幽霊の正体見たり枯れ尾花
どうやら二人は幽霊船から戻ってきたニセモノのパンドラに攻撃されていたらしい。
どうにもおかしくて、質問をしていたら私じゃないことが判明、直ちに逃げて隠れていたようだ。ユウナは切りかかったが簡単にいなされたということ。
「ようニセモノ。うちの二人を泣かせたんだってな」
「ニセモノ? 私はパンドラだぞ」
「パンドラ、ねぇ」
目の前の私は気持ち悪い笑みを浮かべる。
「ほらよ」
私はニセモノの私をぶん殴った。
「なっ…」
ニセモノは驚いたようで、そのまま吹き飛んでいく。
「な、なんで自分の顔殴れんの!? 可愛くねーの!?」
「おいおいおいおい、私をなめてもらっちゃ困るな。真の男女平等主義者だぞ。子供だろうが自分だろうが容赦なく制裁するに決まってんだろ」
私は拳を構えて近づいていく。目の前の私は目じりに涙を浮かべ、今にもちびりそうなくらい怯えていた。
そして、私は拳を振り下ろす動作をすると、私の姿で綺麗な土下座をしていた。
「すいませんでした!」
「おらぁ!」
「なんでぇ!?」
謝って許されると思うなよ。謝ったら許すパンドラちゃんじゃないぞ。
私は目の前の私の髪を掴む。そして、何度も地面にうちつけてやった。物理攻撃は通じるようで、顔には痣ができて鼻血も出ている。
そして、私の気がおさまったところでやめてあげた。すると、ニセモノが煙をあげ、正体を現したのだった。
「…キツネ?」
「はい…」
「なるほど、私たちは狐につままれたってわけか…。あの幽霊船も」
「そうです…」
尻尾が九つ生えてる大きなキツネが申し訳なさそうに頭を下げている。
「九尾…」
「はい…。私は九尾です…。幻影を見せることを得意としてます…」
と、九尾が申し訳なさそうに低姿勢で謝っていた。
「あ、そう? というか九尾ってSランクの魔物だよね。魔物は討伐しなくちゃね」
「ひい!?」
九尾。幻影で人を攻撃し、惑わす。
力が強く、かつて九尾によって国が滅んだ例もあるようだ。幻影も幻影で攻撃できるらしく、実際に幻影に殺されることもあるようで。
つまり、あの幽霊船はすべてこいつの幻影であり、私が追われていた鬼はこいつのせいだ。
「許してください…。びっくりしただけなんですぅ…」
「ぱ、パンドラ。そういってるわけだし…」
「可愛い見た目で腹黒いこと考えてそうだから大事をとって殺しとくさ」
「ひいいいい!?」
九尾は移動し、ワグマの後ろに隠れる。
「ワグマを盾にするつもり? なら徹底的に殺して…」
「わ、私がテイムするわ! テイム契約を結べば裏切れないしいいでしょパンドラ!」
「ん? ま、いいか。それなら」
「あなたもそれでいいわね? 私たちにこんなことしたんだから拒否しないのよ」
「殺されないならそれでいいですぅ! テイムしてください!」
と、九尾は必死にワグマに懇願していた。
「あー、でもぉ、あなたに結構怯えさせられたから悩むわねぇ」
と、ワグマがからかうようなことをいうと、九尾は地に頭をつけた。
私は九尾の頭に手を置いた。
「よし」
「ひいいいいい!?」
「今日はいなりずしだぞ! 文字通り狐のお寿司だぜ!」
「早くお願いしますううう! 食われますうううう!」
「はいはい。じゃ、あなたの名前は…ライアってことで」
と、九尾が光る。
どうやらテイム成功のようだ。
「ライアって…嘘ってことだよね。ワグマさん名前当てつけ?」
「このご恩は一生忘れません」
と、光った九尾はなぜか女の子になっていた。
なんでこんな和風美人になってんだコイツ。




