ニホン国王の謁見
とりあえず素材をワグマたちに渡し、私たちは王城に向かう。
レオンが報告を待っているらしい。アデュラン曰く。
「兄上はああ見えて結構オカルトや伝説が好きなんだ。人魚は実際にいるのか?と会話したこともある。兄上はいる、俺はいない派だった」
とのことだ。
いない派のアデュランも実際の人魚見たから信じただろう。
王城前につき、門番が驚きを隠せないまま私たちは素通りし、謁見の間に。
私は扉の前に待機して会話を聞くことにした。
『兄上、ただいま帰りました』
『…それで報告は? 深海の調査だ。人魚はいたか? それとも海坊主か?』
『人魚…それが…』
私は扉を開けて水球を操作する。
「あなたがこの国の王だろうか」
「やっほー。アイドルのマリちゃんだよ〜!」
と、人魚二人が飛び出る。
レオンは思わず握っていた王笏を落とし、ふらふらと近づいてくる。
次の瞬間、王の叫びが。
「うおおおお! 本当か! 本当に人魚はいたんだな! すごい! すごいぞ! 人魚がいるなら是非交流したかったのだ!」
「喜んでもらえてマリ嬉しいよー! あ、いや、嬉しいですっ」
「地上に出て一番驚いた人だな」
アルファリアは苦笑し、マリは喜んでいた。
「兄上…」
「あっ…こほん。すまない、取り乱した。…その、セクハラになるかわからんが下半身触らせてもらっても…」
「それはだーめ! 本当にセクハラですよ!」
「それは流石に…恥ずかしい」
「わかった。無茶な願いすまない」
レオンは王笏を拾い、座り直す。
「な、名を聞かせてもらっても良いか?」
「はい。私は人魚騎士団団長のアルファリアと申します。ニホン国の王、この度の謁見の時間をいただき恐縮と共にありがたく存じます」
「人魚のアイドル! マリです! 唄を歌うのが好きです!」
「人魚の伝説といえば唄で船を沈没させたというものや、人間を魅了し海底まで連れ去ったという話もある…それは真実なのだろうか」
レオンは今にもはしゃぎたいのを抑え込んでいる。
意気揚々に質問を投げかけ、それにアルファリアが答えるような形だ。
レオンが数問質問を投げかけ、アルファリアが答える。満足したのか、最後の願いを言っていた。
「その、人魚の唄を聞かせてはもらえないだろうか。すまない、初対面で聞かせてもらうのは悪いな」
「大丈夫です! 人魚唄大好き! 歌えるのなら歌います!」
「ありがとう。では、頼む」
「お任せください! こほん。では、音楽ないのでアカペラで…」
マリは歌い出す。
なんていうか、落ち着いた曲調なんだよな。アカペラでもわかる。
子守唄みたいな感じで落ち着くのだ。
レオン、アデュランは口を閉ざし、唄を真剣に聞いている。
マリは熱中してるのか、目を閉じ、大きな声を出す。アルファリアはゆらゆら揺れていた。
そして、歌が終わる。
「ありがとうございました!」
「…素晴らしい。聞き惚れてしまうのも肯ける」
「上手く言葉に言い表せないがとても落ち着く曲だ。これでは船の操作なんてできるまい」
「えへへ。褒められて嬉しいです!」
マリは嬉しそうに水の中を泳ぐ。
「この度はニホン国にきてくれてありがとう。次はこちらが行かせてもらう」
「わかりました。私共の王に伝えておきます。ニホン国の王はとても気さくな人だとも」
「ありがとう。では、私は仕事があるから…。その、アデュラン。丁重にニホン国を案内しろ」
「わかりました。兄上。さ、パンドラ。行こう」
私はアデュランに手を引かれ、王城からでた。
夜。流石に一日留守にするのはまずいらしく二人は帰ることになった。
海に放してくれるだけでいいというので、海に放す。
「楽しかった。王に話次第またこちらの海に来る」
「うん。またね」
二人は、そうして帰っていった。




