白露との追いかけっこ
ま、あとはなるようになるだろうと思い、役場を後にする。
そして、別荘にて。
「さ、ゲームを…」
白露はヘッドギアを取り出していたが、私はそれを没収した。
白露はなぜ没収されたかわかってないような顔をし、えっという顔をして私を見ている。白露さんはあることを忘れているぞ。
「白露さん、テストで赤点、何個取りました?」
「えっ、あ、5個…」
「赤点取ったときって普通は何が開かれるんでしたか?」
「ほ、補習…」
私はにやりと笑う。
そして、白露のカバンから教科書を取り出して…。
「やろっか」
「嫌だ」
白露はノータイムで嫌だと言った。だがそうは問屋が卸さない。問いかけるのじゃない。もう確定だぞ白露さんよ。
宿題するといったとき、その時すでに宿題は終わってるんだ! ってわけにはならないからね。
「ほらほら遠慮せず。この学年一位のパン子様が直々に教えてあげるんだ」
「嫌だと言っている。さっさとヘッドギアを返してもらおうか」
「宿題終わるまでだめでーす。ほら、さっさと座ろうね」
私は白露のヘッドギアを持ちながら、白露から距離をとる。距離が近いと取り返される可能性もあるからな。
こいつには力と運動神経共に勝てない。どうにかして座らせられないものか…。
「返せ! 私はゲームをするんだ!」
「ダメだね! 白露私が言わないと絶対やんないんだから返さないよ! 終わるまでまてこの野郎」
「なら力ずくで奪うまでだ!」
「逃げるんだよォ!」
私は部屋を飛び出し、廊下をかけていく。
「いいところに青空! ちょっと囮になってくれ!」
「お、囮?」
「階段前を通ったらあっちって指さすんだ。いいな?」
「は、はい!」
私は身を隠し、追ってくる白露が階段を降りてきた。
白露は青空に出会ったようだ。白露がパン子見なかったかと問いかけ、青空は何が何だかわからないようで私が言った通り逆方向を指さした。
白露はありがとうといってそちらに走り出す。
「馬鹿め、そっちは行き止まりだよーん」
月乃を味方につけなくては!
私は階段を上がっていると、月乃が階段の前に現れる。
「何どたどたしてるの…」
「白露がゲームしようとして勉強しねーんだよ! あいつ絶対最終日まで宿題やらねってのに。月乃も手伝ってくれ」
「わかったわ…。さすがに白露のためね。このままだと終わらないだろうし…。ああ、パン子。あとで私にも優しく勉強を教えてくれるならいいわよ」
「了解! そろそろ白露が戻ってくるころだから急いで!」
「がつんと叱るしかないわね…」
すると、下から足音が聞こえる。
「青空! 嘘ついただろう! どこにもいないぞ!」
「えっ、あっ、その…」
「もういい! 二階にいって月乃を…」
あいつもどうやら同じ考えのようだ。
月乃はため息をついていた。階段を駆け上がってくる白露。白露は私と目が合う。
「見つけたぞ! 月乃! パン子を…」
「白露。なにを私の別荘でどたどた走り回っているのかしら。騒音がひどいんだけど」
と、月乃が笑顔で白露に近づいて肩に手を置く。白露は顔を青ざめさせていた。白露は一歩下がるが、月乃の気迫はそれを許さず、白露は直立し、そのまま地面に座った。直立した意味は。
白露はだらだらと汗を流している。
「事の発端は?」
「え、えっと、パン子が私のヘッドギアを奪って…」
「赤点取った分の補習をしなくちゃいけないし、それに、宿題を終わらせてやらないとこいつ絶対やらないからね」
「だそうよ?」
「だ、だってせっかくの別荘だぞ!? 楽しみたいだろう!」
「ごちゃごちゃ言わないの。私だって宿題はこっちでするのよ? いつまでも浮かれているのでは困るわよ」
「ぐぅ…」
「勝手に奪ったパン子もだけど勝手に奪わないとあなたやるじゃない。仕方ないと思うわ」
「うぐぐ…」
叱られてどんどん縮こまる白露。
「私も一緒に受けてあげるから…。勉強するわよ」
「…うん」
白露は涙を流していた。そんなに嫌なのかよ。




