両国の動き
お姉ちゃんの料理の腕はとてもいいというか、安心する味だった。
満腹になるまでご飯を食べて、私は部屋に戻ってヘッドギアをかぶる。ログインすると、部屋で勇者のレブルが腕立て伏せをしていた。
「お目覚めですか師匠! 師匠に教えをと思ったのですが寝ていたので軽く運動してました!」
「へ、へぇ……ちなみに何回ぐらいした?」
「えっと、両手で200、右手で300の左で300だから……」
「もういい。軽くっていうレベルじゃねえな……」
合わせて800を超える腕立て伏せの回数。私は絶対できないだろうな。
「師匠! 今日は何をします!」
「特にないんだけどなぁ。とりあえず魔の森の警備でも行く? 人間が侵入してないかーとか」
「かしこまりました! 人間見つけた場合は排除ですか?」
「そんなセリフが出てくるあたり気が弱くなくなったな」
排除ってそう簡単に口にしてしまうようになった勇者さんよ。
妙にやる気に満ち溢れてますね。いや、まじで。
「あ、師匠。ログインしてたのね?」
「ワグマ。やめてよ……」
「いいじゃないか。似合ってるぞ。師匠」
「ビャクロも……」
二人がからかうようににやにやとこちらを見る。あー、うぜー。
「まぁ、揶揄いはさておくとして。ニホンとオールランド王国の動向は?」
「特に目立った動きはないな。ニホンもちょっかいだしてこないしオールランド王国も特にないかな。いたって平和」
「そう。それにこしたことはないけど……。
「ワグマ様、ビャクロ様、パンドラ様。ニホンを乗っ取るという考えは抱いてないのですか?」
「うーん。そこまで高い志はないわよ。さすがに私一人で治める領地は大きすぎると厄介だし」
「それもそうですね」
エレメルも話し合いに参加するようだ。
私たちが話していると、背後から「むー」という声が聞こえ、そちらを向くとレブルが頬を膨らませていた。嫉妬か?
レブルは「師匠たちに混ざれない自分が情けないです」と悔しそうにしていた。
「それに、乗っ取りせずともあの国は近々亡びるでしょう。国民はどんどんと不満点が多くなっている。たんに住みづらいわ」
「たしかにね。第二王子が魔王軍討伐費用というものを作って、税金が少し増えて、物価が高くなっているし。住みづらいねぇ」
税金も高ければ物を買うのも高い。
すぐに財布の中から金がなくなりそうだ。不満点が出るのもわかった気がする。
「第一王子はあんなにも賢いしいい王になれる男なのになぜ王位継承するやつがバカなんだろうか」
「昔から誰も叱らなく、自分の好きなように生きてきましたから。国民は王に尽くすというのが身に染みてるんでしょう」
「私利私欲の為に兵を動かし、その費用は国民から……。何も国民全員が私たちを討伐したほうがいいと考えてはいないだろうから可哀想だと思うよ」
むしろ討伐されるべきは第二王子だろうけど。
「とりあえずニホンは気をつける方針で」
会議が終わり、私は、レブルに行くぞと声をかけたのだった。




