海賊たちへの鎮魂歌
翌日、私はカイハ、ユウナを連れて船に戻ってきていた。
カイハを動力室に連れていくと、カイハは目を輝かせているのだった。
「高魔力魔石を燃料に使うタイプか! すっげえ高いだろこれ!」
「魔石によって違うの?」
「もちろんだぜ! 低純度の魔石を使うタイプは魔石を大量に入れ続けなくちゃならないんだがこのタイプは高純度の魔石一個で数時間運航可能のやつだ。ま、その分燃料代が高くつくんだけどな」
へぇ、タイプがあるんだ。
高純度の魔石の方が高いとなると…さすがはワグマだなぁ。高いのを買ったんだろう。ワグマの現在の所持金っていくらなんだろ…。私でも億ぐらいなのに。
ワグマの事だからめちゃめちゃ稼いでるんだろうけどな…。
「ま、とりあえず修理しておくぜ。三時間くらいかかると思うからその間私とこの船を守るんだ。海と言えど危険はつくからな」
「了解」
と、いうと、誰かが勢いよくこちらに向かってくる足音が聞こえてくる。
私は扉を開けて覗き込むとユウナだった。ユウナは急いで何かを伝えに来たようだ。私は動力室から出ると、ユウナは止まり、階段の上を指さす。
「海賊たちが攻めてきました!」
「早速お出ましか…。ユウナ、戦うぞ」
「はい!」
私たちは甲板の上に出ると、海賊船から板を渡され、海賊たちが乗り込んできている。
「ユウナ、二人で蹂躙するぞ」
「頑張ります」
ユウナは剣を構える。
私は早速魔法を放った。私が放った魔法は海賊たちに躱されてしまう。
「のろいぜ! そんなゆっくりの魔法躱せないとでも思ってんのかよォ!」
「躱さないほうが幸せだったのにね」
私が放った魔法は船底めがけてだ。
海賊船の底に穴が開き、海賊船が沈んでいく。乗り込み途中だった海賊たちもどんどん沈んでいくのだった。
だから躱さないで受けたほうが楽だったのになって。その光景を見た海賊は青ざめていた。
「お前! よくも…」
「躱さないで置いたら船が沈むこともなかったのになぁ。ま、私らを敵に回したんだ。徹底的にいじめぬいてやる」
私は魔法を放つ。今度はさっきみたいな生ぬるい速度ではなく、ちゃんと相手を狙って一閃。水の槍が海賊たちの腹部を貫く。
海賊たちは次々に倒れていくのだった。背後でも悲鳴が聞こえる。ユウナが頑張ってるようだ。
敵の真ん中に入り、一人一人丁寧に斬り進めている。的確に急所を狙って一撃で仕留めているようだ。レブルとの違いはここだろうな。レブルは急所を狙わずパワーだがこっちは急所を狙ってパワーを補っている。
「ユウナも頑張ってるから私も頑張りますか」
私は相手に近づく。
そして、左手でどんどん凍らせるのだった。動けなくなっていく海賊たち。全身が凍ってしまい、私はそいつらを丁寧に海に落とした。
水は重い。氷も重い。だが、流氷みたいに浮いてくるだろうさ。だけどまぁ、溶けるころにはどこに流されてるか知らないけどな。
「お前よくそんなひどいことを…」
「体が動かん! や、やめっ…」
「顔だけ凍らせないのって最高だよね?」
「ひいいいいいい!?」
顔だけ凍らせないで喋れるようにした奴もいる。
そいつの体を持ち上げ、私は海に落とすと、悲鳴が聞こえてきた。体は動かないから抵抗もできないだろう。それに、体を動かせないから回転させてあおむけで浮くことも不可能だ。
「俺らひょっとしてまずい相手に手を出したんじゃ…」
「ほらほら、無駄口叩いてる暇あるならさっさと海に飛び込もうか」
「はいっ!」
無事な海賊たちが次々海に飛び込んでいく。そして、泳いで逃げるようだった。ま、ここは海溝付近だし近くに島もないから逃げても無駄だろうけどね。
救助を待つしかないだろう。
そして私たちの船の上からは海賊がいなくなった。
ユウナは剣をしまい、座りこむ。
「はぁ。久しぶりに戦闘をこなしました」
「そういやあまり戦ってないもんね」
「平和ですから。平和なのはいいことですけどね」
ま、そういうもんだろう。
「ま、後はカイハが終わるまでゆっくり待ってましょうかね」
私は扉にもたれかかり、そのまま時が流れるのをゆっくり待つのだった。




