楽しい未来、幸福の世界
どうやら終わったらしい。
人の幕引きというのは随分あっけないモノだ。私はとりあえず座る。
これで終わり、そう考えていいだろう。
すると、四人が入ってくる。
「パンドラ!」
四人は私に駆け寄った。
「見ての通りだよ。はー、なんか久々にこんな悪いことしたわ。でもスカッとした」
「そう。ならいいわ。でも…」
ワグマは窓の外を眺める。
まだ魔王軍にやる破壊は続く。カイハの発明品やウルフの破壊、アンデッドどもの行進など、国の終わりが目に見えている。
「なんか、アデュランも可哀想よね。結局は…」
「悲しみばかりなんだよな。レオンも含めて。初代国王があんなエゴイストじゃなきゃ、まだ幸せだったのかもな」
「そうだな。人の欲は国をも滅ぼす。自分ばかりではダメということだ」
窓の外の光景を見ながら私たちはそのまま国の崩壊を待った。
窓の外は世界の終わりを感じさせるような光景だ。人々が培った建物などが壊れていく。この光景は初代国王には辛いものだろうな。
初代国王も初代国王なりに統治の仕方があった。良き政治を行っていたはずだ。ただそれはあくまで人間側のみでの良き政治であったということかもしれないな。
思うところは少しあるが、もう建物がほとんどなくなっていた。
そして、国の建物が全てなくなり、残りは王城となる。私たちは王城を破壊することにした。
私たちは外に出て魔王軍と合流する。
「あとはここだけだぜ。決めてくれよ三人」
「そうです。ここは最高幹部と魔王様が壊してください。終止符をうつんです」
カイハ、アンジュたちに言われて、私たちは王城を攻撃する。
王城はひび割れていき、そして、崩れ落ちてくる。瓦礫が落ち、砂埃が舞う。戦いはあっけなく、誰も幸せになれなく終わった。
「…さて、みんな戻ろうか。ありがとう」
私たちはそう切り出した。
魔王城に戻り、私はログアウトする。疲れた。なんていうか、色々と考え込んでしまった。だが、こうも考えさせられることもあるっていうゲームはすごい。
疲れた、が、まだまだやる気が湧いてくる。これだからゲームは好きなんだ。
「あと、先延ばしにしちゃった甲地への返事もしないとなー…」
私は誰にも聞こえないような声でそうつぶやいた。
翌日、私は学校の校舎に甲地を呼び出した。
「ま、待った?」
「そりゃもう」
「ごめんね」
「いいよいいよ。それで、告白の返事なんだけどさ」
私は柄にもなく緊張していた。
なぜなのかは知らない。たぶん私も甲地の事が好きなのだろう。いくら私が天才でも私自身の本心はわからない。
私は一通の手紙を渡す。
「ら、ラブレター?」
「自分の気持ちを直球で伝えるのは柄じゃないしハズイから」
「え、えっと、告白の返事とかけまして冬にやるスポーツとときます。その心は…ってなぞかけ?」
「うっ」
「なんかパン子さんらしいよね。ひねくれているって言うか…。でも、パン子さんならもうちょっとひねりがある暗号とかできそうなんだけど」
「う、うるさいな。わかってもらえなかったらどうしようとか考えるとそんなのしかできなかったんだよ」
こいつのことを考えるとなんだか落ち着かないのだ。
「答えはスキーです…。好きってことでいいんだよね?」
「あ、ああ。いい、ぞ。この私が恋なんて柄でもねえことしてるけどな…」
「そうだね。でも、恋するのは生物の自由だよ」
「あ、ああ。そうだな」
私は甲地から目をそらす。
「あ、あと、誘拐されたとき…。ありがと。私を叱ってくれて」
「う、うん」
「私は小さい時から本気で叱られたことなかったし月乃とかも笑って許してくれてて本気で怒られたことはなかったんだよ。だから逆に新鮮に感じた」
「そ、そう?」
「私だって過去の不幸話を吹聴するわけじゃないけどさ、両親だって死んで涙も流さなかった冷徹な女だしさ、たぶんそれで周りには怖がられたんじゃないかな」
私は涙を流したことはあまりない。
私が本心で話せるのは月乃と白露の二人だけだった。他とは距離を置いていた気がする。月乃と白露とならどこへでも行ける気がするような信頼感があった。
「たぶん私は甲地が死んだときも涙を流さない。冷徹な女だよ」
「いいよ。泣いてる顔はみたくない」
「…怖くないの?」
「むしろ悲しんでる姿を見るのが心が痛むね」
甲地は変わった奴だ。
こんな私に惚れるなんてどうかしてる。私は学校から恐れられてるほどの女帝だぞ。好きだって思わないだろうに。
ほんっと気に食わない奴…。
「告白の返事はもういいかな?」
「伝えたいことは全部伝えた」
「そう?」
と、甲地がいうと、私の背後から何かが発射される音が聞こえた。
私は思わず振り向くとそこにはクラッカーを構えていた月乃と白露がいた。
「あんた鈍感だし返事遅いのよ。正直甲地には同情したわ」
「まあいいじゃないか。彼氏彼女の仲になったんだからな」
「そうね。とりあえず祝ってあげるわ。っていうか、そろそろ私も婚約者とか見つけないとダメね…」
「月乃も結婚するのか…?」
「当たり前でしょ。うちの場合跡取りとかそういう問題もあるしいろいろあるのよ。白露は一生独身のつもりだったの?」
「私より強い奴じゃないと好きにならないな」
何その無理ゲー。
「っていうか京都の時も白露たち協力してたんだよねたぶん」
「そらそうよ。あんたを連れ出せるのは私たちぐらいじゃない」
「それもそうか」
私は笑いかけると、突然上から黒板消しが降ってくる。
「…」
「あんたより不幸になってない?」
「幸せがあった後に不幸が訪れてる気がするな」
「甲地、幸せにしたら許さないわよ」
「ええええ!?」
幸せになったら不幸がくるって…。
ま、それもそれでいいよ。幸せだけを堪能すればいいしな。痛みにも慣れてる。大切なものを失う悲しみも体験している。
もう痛みには慣れっこだ。
「ま、カップルになったとしても月乃と白露とはこれまでと同じように付き合うから」
私たちの友情だって変わりはしない。
月乃と出会えたこと、白露と出会ったこと。そのことは私の人生の大きな分岐点となっただろう。二人と出会わなかったらどうなっていたのだろう。二人は私にとって大切なものだった。
でも、月乃と白露だけじゃなかった。私を想ってくれる人は。
甲地だって、私の事を想っているのだ。
「…あれ? パン子さん泣いてる?」
「あ、あれ? なんか泣いてる」
おしまい
これでおしまいとなります。
最後ちょっと駆け足気味だったのも否めませんが一応予定調和ではあります。
ラスボス、短かったですね。でも、あんな風なあっけない幕引き、それもユーマが望まないものでした。自分は強いからこそ死ぬ時は粘るのだろうと。でもあっけなく死ぬ。
人間もあっけなく死にますね。それと同じです。
ま、そんな話は置いておいて。
ありがとうございました。多分すぐに次回作書きます。てか、多分書いてるかもしれません。
最後に説明
パン子ちゃんは貧乳
番外編2話投稿してます。そちらは未来のお話です。




