今回の白露はやばいわよ
日が沈み、満月が顔を見せている。
海から上半身を出している二人の人魚。マリさんはともかく、騎士団団長であるアルファリアさんが二日以上無断でいないと問題になるらしい。一日はいいっていうぐらいには緩いらしいが。
「ぜひニホン国の国王にも我が人魚の国に来てもらいたい。今日は貴重な体験をさせてもらった。感謝する。出会いが乱暴だったのは謝ろう」
「いいよ。そりゃ自分たちの資源を無断で盗られたらたまったもんじゃないだろうしお互い様だって。私も結構充実してたよ。ありがとさん」
といって、二人は水中にもぐっていった。
「さて、私はログアウト…じゃなくて寝るからアデュラン。バイバイ。あ、護衛いる?」
「一応護衛してもらえるか? 護衛もなしに出歩くのは本来いいことじゃないんだ」
「わかったよ。ま、仮にでも王子…いや、王弟だもんね」
私はアデュランを城に送っていき、ログアウトする。
翌日は、期末テストの返却だった。
前の聖杯イベントから三か月くらい経った七月の中旬。期末テストが返され、廊下に順位が張り出される。
「ま、わかってた」
順位は不動の一位だった。
1位 夢野 眠 500点
という文字が見える。今回は凡ミスもなく、普通に満点だった。クラスメイト曰く、結構難しかったということ。
ノートに書いたことじゃなく、先生が口頭でいったことも出たって言う無理難題もあるにはあったが、残念。私は口だけで説明したことも書いている。
「ありゃ、珍しいな」
私の下にはあのいつか喧嘩売ってきたなんとか君の名前がなく、阿久津 月乃と書かれている。491点という高得点だ。
授業範囲は同じで、同じテストをしてこんな点数とは珍しい。
「パン子、驚いたかしら」
「うん。素直に驚いたよ。まさか2位って…」
「今回は本当に真面目に努力したわ。私でもここまで行けるんだから自分で言うのもなんだけど私も大概よね」
「うん。それは思うよ。月乃は頑張れば運動も勉強も私たちに追い付くんだよ…」
一応月乃だって本当は頭いいのだ。
テスト前に勉強はしているらしいのだが、何週間前とかじゃなく、二日くらいやってあの結果だ。努力家ではあるが努力をあまりしないんだよ月乃って。
「英語満点、国語95点、理科、数学は凡ミスして満点のがして99点、社会が98点よ」
「ほー、月乃マジで頑張ったな」
「もうしばらく勉強はしたくないわ」
ま、こんな点数とれるまで勉強したらな。
「白露は…今回はやばいわよ」
「やばい?」
嫌な予感がする。
私は恐る恐る後ろの方に移動すると…。一番最後に球磨川 白露 0点という文字が…。
私はそれをみて、思わず息をのむ。なにしてんの? いや、9が足りないんじゃない? 90点の間違いだよね? そうと言ってくれ。
だがしかし、何度見ても0は0だ。0に何をかけても0だ。
「どうだ、パン子。すごいだろう。パン子の真逆だ」
「すごかねえよ! 私でもとれるわこんなん! なんで逆満点なんだよ! なんで一つも点とれてないんだよ! 留年しても知らないぞ!」
「いや、理由があるのよ…」
「理由?」
「解答欄を一つずれて書いてたらしくてな。全教科。それで気づいたのが終わる五秒前だ。それも全教科」
誇らしげに言うなよ…。
たしかに解答欄がずれるのはよくあることだ。それに、白露はわからなかったら飛ばすから気づかないことも無理はないだろうけど…。
「先生に笑われたぞ。ずれてなかったら全教科赤点回避していたらしい」
「…」
「全教科解答欄ずれてたのは初めてと言っていた」
「誇ることじゃねえよ…。どっちにしろ補習じゃんかよ…」
「それなんだが」
「ん?」
「パン子が教えるなら補習なしで夏休み遊んでいいらしい」
「私に仕事を押し付けやがったな先生ェ!」
たしかに安心と信頼のパン子ちゃんだけどさぁ…。さすがに補習を任せちゃダメでしょ。
今年の年末年始はやばいですね!




