アバロン教最高司祭 ②
司祭は笑顔をやめた。
「たしかにうちの目的は国を我が手にすることです。だからこそ、信仰という名の後ろ盾をもらいたいのですよ」
「ここまであっけらかんだと感心するな」
「取り繕うなといったのはあなたでしょう?」
だからといって本音出しすぎだろう。
駆け引きがない分まだマシか。駆け引きは得意だけど好きというわけじゃないしな。そらないほうが楽だしいいに決まってる。
「アバロン教はニホンの国教とまでなりました。あと足りないのは国を操れる地位なのです」
「そう。なかなかに黒いねあんた」
「パンドラ様には負けますよ」
「そこまで黒くないよ」
心外だなぁというように私はため息をついた。
でも、私たちは協力するわけがない。どうぞ好きにやってくださいという感じなんだけど、好きにやってくださいというと本当に好きにやられるんだよな。
「で、協力? 後ろ盾の件は断る。うちにメリットがない」
「神の恩恵に授かれるという……」
「それ冗談で行ってるなら面白いね。神様信じてないしょあんた」
「バレちゃいました?」
「神様だなんだ言う割には胡散臭い。なんであんたみたいなのが最高司祭なんだよ」
「いやぁ、なんか運がよかったのか結構な功績を残しまして。それで無理やり押し上げられたんです」
「で国を牛耳りたいのはその腹いせってか」
「よくわかりましたね」
「腹いせで国を牛耳るとか頭大丈夫かよ」
何となくこいつ読めてきた気がするぞ。
「それで、私たちに対する具体的なメリットを提示してもらおうか」
「そうですね……。人材の派遣とかは?」
「却下。そこまで困ってるわけじゃないし、戦えない人はいらない」
「そうですか。やっぱり金?」
「金で動くんなら信用しないで裏切るでしょあんた」
「あらら、ばれてます?」
思考はお見通しなんだよ。
でも本当にこいつ黒いな。いや、まじで。腹黒い……。正直友達には絶対なりたくないタイプだ。近所の動物を笑顔で虐待していたタイプの人だ。
「なら、第二王子の処刑では?」
「まあいいでしょう。あいつ好きじゃないし」
「なら、交渉成立ですか?」
「それでいいんじゃない? まぁ、私はあんたが裏切ると思って対策もいろいろ練っておくから」
「あはは。そこまで信頼ありませんか」
「今のは失敗を恐れずにうちは自分で自分を守るからって意味だったんだけどな」
「わかってますよ」
「知ってる」
うふふあははと笑いあった。
腹グロ相手って結構疲れるんだよ。腹の探り合いするとこちらがダメージを受けかねない。いや、私は別にこういうのは許せるし……。
それに、こいつは多分裏切らないだろうなと思う。




