伏見稲荷大社
レクリエーションが終わり、私たちは京都を観光することにした。
とりあえずなんだが、伏見稲荷大社にやってきた。
「千本鳥居すげー」
私たちの目の前に鳥居がずらーっと並んでいる。鳥居をくぐるには一礼してーとか云々もあるが、この鳥居はそんな一礼してもいられなさそうだ。
「伏見稲荷は…ですね。資料によると…」
「奈良時代の和銅711年2月に御鎮座、2011年で御鎮座1300年が経過したっていうね。衣食住ノ太祖ニシテ萬民豊楽ノ神霊ナリって崇められて五穀豊穣、商売繁昌、家内安全、諸願成就の神ということで全国津々浦々広く信仰されてるんだ」
「パン子、空気読みなさいよ…」
「い、いえ、いいんです。すごいですね。調べてきたんですか?」
「まあもともとこういう由緒ある建物とか歴史的建造物は好きだからね」
歴史は人が作る。
神様も人が作り上げる。神様は人々が作り出した偶像にしか過ぎなく、信仰するつもりはない。
「風土記だと秦 伊侶具は、稲作で裕福で、餅を的代わりにして弓矢で射ろうとしたとき餅が白鳥に変化して飛び去ったんだ。で、伏見山に降りて稲がなったからこれを社名としたって言われてるんだよ。稲がなるから稲荷ってね。後になって子孫はその過ちを悔いてさ、社の木を抜いて家に植えて祀ったんだよ。今じゃ木を植えて根づけば福がくる、根づかなければ福が来ないって言われてるんだ」
「あんた来たことあるの?」
「初めてだけど」
「初めてでそんな語れるの…」
もちろん伏見稲荷大社などの歴史は頭に叩き込んである。
ま、来なければ意味ない知識になるけどね。
私は千本鳥居の中に入る。
「おお、まさに仏様だな」
「白露、それ神違う」
仏様は仏教だ。ここは稲荷大神だ。どちらかというと神道のほうだ。
白露って神様と仏様同じって思ってないか?
「白露、お寺で祀ってる神は?」
「え? す、須佐之男命?」
「……」
日本神話だそれ。仏教はインドだぞ。
「寺は仏教だ…。そもそも神様じゃなくて仏様だ」
「そうなのか」
「須佐之男命は島根県出雲市の須佐神社に祀られてるな。ところで白露、須佐之男命は何をした神?」
「えっ? あー、神龍を倒した!か?」
「……」
七つの玉集めてドラゴン倒すのかよ。
須佐之男命といえば倒したのは有名だろう。
「ヤマタノオロチだよね?」
「甲地正解! そう、ヤマタノオロチを酒に酔わせて討伐したんだ。で、クシナダヒメと結ばれた」
「ほう」
なんでここで須佐之男命について語ってんだよ。
「夢野さんすごいね…」
「それほどでも? ま、ほら、今がシャッターチャンスだよ。私が写真を許可することはあんまないぞー?」
「そういやあんた写るの嫌いなんだっけ」
「うん。将来になって過去の自分はこうだったっけってノスタルジーに浸りたくないから」
私が見るのは未来だけだ。過去のことはあまり見たくない。
親が死んだことは引きずってるが、それ以外は大して気にしてない。
「なんかわかる。俺も昔は…とかそういう気持ちはあまり持ちたくないっていうか」
「おー、似たものだねー」
「ぼ、僕は好きですよ。あんな時はあーだったなーとかこうだったなーとかアルバム持ち出して酒の肴にしたりとかして…」
「私もなんだかそれはやりそうだわ…。こういう思い出は大切にしたいのよね」
思い出を残す派、残さない派で分かれてる。白露は多分どっちでもいい派だろうな。
私はポージングをしていると、隣で外国人の人が私の写真を撮っていた。
「シューガクリョコーセイ! キュート!」
「おいおい褒めるなよ」
「あんた結構浮かれてるわね…」
そりゃ来たかった場所にこれましたから。




