泣き叫ぶ幽霊船 ②
ちょっとエグイ表現あるかもしれません。って言うかエグイです。たぶん。
私は渡された板に足をかける。
ぎいぎいと長く乗っていると折れてしまいそうな脆さだ。私はとりあえず一気に渡り、幽霊船の甲板の上に乗る。
甲板はところどころ穴が開いているし、それに、ガイコツが乗ってあった。私は頭蓋骨を持ってみる。魔力を感じない、ということはアンデッドではない。
服は既に朽ちかけており、結構長い日をさまよっているようだった。
「お、蝶形骨が綺麗に残ってんじゃん」
外部的要因で死んだわけではなさそうだな。
私は頭蓋骨を置き、とりあえず甲板の探索から始めることにした。甲板の大砲はまだ撃てそうだが…。
マストが腐っている。いつ折れてもおかしくないな。
「甲板には幽霊がいない…。操舵室はどこだ? そこに幽霊がいるはず」
ホラーだな。
たしかに苦手な人は苦手かもしれないな。だが、夏はホラーがつきものだ。肝試しなんて二人が嫌がるからやらないが、私はしたい。
ま、幽霊っていうのは気に食わん存在だけどね。死んだら潔く成仏して転生するのがあるべき姿だと思うんだ。
未練がましくてムカつくぞ。
「ふーむ、やっぱ船の内部か…。船室とかを探っていきたいが…。攻略しないとっていうけどなにをすりゃいいんだろうな」
やっぱ未練を晴らしてやる、ってことが必要なのだろうか…。
私はとりあえず扉を開ける。どうやら食堂のようで、結構な広さだった。テーブルの上には皿が並べられている。ただ奇妙なのがどれも割れていない、ということだ。
どういうことだ? こんなに物が散乱しているのになぜ割れていないのだろうか。
すると、その時だった。突然皿が浮かぶ。その皿が私めがけて飛んできた。皿は私を貫通し、背後の壁にぶつかり割れる。
ポルターガイストか。
すると、次々に物が浮かぶ。皿だったり椅子だったりなど様々だ。ここには近寄るなという警告だろうか。
だがしかし、警告は聞かない。それで引くほど臆病じゃない。
「近づくなって言われたら近づきたくなるよねぇ」
私は物が飛び交う中を歩いていく。
厨房に入っていくと、包丁がいきなり飛んできた。包丁は私をすり抜けていく。昔の船の食べ物は塩漬けの肉や魚、乾パンなど保存がきくものだった。壊血病などの病気もあった。
だがしかし、それは缶詰という発明で変わっていった。初期の缶詰はたしか斧で蓋を割って食べたんだっけ?
「厨房に何か秘密が…ってこれは…」
厨房に入ると、目の前は黒く染まっていた。
渇いた血だった。まな板の上には骨が乗っている。これは大腿骨ぐらいか? カニバリズム…。もしかするとこの船は食事がなくて人肉を食べていたのかもしれないな。
これはえぐいわ。カニバリズムとか狂気の沙汰だ。人の肉を食うなんてもう気持ち悪い。
「人肉を食ってクール―病でも発病したのかな。飢えて食べるのは人の肉って…。これ私じゃなかったらここでギブアップする人もいるだろうに。だいじょぶか?」
それにこの血の量からしてとてつもない人数が殺されて食われたと思われる。
かの有名な殺人鬼であるアルミン・マイヴェスがいうには人肉はやや苦味があり歯ごたえがあるとか。知りたくない情報だったんだよなそれ…。
ただ、飢饉など本当に食べ物がないときは本能として食べてしまうらしいけどね。
「なかなかえぐいなぁ。さて、次いこ」
カニバリズム現場も見れたしな。




