国の未来の選択
私たちの前にはニホン国軍務学校がある。私はある生徒たちを呼び出した。
呼び出したのはクロム、アイリーン、グルツ。その三人と馬車の中で話す。
「手伝ってほしい」
「手伝う? なにをだ? 出来る限り協力はするが」
グルツがそう聞いてきたので私は説明することにした。
「ニホン国を壊滅…?」
「ほう、また大きな事を…。となると王を殺すのか?」
「違う。この王都を壊す」
そういうと、三人は渋い顔をする。
「その資金援助をしろというのか? 国を裏切る行為は僕はできないぞ」
「違う。三人には国民を避難させてほしい」
「人を殺すつもりはないんだー…」
「なんで残念がってんだよ…。ふむ、理由を聞かせてくれ。理由によっては俺は乗れない。あんたが壊す理由を教えてくれ」
「ああ。壊す理由は初代国王を殺すためだ」
「初代国王?」
「人魚国を見つけたんだ私は」
そういうと、ほうという反応をしていた。
「先生が見つけてたんだな」
「うん。その人魚国には男がいない。なぜだと思う?」
「男がいないって後継者とか困りますよねー? なんででしょう」
「それは初代国王が男の人魚を惨殺した。それも、男の人魚は相応しくないという理由だけで」
そういうと一気に顔色が変わった。
私が言いたいのはひとつだ。
「そんな事をした国王を私は許せない。だからこそアイツが積み上げてきたものを壊す。アイツにとっては国が大事に思えるからだ」
国がどうなっていくのか、知りたいのだろう。だから転生をした。
王族からどうなるか、自分が積み上げてきたもの、積み上げるものはどうなるのか。
「乗るか乗らないかは君たちが決めろ。君たちがアデュランに言っても咎めない」
「なぜそこでアデュラン殿下が出てくるのだ?」
「アデュランに転生してるからだよ。国王が」
そういうと、三人は考えるような仕草をしていた。
「わかった。そういうことなら避難先は受け入れるぜ。ハート家領地で受け入れよう」
「わかった。たしかに、人として許せないな。人魚国の男を殺しまくるなんて。領地こそないが資金は援助させてもらおう」
「二人とも当主だから決めれるけど私は当主じゃないから自分の判断で決めれないんですけどー…」
そうか。クロムとグルツは当主だけどアイリーンは…。
「まあ父さんに話してみるよ。多分オッケーもらえると思う。私の領地にもいいよ」
「ありがとう。じゃ、今から私は国王のところにいくから」
私はそういって馬車を降りる。
王城に入り、レオンを呼び出す。
レオンには私の屋敷に入ってもらった。屋敷にはアップルが暇そうにしており、私が久しぶりにやってきたことが嬉しいのか私の周りを飛んでいる。
「で? 大事な話って?」
「単刀直入に言う。王都を破壊させてアデュランを殺させてくれ」
そういうと、レオンは目を丸くしていた。でも、ダメとも言わなかった。レオンは懐から何かを取り出す。
「勝負をしよう。話はそれからだ」
「勝負?」
「私はあなたに勝ってみたい」
取り出したのは金貨。国で使われている貨幣。
「表と裏があるのは知ってますね」
「あ、コイントス?」
「はい。表と裏。どちらにしますか?」
「待ってよ。私は国を潰そうとしてるんだ。コイントスなんかで決めていいの? 国の命運を?」
私は引き止めるが、レオンは首を振った。
「いいんだ。もともと私は王になりたかったわけじゃない。それに、アデュランを殺すのもアデュランが今は違う人間だからでしょう?」
「気付いてたの?」
「アデュランの15歳記念パーティーを開いた時、少し違和感を感じたんだ。で、なんとなく私はアデュランじゃないと思った。転生の書…それを見つけて転生した誰かなんだと思ったんだ。アデュランならいいけど、今のアイツはアデュランの皮をかぶった誰かだ」
レオンは割り切っているらしい。この国の未来も、アデュランも。成長しているな。
ここで嫌だとはいえない。なら勝負するしかないだろう。
「裏だ」
「じゃ、私は表ですね。行きますよ」
レオンは親指にコインをのせ、上に弾く。コインは回転し、レオンの手の甲に落ちた。レオンはすぐにコインを手で隠す。
レオンは確認し、ため息をついた。
「私の負けです。では、どうぞ。この国を終わらせてください」
レオンは手の甲に乗せたコインを見せる。
コインは裏返っていた。




