罪と罰
私は篠崎にお願いをする。
「私篠崎さんの部屋を見てみたいなー」
と、思わせぶりな態度をとる。
こんな金持ちと付き合えたのがうれしいのか二つ返事でオッケーしたのだった。篠崎と書かれた表札があり、その家の中に入る。
結構高い高級車が庭に置いてあり、私は中に入ると、篠崎の両親がいたのだった。
「あら、遼太郎。そちらは?」
「新しい彼女。前の彼女にフラれちゃって」
よくいうぜ。
だがしかし、もう遅い。私は笑顔を作ってお邪魔しますぅ、といって部屋に案内される。部屋は特に何もなく、なんにもない部屋だ。つまらない部屋。
「っと、まずは両親に紹介しないとな」
といって、リビングに連れていかれる。
リビングでは篠崎の両親が座っており、少し困惑していたようだ。篠崎はうきうき顔で私を紹介していた。
「俺の彼女の阿久津 月乃さん」
「阿久津ってあの?」
「そう! 気品漂うでしょ!」
「あんたみたいなバカ息子にこんな…」
と、母親は感動していたようだが、その感動をちょっとぶち壊させてもらうぜ。私は篠崎を睨む。篠崎は気づいてないようだが、両親は私の顔の変化に気づいたようだ。
私はかばんから写真を取り出す。
「すいません。これ、見てもらっていいですか?」
と、写真を出した。
写真には、青空さんの痣があった。そして、ボイスレコーダーもある。聞いた話をもう一度録音させてもらっていた。
「すいませんね。感動していたのに。ね?」
私がそう微笑むと、だらだらと冷や汗を流して写真をかっさらおうとしている篠崎。その手を父親が止めていた。
そして、父親の力が強くなっているのか痛いと叫んでいる。
「どういうことだこれは…! てめえ、青空さんに暴力をっ…!」
「こ、これはっ…」
「誤解じゃないでしょ? それに、残念ながら私は阿久津 月乃じゃないんだよ。ばーか。ただの一般家庭のサラリーマンの娘だボケ」
「なっ…詐欺じゃ…!」
「だが残念! 本当に月乃は私の友人にいるんだなぁ。笑って許してくれるし月乃にあんたのことを話したらきっと幻滅するよねえ。あ、心配しないで? 青空ちゃんは月乃がちゃーんと手厚く保護してるから」
私は席から立ち上がる。
「すいません。巻き込んでしまって。ちょっと息子さんに暴力を振るいますがよろしいでしょうか?」
「構わん。こんなバカ息子、もう私の息子ではない」
「どうぞ好きにしてください」
と、両親にも見放されたようだ。
私は遠慮なく、男の顔面をぶん殴った。
「お、お前には暴力なんて振るってねえだろう! あんたなんであいつの知り合いでもないのにっ…!」
「やだなぁ。私は別にあの女のために来たんじゃないよ?」
私はにっこり微笑んだ。
そして、足を払って転ばせる。馬乗りになり、床にがんがんと頭をぶつけてやった。
「私は私自身のストレス発散の為にやってるの。青空ちゃんのことなんかどうでもいいの。ね?」
「ひいい!?」
「それにしても親に逆らえないでこうして女の私に殴られ続けるなんてだっさいねぇ。青空ちゃんが消極的な子だから暴力を振るってたのかな?」
「わ、悪かった! 謝るからぁ!」
「だからあの子なんて関係ないんだから謝ったってどうにもならないんだってえ」
私はビンタをかました。
「許してほしいならこういってよ。私は美作 青空さんに暴力を振るいました最低男です。ごめんなさい。許してくださいって」
「わ、私は…」
「声がちいさーい」
「わ、私は美作 青空さんに暴力を振るった最低男です! ごめんなさい!」
「その妹の美園さんとも付き合ってました。美園さんの親と協力して青空さんを自殺にまで追い込みました! って」
私の言ったことをすべて大きな声でリピートしたので、私は解放してやった。
「すいません。きっとあなたがたも噂されると思います。引っ越し費用は月乃が出すんで島から出ていったほうがよろしいかと…」
「…いい。私たちは子育てを間違えた。その罪として住み続けるさ」
「本当にごめんなさい。篠崎さんご両親にはなんの罪もないのに…」
「こちらこそごめんなさい。その、よければなんだけど青空さんはうちで引き取るわ。せめてもの償いとして…」
「それは青空さんと相談してください。彼女には訊ねるように言っておくので」
私は、そのまま帰ることにした。まだ仕事はある。




