表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪の魔王の作り方!  作者: 鳩胸 ぽっぽ
悪の正義か正義の悪か
643/648

怪物は悉くを否定する ②

 私とユーマは対峙する。

 すると、ユーマはいきなり切り掛かってくる。元勇者とあるだけ剣の実力はあるようだった。

 私は一歩身を引く。ギリギリ躱せた。


 私は魔王の遺産を取り出し、弦を引く。

 狙いを定めて矢を放った。一閃。だが、その矢は剣で軌道を変えられたのだった。


「殺してやらああああ!」

「っと、油断できねえ…」


 状況は私が不利だ。防御に回っている。

 ヘヴンズアローでちまちま攻撃はしているが…。相手は倒れる気配はない。


「おらあ!」


 と、私は躱したが肩が当たってしまい、肩に傷がついたのだった。

 私は痛みを感じる。歯を食いしばり耐える。


「いっ…」

「ひひっ! 勇者舐めんじゃねえ!」


 何が…。


「何が勇者、だよ。お前はそんなんじゃないっての」

「あ?」


 毒が塗られていたようで麻痺してきた。

 動けない。


 動けない私の喉元に剣を突きつけるユーマ。私は声を出し、笑ってやった。

 何が勇者だよ。もう地に堕ちたくせに。お前が勇者を名乗れるなら魔王は正義を語れるさ。


「真の勇者はそんなことしない。お前みたいなことは絶対にしない」

「……」

「お前はただの悪党だよ。勇者でもなんでもねえ」

「うるせえ!」


 私はスキルを発動する。

 メイドインヘヴン。ダメージを無効化だ。これでしばらくは耐えてやる。


「なっ…」

「へっ。とりあえずこれでしばらく耐久できるな」


 とりあえず麻痺したのでアイテムを使って直した。

 私は立ち上がる。


「悪党はさー、結局は正義のヒーローにやられるんだよね」

「なら俺が正義のヒーローさ。国を壊そうとする悪の魔王軍を倒したヒーローになってやるさ」

「でも、なんで悪は勝てないのかな? 悪が勝ってバッドエンドってのも悪くないよね」


 正義は勝つ、悪は負ける。そんな定義は現実にはない。現実は非情だ。

 正義が勝つのは所詮シナリオの中だ。そんなのはない。


 私は魔王の遺産の弓の弦を引く。狙いを定め、放つ。

 いきなりのことでビックリしたのかユーマの肩を貫いた。ユーマの肩から血が流れてくる。


「最後に勝つのは私だよ」

「うる、せえ…! 魔王風情がそんなこと言うんじゃねえよ。魔王は勇者に打ち倒される役目なんだ。勇者の引き立て役だっ…!」


 私は矢を持って笑う。

 毒を塗っておいた。劇毒だ。人間が触れたら死ぬような毒を聖杯で生成した。

 流石は勇者の体というか死ぬことはなかったらしい。


「ひひっ、あんたがやってるように私も矢に毒を塗ってあるんだよ〜ん!」


 あんただけがやると思うなよ。

 普通の人が触れたら死ぬような劇毒だ。勇者は死なないと言えど結構痛いだろうな。


「もう一発!」

「や、やめろっ…」

「聞こえない」

「やめろ!」


 王城の外では爆発音が聞こえる。

 窓の外の景色をみると街が派手に壊れていた。やっているなあいつら。計画通りだ。

 私はユーマにも光景を見せてやると、ユーマは悔しそうに唇を噛んでいた。


「これが君が作り上げた末路だよ? 悲しいねぇ」

「悲しいって…全部お前のせいだろうが!」

「私は悪くない。お前が悪い」


 私は矢を手に持つ。それを見てユーマは死を悟ったんだろう。

 足掻こうとしていた手を落とした。


「…抵抗しないの?」

「したって…どうせ殺すんだろ。俺は無駄なことはしたくない。全身に毒が回ってきている。もう長くない」

「そう」


 私は矢を振り上げる。


「最後に聞かせてくれよ」

「なんだよ」

「俺は確かに悪いことをしたかもしれねえ。でも、この国は大事だったんだ…。この国はどうだった。過ごしやすかったか?」

「…過ごしやすかったよ。どこの国よりも、どこの世界よりも」

「そうか。あともう一つ」

「まだあるの?」


 息も絶え絶えなのによく喋る。


「俺は悪人か?」

「さあね。少なくても、この場には善人はいないよ」

「何をいう。善人がいないなら悪人しかいないだろうに」

「勘違いすんな。私は悪人だ。お前はひどいエゴイストだったが国は好きだ。国を愛することは悪ではない。中途半端な悪人だよだっせえ」

「そうか。俺は中途半端だったかぁ…」


 ユーマは血を吐いた。血を吐きながら笑う。


「もういいわ。殺してくれ。俺はもう抵抗せん。神に誓う」

「お前、神信じてねーだろ」

「さあね」


 私は矢を振り上げる。ユーマは振り下ろされる矢を目で捉え、口角を上げる。心臓に矢が突き刺さった。


「謝るよ。ごめん。許されないだろうけど、な…」


 そう言い残しユーマの体は動かなくなる。

 死んだ、のだろうか。

 私にはわからない。まだ隠し玉があるような気もするがないような気もする。だが、こんなあっけなくていいのだろうか。


 私はとりあえず死体蹴りとして腹部を貫いた。

 ぴくりとも動かなくなり、本当に死んだようだった。


 なんともあっけない幕引きだ。元勇者のユーマ。でも、彼の愛国心は本物だったんだな。

 悪いことをしたとは思ってないが、あんな私欲で人魚を殺戮さえしてなかったらと思うと…。ま、どっちにしろこいつも悪人だった。ろくな最後にはならないとは思ってたんだろうな。


 とりあえず、勝利。





 














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


笑う門には福来る!
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 最後は呆気なかった…。 初代国王を倒したから、人魚達の呪いは解けるかな? 魔王の大陸も、浮かび上がって来そうだよ。
[一言] ついに、パン子の返事が…聞ける!! 人魚さえ殺さなかったらいいやつだったのに…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ