ばあべきゅう!
海で遊んだ昼、そして、夜。
星が広がる空、穏やかだけど音は激しい波、火が燃え盛る音。
私たちはバーベキューを楽しんでいた。
「お嬢様、焼けましたよ」
「もらうわ」
私たちはバーベキューを楽しんでいた。
コンロの前に立つのは阿久津家の雇われシェフさん。
笑顔で肉などを焼いている。
「トウモロコシくださいな」
「かしこまりましたぁ!」
シェフさんはトウモロコシを網に乗せる。そして、少し焼けたところでタレを塗っていた。
粒に焦げ目がつき、トングで私の方にトウモロコシを向けてくる。私は皿を出し乗せてくれた。
私はテーブルのほうに赴き、皿を置いてトウモロコシを両手で掴む。
「あつっ」
「美味しそうねパン子」
「とれたてのトウモロコシらしいからねー」
この島はトウモロコシを生産しているようでトウモロコシは近場で買ってきた。
肉以外はこの島のものでどれも新鮮だった。焼き立てのトウモロコシにかぶりつく。
「うん、トウモロコシの甘さと少し焦げて香ばしいタレ…。美味え」
「肉も柔らかくて美味しいぞ。すぐにほどける」
「白露は野菜も食べなさいよ」
「こんなときじゃなきゃ肉食べないんだからいいじゃないか」
白露の皿には肉が山盛りだった。
月乃は肉ものってはいるが、ピーマンや茄子などの野菜もバランスよく乗っていた。月乃はバランスよく食べるんだなー。
「お嬢様ー、ホタテやカキも焼けましたよー」
「お、いいわね」
月乃は立ち上がり、シェフのほうに向かう。
そして、人数分のホタテとカキを乗せてやってくる。
月乃は皿をおき、私と白露に一つずつ渡してくる。
「新鮮なカキとホタテよ。ホタテはバター醤油で焼いたらしいわ。カキはそのままが美味しいらしいわ」
「へぇ…」
私はまずバター醤油で焼いたホタテを口に入れる。
うーん、ホタテも美味しい。ザ・採れたてって感じだ。ホタテの甘みもありながらバターの香りと醤油のしょっぱさ。素晴らしい。
「おお、カキも美味しいな。つるんといける」
「雑味もなくて美味しいわねぇ…。金かけた甲斐があるわぁ」
このホタテとカキは養殖してる漁師の人に金をたくさん払って買い取ったものだ。
気前がよく結構大量にくれたのだ。
「満天の星空の下でバーベキューというのも乙ねぇ…。食事はシチュエーションというのも美味しさを高めるわね。最高…!」
「牛タンも最高だァ! ハラミも美味いぞ!」
「トウモロコシも、ジャガイモも茄子もピーマンも美味い!」
満天の星が輝く夜空のもと、バーベキューは続くのだった。
たくさん食べた。
白露が肉をたくさん食べたせいで月乃が持ってきた高級肉がほとんどなくなった。
私も肉は食べたが、これまた美味しかった。脂の乗りも良く、流石A5ランクの高級和牛だと思ったよ。100gで約5000円の肉とかもあったしサーロインステーキもあった。
「大満足ね。食べ過ぎて動けないわ…」
「私も結構食べた。明日は砂浜走り込みだな」
「セーブすべきだった…。うぷ」
私も珍しく食べ過ぎた。
腹八分目は優に超えている。腹九.五分目くらいだ。
「みなさーん、デザートですよー」
「待ってましたァ!」
私たちはシェフさんからスイーツを手渡される。
どうやらバニラアイスクリームのようだ。なんか蜜がかかっている。餡蜜か。
「不思議よね。お腹いっぱいなのに食べれそう…」
「そりゃ別腹ってやつだろう」
「そう。別腹ね。ちなみに別腹は女子にしかありません」
「え? 男の人にはないの?」
「うん。別腹っていうのは実際に胃の中に隙間が出来るんだよ。つっても消化されたわけじゃなくて腸にそのまま送り出すだけなんだけどね」
「へぇ…」
とりあえず…。
「いただきまーす!」
私は小さいスプーンでアイスクリームを掬う。
濃厚なミルクに餡蜜の甘さが絡んで美味しい。甘くておいしー。
「今日は結構楽しかったなぁ。めっちゃはしゃいでクタクタ…。でもこのアイスで吹き飛ぶなぁ…」
「そうね。酷い目にもあったけれど」
「いいじゃないか。パン子の方が酷い目にあったんだ」
たしかにな。
昨日は殺されかけたし今日は顔面を重点的に痛めつけられたし…。酷い目にもあってるな。
「あんた厄払いしてもらったら? 今年不幸すぎるわよ…」
「そうだなぁ。そうしようかなあ」
割とマジで笑えないほど厄災が訪れてる。
殴られる、スケート靴がぶち当たる、階段から転げ落ちる、首を絞められ殺されかける、月乃の足が顔に当たる。
…笑えねえ。




