謎の建物
ウツボを倒し、ダンジョンの中に潜っていく。
「ま、深海っていうのは現実でもまだ未開拓だからな…。何がいるのか怖いわな」
「そうね。宇宙の方が先に開拓できそうねぇ」
深海は暗く、寒い。
日が届かないのだから当たり前だとは思うがね。でも、何があるのか、私にも予想できないってのがまあ怖い。
「イルマー、索敵に反応は?」
「モンスターの反応は今のところありません! ですが奇妙ですね…」
「奇妙ってなんだ?」
マルタがイルマーに問う。
「ここがもしダンジョンなら魔物が一切出ないってのもおかしいよなってことだよ。ここは本当にダンジョンなのか?」
「なるほど。その通りね…」
ダンジョンならばもうモンスターと出会っていてもおかしくはない。こんなにモンスターがいないのは不自然だ。
むしろ、ダンジョンじゃないと思ってもいいだろうが…。
ダンジョンじゃないとしたらここは何なんだ?
「パン子、ここがどこかわからない?」
「わからない。ライトの魔法は使ってるけど見れる範囲が狭すぎる…。もうちょいヒントが欲しい」
ここは一体なんなんだ?
さっきの巨大ウツボはダンジョンマスターでもなんでもないとすると、ここはウツボが住むのには適していたとか?
洞窟…なわけないもんな。壁がここまで複雑なわけがない。
「壁っつーよりかは建物っぽいけど…。町が沈むというのはありえない。そんな話は聞いたことがない」
消えた都市、なんていう話は見かけなかった。町が一つ消えたのなら本にされていてもおかしくはない。
「もしかしたら無くなった大陸の一部かなと思うけどここまで流れてくるかねフツー…」
それに、この状態で流れてくるのはまずないだろう。
沈んだ都市というならば理想郷のアトランティスが有名だが…。
「これは一体なんなんだ」
「鑑定スキル使っても表示されない…。何なのよこれは…」
「ふむ、結構硬い素材で出来ている。少し壊すのにスキルを少し使ったぞ」
「うん…?」
と、イルマーが何か違和感を感じていた。
「敵が出たり消えたりしてる?」
「どういうことなんだイルマ」
「マルタくんは何してるの…」
「ん、いや、なんか暇だから」
マルタはなにやらシャドーボクシングをしていた。
いや、それはどうでもいい。
「どういうこと?」
「あ、パンドラ先輩。えっと、急に敵が現れたかと思うといきなり消えて…。消えたと思うといきなり現れての繰り返しなんです。場所で言うとこの中心…」
動けない。時々消える敵?
思い当たるモンスターはいないな。魔物の種類は全て記憶しているが…当てはまるモンスターは私の脳内モンスター辞典をめくってもいない。
新種のモンスターなのか?
「どうするよワグマ。未知の敵と戦うか?」
「…いや、知らない敵と無闇に戦うのは危険よ。引き返しましょう」
「わかった」
私たちは深海から出るのだった。
魔王城に戻り、私は文献を漁ってみる。あの建物はなんなのか。それが知りたい。
もし理想郷があるのなら、それを示唆するようなものがあるはずだ。
「まずはローキッスがいなくなって沈んだ大陸を調べるか…。これはローキッス呼んだ方が早いかな? じゃあ風雷神のほうだ」
あの建物はいつのものか、推測はできない。この世界の建築技術は日本と同じであり、あの建物もそれに近かった。最近できたものなのかと思うとそうでもない。
昔から日本人の転生者がいたと言う時点で昔からその技術は使われていただろう。
だから時代を絞るには不十分だ。
「イルマーの索敵の反応も気になるけど…。あの建物がなんなのかを明かさなくちゃな」
私は魔王城にあった文献をもう一度一通り読み漁ったが何も成果は得られなかった。




