泣き叫ぶ幽霊船 ①
夜、ヘッドギアをかぶりログインする。
「さてと」
私は起き上がり、ワグマの部屋に向かう。
ワグマはなにやら装備をつけていた。水圧無効装備だ。
「ん? どっかいくの?」
「人魚の国よ。私も気になるし」
「へぇ」
「パンドラも来なさい。あー、ビャクロも連れていこうかしら」
というので、私も同行することになった。
三人と、船を操縦できるというユウナを連れて船旅をしていたが、とてつもない海霧で前が見えなかった。
「すごい霧ね…。前が見えないわ」
そう、すごい霧だ。
これは何かの予兆なのか? 海で霧つったらアレしか思いつかないのだが。だが言っていいのかなぁ。この二人、そういうの苦手系なんだよな。
だがしかし、私の予想は外れなかった。
「霧の中に船の影が見える。こちらに近づいてくるぞ」
「海賊かしら」
「…幽霊船だね、たぶん」
「…え?」
ワグマとビャクロがこちらを向く。
「霧の中で現れる船つったら幽霊船でしょ…」
幽霊が操舵しているという幽霊船。
すると、幽霊船の全貌が見えた。船はボロボロで、旗が破れて、帆もズタズタに裂かれている。船首についてるドクロも、なんだか薄汚れていた。
すると、私たちの船が止まる。
「すいません、船の操縦が効かなくっ…」
すると、幽霊船が真横に止まった。幽霊船から板が伸びてくる。あっちから降りてくる気配がないとなると、乗り込めってことか。
「どうやら先に進むには攻略するしかなさそうだね」
「マジで言ってる!? 嫌よ!」
ワグマ、ビャクロは否定的だ。だがしかし、攻略しないと先に進めないとみていいだろう。いかにも中に入れと言わんばかりの板だ。
私一人で入るしかないな。
「ユウナ、幽霊は大丈夫?」
「もちろんです。アンデッドの討伐もしてたので」
「そう? じゃ、二人を頼むわ。私一人で幽霊船の攻略してくる」
ワグマもビャクロも幽霊が苦手だ。ビャクロはゾンビぐらいならいけるが…。さすがにビャクロも足がすくんでいる。
幽霊は私以外不得意だもんな…。
「一人じゃ危険です!」
「そうだね。でも、ビャクロたちは幽霊がダメなんだよ。こっちに幽霊が来たら二人はパニクるから幽霊が大丈夫な人がいないとダメなんだ」
「…そうですか。わかりました」
ユウナはしぶしぶ納得したようだ。
だがしかし幽霊船か。幽霊船というのは現実でもそういう逸話があり…。
「幽霊船を見たものは不幸になる、って言われてるな」
「ひい!?」
「パン子、やめてくれ」
「ま、怖さですくんで操縦ミスして座礁するっていうのが不幸ってこと。船乗りは本当に怖いらしいね」
幽霊船は実は海賊船だったって言うのもあるんだけど…。でも、降りてくる気配がないから幽霊船だろう。
「それじゃ、行ってきますか」
私は板に足かけた。




