番外編:やばい発明品
番外編2話くらい投稿したら本当におしまい。
大学生活も順調に終わり、首席で卒業していった。
私は月乃に電話する。卒業したらやりたい事があったのだ。
「もしもーし。月乃さん? ちょいといい?」
『いいわよ。どこで落ち合う?』
「白露が通う会社前の喫茶店」
『わかったわ』
私は喫茶店に月乃を呼び出す。
月乃がコートを羽織りやってきた。私は手をふり月乃を待つ。
月乃は私の目の前に座る。
「で? 話ってなによ」
「いや、その、頼みがあってさ」
「頼み?」
「私にお金を貸してください」
私は頭を下げる。やりたいことの為にはお金が必要だ。今の私じゃ到底持ち合わせが足りない。
どうだろうか。友人の間でお金の貸し借りはしたくないし借りを作りたくない。けど、金を貸してくれそうなのは月乃だけなのだ。
「なに? 闇金から金でも借りたの?」
「違う。私はやりたいことがある。金が必要なんだ」
「やりたいこと?」
「これはビジネスになる。私は物作りをする。その為には必要なんだ」
「そう。わかったわ。いくら?」
「え、いいの?」
「ええ。パン子なら安心して貸せるし返さなくてもいいわよ」
「いや、きちんと返すよ。たぶん」
自信はない。賭けだからだ。
私は大学時代に開発した人工知能の金もあるが、それだけじゃ足りない。私が作るものはそれじゃ足りない。
「ざっと五十億」
「結構な金ね。まあいいわよ。利子は十日一割?」
「闇金か?」
「嘘よ。無利子でいいわ。踏み倒してもいいし」
「それは…」
「その代わり、開発できたら私の会社に譲ってくれること。もちろんそれ相応の金は出す」
「わかったよ。ありがと」
持つべきものは金持ちだ。
そして、十年後。
私は二十二歳の時に甲地とできちゃった婚をして、子どもも生まれた。子供の名前は祐太郎。顔は甲地に似てイケメンであり、少々体格もいい。
私は夫を送り出し、子どもを小学校へ行かせ、研究室に向かう。そろそろ出来そうなのだ。
私の発明はとてもいいものだ。
私はヘッドギアをかぶる。そして、テストを始めた。
私の視界が暗転し、そして目覚める。
目覚めると私の体が目の前にあった。私は自分の手を見るとロボットの手になっている。ロボットというよりかはデッサン人形のような感じの関節がある腕。
成功だ。
私が開発したのは意識を移せるロボットだ。もちろん安全性はあり、もし死ぬようなことがあった場合すぐに意識が体のほうに戻る。
『あー』
声を出してみると、録音していた私の声だ。
できたあー! あー、結構かかったな。このロボットは。
機械人形。これが活用されるのは災害現場だ。瓦礫の下など、危険なところをロボットに搭載するカメラからではなく、自分の目で見られる。
カメラだと見落としもあるが、このロボットは人間の目で確認できるのだ。
動きも滑らかで、本当に人間のよう。そして、コードレス。充電式でバッテリーは一週間は持つ。
私は月乃に電話した。
これは大発明です。あの時読んだロボット工学の本の知識が役立った。
力はセーブさせてあるが力を出すボタンがあってそれを押したら瓦礫を持ち上げられるくらいには力が出る。
「もしもーし。月乃さーん。発明品できましたー」
『本当? わかったわ。見にいっても?』
「いいよいいよ。白露も連れてきな」
そう言って電話を切る。
へへ、驚かせてやろーっと。
三十分くらい待つと私の研究所の前に車が止まる音が聞こえる。
私は自分の体を移動させ、あたかも死んでるように装う。
「パン子! きたわ…って、なによこれはああああ!? パン子!? 大丈夫!?」
「ひゃ、110番!」
『そんなに驚くなよ。無事だって』
私が声を出すと月乃たちがこちらを向く。
私はやっほーと手を振った。
「えっ、なにこの機械…」
『みんな大好きパン子ちゃんだよ?』
というと。
「「えええええええ!?」」
驚かれた。
私はとりあえず意識回帰ボタンを押し、私の体に戻る。機械人形は動かなくなる。
「よっと。ね? 発明品」
「な、なな、なんなのよこれは! えっ、なに? このロボットの中に入れるの?」
「意識だけね。いやー、作るのに十年かかったよ。いや、十年で済んだってぐらいか」
「すごい…。誰でも入れるのか?」
「このギアつければな」
私はヘッドギアを渡す。
「懐かしいな。これでIUOをしていた」
「このロボットを作るきっかけはそれだからね」
VRMMOというのはみんなで夢を共有してるイメージだ。
意識をそちらに送ることができたということは、現実世界でも出来るのではないかと考えた。で、結果がこれ。
「ワープとかは量子力学的にあり得なくもないけど今の人間の技術と知能じゃ無理。これが限界」
白露はヘッドギアをかぶっていた。
「どうやってやるんだ?」
「ゲームにログインするみたいに…」
と、白露の体の力が抜け、機械人形の方に行った。
機械人形が動き出す。録音していた私の声で喋り始める。
『すごいぞ! 機械の体だ!』
「ただこれは本当にすごくてメンテナンスさえすれば無限の命が…」
「……」
「錆があれば変えればいいし充電さえすれば動き出せるし肉体が死んだら意識もなくなるということにはしてるけどそれを取っ払えば…」
「あんたバカ?」
「なんだよ。世紀の大発明だぞ」
「なによ無限の命って! バカなの? なんでこんなもんを作るのよ!?」
「天才の知能舐めんな。ふひひ」
「怖い! こいつ怖いわ!」
いや、わりとマジで苦労したよ。
VRの技術を応用しただけなんだけどな。むしろプログラムは簡単だったけどロボット本体がなぁ。部品がないから作ってもらわなきゃならんし。
「こ、これを売り出せと?」
「一万とかで?」
「バカじゃないの!? そんな大安売りできるものじゃないわよ! 無限の命よ!? そんなの売れないじゃないの!」
「いや、肉体が死んだら死ぬようになってるから永遠の命ではないぞ。それに心臓部が壊れたり全身が壊れたら強制的に肉体に意識が戻る」
「あああああ、もう何がなんだか…。こ、これを売るの?」
月乃は不安そうに売れた。
「大丈夫! 下らない商品もあるぞ。マシンガンピストルとか頭を取ると頭を探して動き回るデュラハン人形とか」
「そんなのはどうでもいいわ!」
『パン子、戻るときは?』
「首の後ろの付け根にある意識回帰ボタンをポチっと押すだけ」
白露はスイッチを押し機械人形は動かなくなる。
「楽しかったぞ」
「あああああ、もうこれは兵器じゃないの…。戦争とか仕掛けても銃弾とか絶対効かないだろうし…」
「瓦礫が降ってきても凹むくらいには頑丈だねえ」
「火の中も大丈夫だろうし…」
「火災現場で行けるように耐熱性もバツグン」
「これは発売しないわ」
「なんで!? 十年間の努力の結晶だぞ!?」
「やばすぎるのよ! あんた兵器にもなりうるもん作んな!」
えぇ…。
それを言ったら車だって兵器になりえるしなんだって兵器になりますけど?
ならあれか?本格的なペンシルロケットでも開発してやろうか?
「金は返さなくてもいいからもう作るな…」
「ちぇー」
残念です。10年間無駄にしました。




