた時は、自分が許せなくて泣いたな」
ああ、中学一年の時か。
白露が練習試合で相手に投げられていた。投げられたあと、頭を冷やしてくると外に行くと頭を押さえてむせび泣いていた。負けることが悔しいのと、慢心し、相手を侮っていた自分が憎いといっていたな。
「あとはパン子だけなんだけど……」
「パン子、泣いたことあったか?」
「そうなんだよな。私泣いた記憶ないんだよな」
両親が死んだときも少しの涙は出たが、号泣したというほどじゃない。
「パン子ちゃんはぁ、私に昔のことを話した時むせび泣いてたよォ」
「ああ、それです。泣いたの。それ以外泣いてないな……」
そう考えると我慢しすぎだな私も。




