パン子に会いに
月乃視点ですぅ
私は駅のホームに行くと、そこには見知った顔があった。
「白露? 何してるのよ」
「ん? ああ、月乃か。いや、電車に乗ろうとしてるんだが」
「なんで電車に……?」
「パン子に会いに行くためだ」
と、白露が私と同じ目的だった。
白露はそう隠す気もなくいうので、私も隠さず「私もよ」と告げると、考えることはやっぱ同じなんだなと白露が笑う。
悪いか。なんていうか、パン子がいないとしっくりこないのよ。
「でもお嬢様が田舎に旅行とはな。普通もっと都会に行くだろ」
「いいじゃない。田舎のほうが風情あるわよ」
「そうだな」
そもそも都会は人多いのよ。本当に。
迂闊に外歩きたくない。いや、本当に。都心部なんかにいくともうすでに帰りたいし。それに、田舎そんな嫌いじゃないわよ。
ゆっくりと時間が流れていそうだし。
「まぁいくか。えっと、この駅の終点でおりてそこからバスだったか?」
「そうよ。バス代は私が出してあげるわ」
「悪いな」
「いいのよ。高校生はお金ないんだし節約できるんなら私を使いなさい」
「いつもすまない」
「いいのよ。普段助けられているし。こういう費用を払うのは持つべきものの務めでしょ?」
友達のためならばお金を使うことは厭わない。
ただただ、本当に信頼している人だけだけれど。パン子と白露以外にはお金使おうと思ったことはない。
二人は私の大切な友人だから。
「それに、大切な人のために私のお金を使うっていうのはちょっと幸せなのよ」
「――そうか。幸せか」
「そう。白露にもそういったことあるでしょ?」
「あるな」
今のままでいい、今の関係がいい。
いや、パン子に恋人が出来ようとも、白露に好きな人が出来ようと私たちの関係はきっと変わらないだろう。そういった自信がある。ふたりは私を裏切らないから……。
持つべきものは心許せる信頼できる友人だと思うの。
「ほら、さっさとしないと電車の時間なくなるわよ」
「そうだな。さっさと行こう」
私たちは改札を通り抜け、電車に乗り込んだ。
やってきたのは田園風景が広がるのどかな田舎。
車はあまり通っていない。農村地区というところなんだろう。コンクリートで舗装された道が少なく、ほとんど地面だ。土だ。
「すごい田舎だな」
と、白露がそうつぶやいた。
私もそう思う。畑で作業する人とか、田んぼの中に入って草抜きしてる人などたくさんいる。虫も飛んでいて、セミの声がうるさい。
「ふぅ。相変わらず暑いな」
「そうね。猛暑続くわね」
「この前ランニングいったときはコンビニのスポドリとか売り切れるほど暑かった。おかげで飲みたくないお茶を飲んだ」
「私はずっとクーラーつきっぱなしの部屋で過ごしてたわねぇ。パーティぐらいしかやることなかったわ」
私たちがそう話していると、前から自転車がやってきた。
その自転車に乗ってる人は……。
「パン子?」
「ごーごー!」
「あれ……月乃に…はぁ、はぁ……白露……。なんでここに?……ハァ」
「疲れてるな。少し休憩しろ」
パン子が息を切らして後ろに小さい男の子を乗せながらやってきたのだった。




