怪物は悉くを否定する ①
場は整った。準備も整った。
今から始まるのは終わりだ。始まりがあるのなら終わりがある。私は終わらせるだけだ。
私は後ろのワグマたちに問いかける。
「悪いけどこの作戦は私が指揮取らせてもらうよ」
「ええ。いいわ」
「パン子がむかついてるからな。それに、お前らとなら私は誰でもいいぞ」
ワグマたちはそう答えた。
その答えに私はニヤつく。そうだ。私はムカついてる。だからこそ、ここまでやるのだ。
「私はアイツの全てを壊す。積み上げてきたものを壊す。さて、そろそろ作戦開始だ。準備はいいな?」
魔王軍を総動員。王都の門の前で私たちは控えていた。
ユーマも対策しているかもしれない。だが、そんなちょこざいな罠なんかは私たちには効かない。
「さ、終わりの始まりだ」
私たちは王都の中に入っていった。
私、ビャクロ、ワグマ、レブル。そして協力者のタケミカヅチで王城に走り向かう。
ユーマが生み出しているのか、兵士たちが私たちの行く手を邪魔していた。ビャクロとレブルが切り捨てる。
「邪魔だどけ」
「悪いですが邪魔する者は問答無用で切り捨てさせてもらいます!」
迫りくる追手をビャクロたちが倒す。こいつらやばいなと思いつつ、私たちは駆け抜けて行こうとしたが…。
目の前に突然、ドラゴンが現れた。
『勇者の為にもここは通さぬ!』
「初めて見るドラゴンね…」
「私に任せてください!」
レブルが相手するようだ。
「先に行ってください! すぐに追いつきます!」
『通すか!』
「悪いですけど問答無用で私だけに集中してもらいますよ!」
レブルが聖剣を振りかざす。
竜はそちらに対応せざるを得ないようだ。私たちは竜の横を通る。
すると、今度は戦士風のゴーレムが来た。
「ここは俺がやるよ」
「悪いね」
タケミカヅチに戦士ゴーレムを任せた。
私たちは走っていく。来るなというのなら尚更向かってやるよ。
嫌がる事をすんのが私だからな。
とうとう王城について、入ろうとすると、門の前にはゴーレム二体が立ち塞がっている。
ここにもゴーレムが! しかも強そうだ。さすがに三人で…。
「さすがに三人で…」
「いや、私だけでいい。ここはやってやろう」
と、ビャクロが横から蹴り上げ、ゴーレムを吹っ飛ばす。
ビャクロは楽しそうだった。私たちは扉を開けて走っていくと、謁見の間の前に一人の男がいた。筋骨隆々だ。
「よぉ、魔王ってのはあんたか」
「お前は誰だ?」
「俺か? 雇われの傭兵だ。名前はヴァルムっていう。ここを通りたきゃ…」
「…私が相手するわ」
「大丈夫?」
「これでも私は強いのよ! いいからあんたはさっさと憂さ晴らししてきなさい!」
と、ワグマがヴァルムに斬りかかり、ヴァルムは剣で受け止める。
「面白え! 得物が俺と同じたぁな! 実力がモノを言うぜ!」
「ええ、だけど負けるのはあなたよ」
私はその隙に謁見の間に入っていくと、玉座に座っているのはレオンではない。
王冠を被ったユーマだった。
「よく来たな」
「来てやったよ」
「ほんと…お前ムカつくことしかしねえな」
と、玉座に肘をかけて笑う。
「俺が作った国、壊して楽しいかよ? ええ? おい。お前も楽しく過ごしてたんだろ?」
「そうだね。お前が来るまでは」
「なのによぉ…」
ユーマの顔が変わる。笑っていた表情から、私を睨む目になった。
私は笑みを絶やさない。
「なんでお前は俺を追い詰めようとすんだよ! お前に何もしてねえだろうがよォ! こんなことする理由はねえだろうが!」
「理由? あるよ、理由はあるよ」
「あぁ!?」
「私たちは魔王軍だよ? それだけで理由は充分でしょ。ね?」
私は悪の魔王軍だ。だからこんなことも平気でする。信じていたのはお前ら自身だ。勝手に私たちを勘違いしてただけだろ。
結局魔王は悪なんだぜ。
「殺してやるよ、お前だけは俺の手で…!」
「別に私を殺してもこの国はなくなるよ。私の部下はすでに攻撃を開始している。殺そうが殺さまいが関係ないけどね」
この国が終わるのは時間の問題だ。
「いいよ。俺はお前を殺したい。ほら、かかってこいよ」
と、聖剣を振りかざす。
賽は投げられた。




